脳梗塞と脳出血の平均余命はどのくらい?長く生きるために大切なことも紹介

家族が脳梗塞や脳出血になったとき、平均余命はどのくらいなのかと心配になりますよね。

脳梗塞と脳出血は、くも膜下出血とあわせて脳血管疾患と呼ばれます。

令和3年に脳血管疾患により亡くなった方は、10万4,588人でした。

しかし、脳血管疾患にかかった方が、必ずしも亡くなるわけではありません。

治療やリハビリをしながら自宅で過ごしたり、社会復帰をしたりする方もいらっしゃいます。

今回は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血にかかった場合の平均余命と、発症後28日以内の死亡率についてご紹介します。

併せて余命を伸ばすために大切なことも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

厚生労働省 令和3年(2021) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf

目次

脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の平均余命

2008年の第49 回日本老年医学会学術集会で発表された、鈴木一夫氏による「秋田研究:脳卒中の予後」から、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の平均余命を男女別に紹介します。

第 49 回日本老年医学会学術集会記録 〈若手企画シンポジウム I:地域高齢者の今:高齢者を対象とした疫学研究より〉 3.秋田研究:脳卒中の予後 鈴木 一夫
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/45/2/45_2_169/_pdf

脳梗塞の平均余命

脳梗塞を発症した50歳男性と日本人の標準的な50歳男性の平均余命は、以下のとおりです。

脳梗塞を発症した50歳男性20.9年
日本人の標準的な50歳男性28.9年

8年も平均余命が短くなっていることがわかります。

脳梗塞を発症した50歳女性と日本人の標準的な50歳女性の平均余命は、以下のとおりです。

脳梗塞を発症した50歳女性30.8年
日本人の標準的な50歳女性35.0年

4.2年も平均余命が短くなっていることがわかります。

脳出血の平均余命

脳出血を発症した50歳男性と日本人の標準的な50歳男性の平均余命は、以下のとおりです。

脳出血を発症した50歳男性23.5年
日本人の標準的な50歳男性28.9年

5.4年も平均余命が短くなっていることがわかります。

脳梗塞を発症した50歳女性と日本人の標準的な50歳女性の平均余命は、以下のとおりです。

脳梗塞を発症した50歳女性27.7年
日本人の標準的な50歳女性35.0年

7.3年も平均余命が短くなっていることがわかります。

脳梗塞の平均余命と比較すると、男性は脳出血よりも脳梗塞のほうが平均余命が長く、女性は脳梗塞よりも脳出血のほうが平均余命が長いです。

くも膜下出血の平均余命

脳出血を発症した50歳男性と日本人の標準的な50歳男性の平均余命は、以下のとおりです。

脳出血を発症した50歳男性20.6年
日本人の標準的な50歳男性28.9年

8.3年も平均余命が短くなっていることがわかります。

脳梗塞を発症した50歳女性と日本人の標準的な50歳女性の平均余命は、以下のとおりです。

脳梗塞を発症した50歳女性24.8年
日本人の標準的な50歳女性35.0年

10.2年も平均余命が短くなっていることがわかります。

くも膜下出血は脳梗塞や脳出血と比較すると、男女ともに平均余命が短いです。

脳梗塞と脳出血の平均余命は短くはない

脳梗塞と脳出血を発症すると、発症していない方と比較して平均余命は短くなります。

しかし、脳梗塞または脳出血を発症した50歳男性の平均余命は20年以上、女性だと25年以上です。

これらのデータから、脳梗塞と脳出血の平均余命は決して短いとはいえないでしょう。

脳梗塞と脳出血は後遺症を伴う病気であり、後遺症と付き合いながら生活する期間が長いといえます。

平均余命を知るときの注意点

上記で紹介したデータは平均余命であり、平均余命より長く生きることもありますし、早く亡くなることもあります。

また、50歳男女の平均余命を調査しているデータであり、50歳よりも上の年齢の方が発症すると平均余命は短くなります。

そして脳梗塞や脳出血の発症部位や程度によって平均余命は大きく異なるため、一概に平均余命は何年とはいいきれません。

ご本人の発症部位や程度、症状や今後の見通しについて、主治医からしっかり説明を聞きましょう。

脳梗塞・脳出血を発症後28日以内の死亡率

平均余命と同様の研究では、脳血管疾患を発症後28日以内に亡くなる方は、以下のとおりでした。

脳梗塞6.3%
脳出血15.7%
くも膜下出血26.7%

脳梗塞発症後の死亡率は、他の病気と比較しても低いです。

そして、厚生労働省のデータによると、脳血管疾患により亡くなる方は年々減少傾向です。

日本の発達した医療により、一命を取り留める方が増えていることがわかります。

病院で治療した後は、リハビリ専門の病院へ転院し、自宅へ戻る方が多くいます。

第 49 回日本老年医学会学術集会記録 〈若手企画シンポジウム I:地域高齢者の今:高齢者を対象とした疫学研究より〉 3.秋田研究:脳卒中の予後 鈴木 一夫
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/45/2/45_2_169/_pdf

厚生労働省 令和3年(2021) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf

病院を退院後の生活が余命に関わることも

リハビリ病院を退院した後、自宅での療養生活が余命に関わることがあります。

病院では規則正しい生活や栄養バランスを考えた食事、決まった時間のリハビリなど、健康的な生活をおくれます。

しかし、自宅に帰ってからは、ご本人やご家族で自宅での生活に注意しなければなりません。

不規則な生活や栄養バランスの偏った食事、飲酒・喫煙は、再出血や再梗塞のリスクが高くなります。

それだけでなく、他の病気にかかるリスクも高くなるでしょう。

また、リハビリを自宅で継続しないと筋力が低下し、以下のような恐れがあります。

  • 歩けたのに歩けなくなった
  • 手が動かせたのに動かせなくなった

活動量の低下は、病気のリスクが高くなります。

そして、定期的な通院を継続し、処方された薬の用法・用量を守って内服することも大切です。

脳梗塞・脳出血以外の持病がある方は、治療を中断せず継続しましょう。

介護サービスを取り入れると余命を伸ばす期待ができる

退院後も健康的な生活をおくるためにはご本人の意欲が重要ですが、後遺症によって必要性が理解できないことがあります。

ご家族のサポートだけでは難しいと感じることもあるでしょう。

自宅で生活に気をつけながらリハビリを続けられるように、介護サービスを利用するのがおすすめです。

介護サービスは外来リハビリやデイサービスなど日中通うところや、訪問看護や訪問介護といった自宅へ訪問するサービスもあります。

ご本人が複数の人と関わることで刺激になったり、リハビリのきっかけになったりします。

また、異常があった場合は、介護サービスの専門スタッフがいち早く気づけるのもメリットです。

介護サービスを取り入れご本人らしく生活することで、余命を伸ばす期待ができます。

脳梗塞と脳出血の平均余命は人によって大きく異なる

今回は、脳梗塞と脳出血の平均余命を紹介しました。

50歳で発症した場合、それぞれの平均余命は20年以上であり、短くはないです。

なお、平均余命は論文やデータで出ていますが、発症した部位や程度、年齢、退院後の生活、持病の有無によって大きく異なります。

まずはご本人の病状について、主治医からしっかり話を聞きましょう。

そして、脳梗塞・脳出血を発症した後は、後遺症と付き合いながら生活することが多いです。

その中でご家族だけでは大変なことがあるので、無理をしないようサービスに頼ることをおすすめします。

必要な介護サービスを活用し、ご本人やご家族がよりよい日々を過ごせるようにしましょう。

さまざまなサービスを取り入れることで、平均余命を伸ばすことが期待できます。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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