脳梗塞と一言にいっても、原因や発症後の経過は人によってさまざま。
残念ながら亡くなってしまう方、半身麻痺など重い後遺症を残す方がいらっしゃる一方で、ほとんど症状がなく退院して現役として社会復帰する方もいます。
発症後の経過で重要になるのが、早期発見・早期診断・早期治療です。
「どうしよう」と迷っているその時が、まさに運命の分かれ目かもしれません。
ここでは、脳梗塞の早期診断・早期発見について解説していきます。
脳梗塞の早期診断。未来を決めるタイムリミット
脳梗塞の治療には病状に応じてさまざまなものがあります。
その中でも、良好な治療成績を収めているのが「t-PA(プラスミノーゲン・アクチベータ)」という治療法です。
日本では2005年に認可された新しい薬剤で、血液のかたまりを溶かす作用のある薬です。
t-PAの登場により、脳梗塞の治療成績は大きく改善し、後遺症の少ない状態で退院する患者さんが増加しました。
強い作用を持つt-PAですが、効果が強いだけに、逆に出血のリスクがあります。
特に脳梗塞を発症して時間が経ってから投与すると、脳出血を発症する可能性が高くなります。
そのため、t-PAを使用できるのは、脳梗塞の発症後4.5時間以内という基準が、厳密に決められています。
次に早期治療として高い効果が期待できるのが「カテーテル治療」です。
脳の血管に詰まった血液のかたまりを、カテーテルで直接回収する方法です。
「脳血管内治療」とも呼ばれます。
この方法にもタイムリミットがあり、原則として、発症後6時間以内とされています。
近年になり、発症後24時間以内を適応とする流れが国際的にありますが、いずれにしても、できるだけ早く治療を受けることが重要です。
早く気づいて、早く病院に行き、早く診断してもらう
病院についてすぐに治療が開始できるわけではありません。
MRI検査などの時間(検査だけで20〜30分程度かかります)を考えれば、できるだけ早く病院を受診しなければなりません。
そのためには、できるだけ早く脳梗塞の発症に気づく必要があります。
脳梗塞は夜や明け方に発症することが多いため「朝まで様子を見よう」という判断や、朝になって気づくのでは、すでに時遅し、という可能性があります。
発症に早く気づくには、脳梗塞の症状を知っておくことが大事です。
自分だけでなく、他人から見ても分かりやすい脳梗塞の症状が、次の3つです。
顔
左右どちらか半分の動きが悪い、左右非対称になっている、唇のはしが垂れ下がっている
腕
力が入らずだらんと下がってしまう
言葉
ろれつが回らない、うまく言葉がでてこない、聞いた言葉が理解できない
顔(Face)、腕(Arm)、言葉(Speech)、時間(Time)の頭文字をとった「FAST」という用語がよく使われます。
他にも、以下の自覚症状が出る場合もあります。
・急に手足の感覚が鈍くなる
・しびれる
・視野の異常が出る など
このような症状が出た場合には、できるだけ早く病院を受診するようにしましょう。
早期発見の可能性
脳梗塞が発症したら、できるだけ早く気づくことが重要ですが、それなら発症する前に予想することはできないのでしょうか?
早期発見に役立つかもしれないのが「MRI」「MRA」「頚動脈超音波検査」です。
MRI
脳のMRIを撮ると、偶然見つかる可能性があるのが「ラクナ梗塞」です。
脳の細い血管が詰まるラクナ梗塞では、症状が何もないというケースが少なくありません。
しかしラクナ梗塞があるということは、近いうちにもっと大きな脳梗塞が発症するリスクが高いということになります。
そうなる前に治療を開始することができれば、脳梗塞の予防に役立つ可能性があります。
MRA
MRIを使用して、脳の血管を評価する方法です。
くも膜下出血の原因となる「脳動脈瘤」を発見できる可能性があります。
頚動脈超音波検査
頚部にある動脈に超音波をあてて、血管の状況を検査する方法です。
動脈硬化の程度やアテローム(コレステロールなどがたまって血管を狭くしてしまう病変)を調べることができます。
動脈硬化やアテロームは、脳梗塞の直接的な原因となるため、程度によってはすぐに治療を開始します。
これらの検査は、多くの病院で「脳ドック」として受けることができます。
自らの血管の状況を調べておくと、脳梗塞の早期発見につながるかもしれません。
ただし、発症前に治療を行うことはメリットと同時にデメリットを伴う可能性があります。
むやみに病気を怖がるだけでなく、検査結果の説明をよく聞いて、状況を理解するようにしましょう。
まとめ
脳梗塞の早期発見・早期診断について解説しました。
脳梗塞になってしまったら「とりあえず様子をみよう」は禁物です。
疑わしい症状があれば、早めに病院を受診して早期発見・早期診断・早期治療につなげましょう。