不整脈が引き起こす心原性脳梗塞の特徴
脳梗塞には、大きく分けて3つのタイプがあります。
脳にある細い血管が高血圧などの影響で詰まってしまう「ラクナ梗塞」、動脈硬化やコレステロールが原因となる「アテローム血栓性脳梗塞」、そしてここで紹介する「心原性脳梗塞」です。
脳梗塞の原因の約20〜30%は、心原性であると言われています。
心原性脳梗塞は、心臓で作られた血の塊(血栓)が脳へ流れてきて、脳の血管に詰まってしまうことで、その先に血液が行かなくなり脳梗塞になってしまうものです。
心臓で血栓ができてしまう原因に「心臓弁膜症」があります。
心臓での血液の流れは、太い血管にある弁が閉じたり開いたりすることでスムーズになっているのですが、何らかの原因で弁の機能に異常が起きるのが心臓弁膜症です。
弁膜症になると血液の流れが滞りやすくなり、血栓ができやすくなります。
そして弁膜症以上に血栓ができる原因になりやすいのが、心房細動をはじめとした「不整脈」です。
不整脈があると、心臓内で血液が滞りやすくなるため、血栓が発生します。
心臓でできる血栓は、大きく成長した状態で脳へ流れていくため、脳の太い血管に詰まります。
すると、脳がダメージを受ける範囲が大きくなり、脳梗塞の神経症状は重篤なものになりやすくなります。
脳卒中データバンク2015によると、院内死亡率は心臓以外が原因の脳梗塞では2.58%であるのに対して、心原性脳梗塞は11.7%と、圧倒的に高くなります。
不整脈は症状として自覚していないことも多く、自分では健康と思っていた人でも、急に重篤な状態になりやすいという特徴があります。
不整脈が脳梗塞を引き起こすメカニズム
心臓には2つの心房と2つの心室、あわせて4つの部屋があります。
体から静脈を通って戻ってきた血液は、心房に入り、心室に送られたあとに体へ送り出されます。
健康な心臓では、心房→心室の順に筋肉が収縮することで、血液がスムーズに送り出されていきます。
心原性脳梗塞の原因になる代表的な不整脈である心房細動では、心房が不規則にけいれんするように収縮しているため、血液を効率よく心室へ送り出すことができません。
時々は心室が収縮して血液を送り出していくため、体の血液が足りなくなることはなく、症状を自覚せずに日常生活を送っている方も少なくありません。
しかし、心房内では血液がうっ滞し、血栓ができやすい状態になっています。
このような状態が長く続くと、心房内ではリモデリングという現象が起きて、血栓を作りやすい因子が産生されやすくなります。
さらに、心房細動を起こしている人は、もともと高血圧や糖尿病を患っていることが多く、動脈硬化などの血管の異常を有しています。
これらの要因が複合的に関与し、心房内(左心房、特に左心耳という場所)で血栓が形成され、脳へ流れてきて心原性脳梗塞が発症してしまいます。
不整脈による脳梗塞を予防しよう
不整脈による脳梗塞を予防するためには、血栓ができづらくなる抗凝固薬の使用が重要であり、適切な治療を受けることで発症率を下げることができます。
不整脈の症状が強い場合には、抗不整脈薬を使用したり、カテーテルを使用してアブレーションという根治的な治療を受けたりすることもできます。
不整脈という診断がついていれば、脳梗塞の発症前に、このような予防治療を受けることができます。
しかし問題になるのは、不整脈があるにも関わらず、何ら症状を自覚せずに日常生活を送っている方の存在です。
心房細動は持続的に起こるタイプと、時々発作のように起こるタイプがあり、発作性の心房細動では、特に診断が難しくなります。
このような方々を「無症候性心房細動」とよび、心房細動全体の約3分の1を占めていると言われます。
心房細動は加齢に伴って増え、80歳以上の男性では10%以上とも言われます。
無症候性心房細動を発見するためには、定期的に健康診断を受けることや、少しでも動悸や胸の違和感など症状があれば診察を受けることが重要です。
発作を起こしていない状態では、通常の心電図だと分からないため、24時間心電図を装着するホルター心電図などの検査が行われます。
最近ではそれでも発作を捉えることができない方に対して、30日間装着する体外式イベントレコーダーという器械が使用されることもあります。
一般家庭でも早期に発見できるように、心房細動検出機能がついた血圧計や、スマートフォンやスマートウォッチの心電図機能が開発され、有力なツールとして注目を集めています。
まとめ
不整脈と脳梗塞の関係について、紹介しました。
重症の脳梗塞は、一度完成してしまうと致命的になる可能性があり、一命をとりとめても重篤な後遺症が残る怖い病気です。
日頃の健康管理が重要となるのは、言うまでもありません。