脳梗塞になるとどんな症状が出るの?

脳梗塞を発症すると、どんな症状が出るのでしょうか?

脳梗塞になったからといって、必ずしも麻痺が出るわけではないですし、必ずしも呂律が回らなくなるわけではありません。

脳の働きは、複雑です。

脳梗塞でどこの部位が障害されたのかによって、症状は変わってきます。

少し難しい話なのですが、脳の働きと脳梗塞について学んでみましょう。

目次

脳の解剖と役割

脳は大きく分けると、大脳・小脳・脳幹から成り立っています。

大脳の働き

大脳は右脳、左脳に分かれています。

右脳
空間的能力や直感的理解に優れている、といわれています。

例えば、音や色の違いを認識したり、感情的になったり、感動したりといったものです。

左脳
言語的理解や計算に優れている、といわれています。

例えば、物事を計画したり予測したり、物事を分析したりといったものです。

左半身を動かすとき、右脳・左脳のどちらを使っていると思いますか?

正解は、右脳です。

では、右半身を動かすときは右脳・左脳のどちらを使っているのでしょうか?

そう、正解は左脳です。

体を動かすとき、動かしているのと反対側の脳が働いているのです。

そのため、脳の左側が障害を受けると、身体は右側の麻痺が出ます。

脳の右側が障害を受けると、身体は左側の麻痺が出ます。

MSDマニュアル家庭版より引用
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0

小脳の働き

小脳は、平衡感覚を司ったり、姿勢を保ったり、自分で勝手に動いてしまう筋肉運動を抑制する働きがあります。

そのため、この部分が障害を受けると、以下の症状がみられます。

めまい、悪心・嘔吐など

さらに小脳失調と呼ばれる症状がみられることがあります。

小脳失調の症状のひとつとして、身体の麻痺はないにも関わらず、まっすぐ歩けず、ふらつきが現れるといったものがあります。

先述したように、脳梗塞では必ず麻痺が起こるわけではないのです。

このように平衡感覚を司る機能が障害されてしまったために、歩行障害がみられるケースもあります。

歩行障害だけでなく、手や足などを目標に近づけようとしたときに震えが生じてしまったり、字を書くのが下手になったり、動作が遅くなったりといったものも小脳失調の症状のひとつです。

脳幹の働き

脳幹は、中脳・橋(きょう)・延髄の3つに分かれています。

中脳
動眼神経と呼ばれる眼球を動かす神経があります。

橋(きょう)
味覚・聴覚・顔の筋肉の動きを司る神経があります。

延髄
呼吸・循環・消化など、生命維持に欠かせない働きをしています。

特に延髄は大変重要な働きをしていますので、この部分が障害されると重篤な症状を呈します。

大脳の4つの領域と代表的な役割

脳は細かく分類することができます。

先ほど、大脳は右脳・左脳という分け方をしましたが、今度は脳に刻まれた溝によって分類したものを説明します。

大脳は溝によって分類する場合は、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉に分けられます。

大脳には下記の図のように、視覚野、聴覚野、運動野、嗅覚野、味覚野、体性感覚野といった機能があります。

言語に関しては、運動言語中枢(ブローカ中枢)と聴覚性言語中枢(ウェルニッケ中枢)があります。

大脳といってもさまざまな役割があるので、大脳の障害される場所によって、さまざまな症状が出てくるのです。

大脳の視覚野が障害されれば視覚に問題が生じますし、聴覚野が障害されれば聴覚に問題が生じてくるのです。

脳梗塞の症状

上記で述べたように、脳の働きは多様です。

脳梗塞になったとしても、脳が障害された場所は皆違います。

また、同じ場所が障害されていても、脳梗塞の大きさによって程度が変わり、症状もさまざまです。

今から述べるのは、脳梗塞を発症された方が比較的発症することが多いものです。

全員に当てはまるわけではないので、ご注意ください。

・右半身あるいは左半身が動きにくくなる、しびれや感覚障害がある
・しゃべりにくい
・意識が低下する
・頭痛や嘔気がある

脳梗塞が引き起こす問題

脳梗塞に伴う廃用症候群

廃用症候群、という言葉を聞いたことがありますか?

廃用症候群とは、ケガや病気により身体を動かすことができず、過度な安静や活動性の低下により、寝たきりの状態が続く心身の機能低下のことです。

身体に麻痺の症状が出てしまうと、バランスが取れず、なかなか歩くことができません。

歩くことだけでなく、座るのが難しい方もいらっしゃいます。

そうすると、どうしてもベッドで横になっている時間が長くなってしまいますよね。

そうすると、麻痺が出ていないもう半分の健康な身体の筋力もどんどん衰えていきます。

これが起こると悪循環になってしまい、身体を動かすことがどんどん難しくなっていくのです。

脳梗塞に伴う消化機能の低下・皮膚トラブル

身体を動かさなければ、消化機能もうまく働きません。

食欲が低下したり、便秘になったりします。

また栄養状態がよくない状態で寝たきりになると、今度は床ずれが起きてしまいます。

脳梗塞に伴う呼吸機能の低下

横になったままでは呼吸をする筋肉が動かしづらく、結果咳がしづらくなり、肺炎を引き起こしてしまいます。

脳梗塞に伴う循環機能の低下

寝たきりになると、循環もよくないので、血栓ができやすくなります。

足に血栓ができやすいのですが、この血栓がときに肺の動脈まで到達し、肺塞栓症を発症する場合があります。

肺塞栓を起こすと、胸の痛みや息苦しさを感じます。

死に至る場合もあります。

脳梗塞に伴う精神機能の低下

こちらは寝たきりの状態に限りませんが、脳梗塞を発症することで、抑うつや認知機能の低下がみられることがあります。

脳梗塞後のうつ病は、麻痺や言語障害による日常生活の変化やストレスだけでなく、脳梗塞により脳の機能が低下したことも原因のひとつとなるようです。

うつ病は、リハビリ意欲の減退や集中力の低下を引き起こし、身体の回復を妨げる原因になってしまいます。

このように脳梗塞は麻痺や言語障害だけでなく、身体のさまざまな別の問題を引き起こしてしまう可能性があるのです。

高血圧や糖尿病など、脳梗塞を発症しやすい危険因子を抱えている方は、脳梗塞を発症する前にできる限りの予防に努めていただきたいものです。

これを機に、ぜひご自身の生活習慣を見直してみてください。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

目次