脳梗塞は、再発しやすい病気です。
10年以内に約半数の人が再発する、というデータがあるくらいです。
脳梗塞になってしまったあとは、再発予防が欠かせません。
ここでは、脳梗塞の再発予防薬である「アスピリン」を中心に、脳梗塞後の薬について解説していきます。
脳梗塞の薬は何のために飲む?
脳梗塞の薬は、以下の2つがあります。
・主に再発予防のために飲む薬
・脳梗塞の原因となった疾患の治療のために飲む薬
使用する薬は、脳梗塞のタイプや、他に持っている病気などを考慮して選択されます。
脳梗塞のタイプは、主に次の3種類があります。
アテローム血栓性脳梗塞
脳や首の大きな血管が動脈硬化によって狭い、あるいは閉塞することで起きる脳梗塞
ラクナ梗塞
脳の細い動脈が硬化することで起こる、小さな脳梗塞
心原性脳梗塞
心臓で作られた血栓が、脳の血管に詰まることで起こる脳梗塞
脳梗塞の再発予防薬
アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞後の再発予防には、血小板の働きを抑える「抗血小板薬」が使用されます。
主に使用されるのは、以下の3種類です。
一般名
アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾール
商品名
バイアスピリン、プラビックス、プレタール
「脳卒中治療ガイドライン2015」では、脳梗塞発症直後の早期から、抗血小板薬を使用することが勧められています。
心臓の不整脈などが原因で起こる心原性脳梗塞の再発予防には「抗凝固薬」という薬剤が使用されます。
主に使用されるのは、以下です。
一般名
ワルファリン、ダビガトラン、リバーロキサバン、アビキサバン、エドキサバン
商品名
ワーファリン、プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナ
脳梗塞の原因治療薬
アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞の主な原因となるのは動脈硬化であり、動脈硬化の原因となる高血圧や高脂血症に対して薬が使用されます。
高血圧や高脂血症は、症状を起こさない病気なので、自分の判断でやめてしまうという問題があります。
病状を理解して、薬をしっかりと続けることが重要です。
心房細動などの不整脈に対しては、心臓の動きをコントロールする薬が使用されます。
アスピリンとは?
アスピリンとは、脳梗塞再発予防のための第一選択薬です。
アスピリンは、血小板のシクロオキシゲナーゼという物質を阻害することで、血小板が集まって固まろうとする機能を抑制します。
少ない量を使用することで、血小板の機能を抑制する効果が得られます。
副作用が少なく、比較的安全な薬であるため、1897年に開発されて以来、100年以上にわたり非常に多く使用されている薬です。
鎮痛薬としてのアスピリン
アスピリンは、もともと頭痛や歯の痛みに使用される薬剤でした。
現在も、アスピリンを主成分とした頭痛薬が、ドラッグストアなどで販売されています。
鎮痛薬としてアスピリンを使用する場合は、抗血小板薬としての効果を期待する場合の3倍程度の量を使用します。
多い量になると、血小板の働きを抑える効果が少なくなるため、安全な鎮痛薬として使用することができます。
アスピリンの副作用、注意点
アスピリンの副作用・注意点は、主に次の3点です。
出血
アスピリンは血小板の働きを抑えるため、出血したときに血が止まりづらくなる可能性があります。
手術や内視鏡などの処置を受ける場合、けがをした場合などは注意が必要です。
高齢の方や血圧が高い方は、脳出血の発症に要注意です。
消化管の粘膜障害
アスピリンはシクロオキシゲナーゼを阻害することで作用を発揮しますが、この物質は消化管の粘膜を保護する役割を担っています。
そのため、アスピリンが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因となることがあります。
潰瘍を起こしたことがある方は、使用を避けた方が良いということになります。
アスピリン喘息
詳しいメカニズムは不明ですが、アスピリンをはじめとする解熱鎮痛薬が原因で、喘息の発作が起きてしまう方がいます。
成人の喘息患者さんの5〜10%にみられると言われています。
この場合も、アスピリンを使用することができません。
脳梗塞の薬をやめたほうがいいとき、やめられるとき
脳梗塞は再発しやすい疾患であり、高齢であるほど再発のリスクが高くなります。
そのため、薬をいつまで飲めばいいのか?という問いには「いつまででも」という答えになります。
ただし、再発予防のための抗血小板薬には、出血などの副作用があります。
抗血小板薬を使用することのメリットと、副作用のリスクを天秤にかけて考える必要があります。
他に持っている病気など、多くのことを考慮する必要があるため、自己判断で休薬することなく、かかりつけ医と相談することが重要です。
アスピリンは、脳梗塞になったことがないご高齢の方に、予防薬として処方されていたときがありました。
しかし、現在ではアスピリンは脳梗塞の再発予防効果はあるものの、脳梗塞を初めて発症することを予防する効果はないことが分かっています。
この場合は、アスピリンを飲むことのデメリットが明らかに大きくなります。
長年アスピリンを処方されている方は、一度担当医に確認してみてもいいかもしれません。