生活習慣病が原因になる脳梗塞ですが、悪者に挙げられやすい飲酒は、発症の原因になるのでしょうか?
一度脳梗塞になってしまったら、もうお酒は飲まないほうがいいのでしょうか?
症状がそれほど残らずに治癒することも多い脳梗塞ですから、治療後ほぼ普通の生活をしているのに、好きだった晩酌を楽しむことができない、というのはつらいですよね。
ここでは、飲酒と脳梗塞の関係を中心に解説します。
脳梗塞になったら、お酒は飲めない?
まず言えることは、脳梗塞を発症して間もない時期に飲酒することはできません。
脳梗塞の急性期には、血栓を溶かす治療や、血圧の厳格なコントロールが必要です。
お酒は血圧を上昇させる作用があるため、脳の血流が安定しない時期の飲酒は、絶対に禁止です。
ですが、脳の血流が安定する2〜3ヶ月以降はどうでしょうか?
2003年に、JAMAという世界的に権威の高い雑誌に、お酒と脳卒中、脳梗塞の関係を調べた研究が発表されました。
それによると、お酒をまったく飲まない人の脳梗塞発症リスクを1とすると、一日の飲むアルコールが12g以下(日本酒約0.5合)では発症リスクが0.8、12〜24gでは0.72、24〜60gでは0.86と、むしろ低い数値でした。
国内の研究でも同様に、お酒を1日1合未満飲む人は、飲まない人と比較して、脳梗塞の発症リスクが半分以下になったと報告されています。
お酒も適量であれば脳梗塞のリスクを高めるわけではなく、絶対に飲めないというものではなさそうです。
しかし、アルコールの量が多くなると、国内・国外の研究とも、脳梗塞の発症リスクが高くなることが明らかになっています。
国内の研究では、1日2合程度からリスクが高くなるものの、国外の研究では2.5合までリスクが抑えられていたとするなど、アルコールの適切な量には、人種や性別など、個人差が大きいことに注意が必要です。
お酒がもともと飲めない方に、飲酒を勧める内容ではないことに注意しましょう。
お酒による健康効果
お酒による健康効果は、耳にしたことがあると思います。
特に赤ワインはポリフェノールを多量に含み、抗酸化作用があることから、その健康効果に注目している方も多いことでしょう。
ワインに限らず、お酒には血管の炎症を抑える作用があることが報告されています。
脳梗塞の主な原因は、動脈硬化により血流が減少することや、血のかたまり(血栓)により血管が閉塞してしまうことです。
血管の炎症は、動脈硬化や血栓の原因となるため、それを抑えるお酒には、脳梗塞の発症を抑制する効果があります。
アルコールは血を固まりにくくするため、血栓ができにくくなるものとも考えられます。
飲酒を適切な量でコントロールできるのであれば、脳梗塞の発症後であっても、プラスの効果があるといってよいでしょう。
お酒の飲みすぎは、脳梗塞再発の原因に
お酒は、適量であれば健康効果を期待できますが、適量をこえると大きなマイナスとなります。
アルコールには血圧を上昇させる作用があるため、脳卒中を発症させるリスクとなります。
アルコールには利尿作用があり、体が水分不足に陥りやすくなります。
飲み会から帰ってきたときや、翌日にのどが乾くのはそのためです。
体が水分不足になると、脳の血流が低下し、血栓ができやすくなります。
研究データでは、アルコール摂取が60g(日本酒約2.5合)をこえると、脳梗塞のリスクが約1.7倍、脳出血のリスクは約2.2倍になると報告されています。
のどが乾いたと感じながら、酔いに任せてついそのまま寝入ってしまうなどの行為は、非常に危険であることがわかります。
脳梗塞を一度発症している方は、動脈硬化がすでに進行しているケースが多く、一度も脳梗塞になっていない方と比較してリスクは格段に高くなります。
より一層の注意が必要です。
脳梗塞になっても、タバコは吸っていい?
適量のお酒は、脳梗塞の発症リスクを抑えます。
それでは、タバコはどうでしょうか?
適量であればいいのでしょうか?
残念ながら、タバコによる健康効果はありません。
タバコの煙は、動脈硬化を進展させるため、喫煙者は非喫煙者と比較して、脳梗塞による死亡リスクが2〜3倍になります。
少ない本数であれば、多い本数吸う人と比較してリスクが多少抑えられるのは確かですが、タバコは適量でやめるのが非常に難しいという特徴があります。
禁煙するときには「減らす」のではなく「一気にやめる」方が良いとされています。
以上のことから、タバコは少量でも適量でも吸うべきではないといえます。
そもそも百害あって一利なしのタバコには「適量」という概念がありません。
まとめ
脳梗塞とお酒の関係について、解説しました。
適量のお酒は健康に良い効果をもたらし、リラックス効果や人との関係を良くする効果などが期待できます。
しかし、量が過剰になってしまうと、それによる損失は計り知れません。
お酒とはうまく付き合っていく工夫が必要ですね。