水分不足はドロドロ血液の源。正しく補給して脳梗塞を予防しよう

脳卒中には、季節によって発症しやすい時期とそうではない時期があります。

冬に多いのは、脳出血やくも膜下出血。

寒い時期には、体の熱を逃さないように血管が収縮して血圧が上昇するため、出血が起きやすくなります。

反対に、夏に多くなるのが脳梗塞。

夏に脳梗塞が多くなる原因は、水分不足。

つまり、脱水です。

汗をかいて体内の水分が足りなくなると、血液がドロドロになって、血管が詰まりやすくなります。

ここでは、水分不足と脳梗塞の関係、正しい水分補給について解説していきます。

目次

水分不足がもたらす恐怖。脳梗塞を病型別に解説

脳梗塞は、原因によって次の3種類に分類されています。

・心原性脳塞栓症
・アテローム血栓性脳梗塞
・ラクナ梗塞

どの病型についても、水分不足が脳梗塞の発症に関与する可能性があります。

ここでは病型別に、水分不足と脳梗塞の関係について紹介します。

心原性脳塞栓症

心臓の中にできてしまった血液のかたまり(血栓)が、脳に飛んで起こる脳梗塞です。

頻度が高いのは「心房細動」という病気で、心臓が不規則な収縮をするために、心臓の中で血液がうっ滞してしまい、血栓ができやすくなります。

血栓ができやすくなるのは、心臓の機能が良くない場合や感染症が加わった場合などがありますが、大きな要因となるのが水分不足です。

心房細動治療ガイドラインでも、脱水を予防するために飲水を促す生活指導が勧められています。

アテローム血栓性脳梗塞

アテロームとは、血液中のコレステロールなどが血管壁に入り込んでできた塊のことです。

塊の一部がはがれたり、破綻したりすることで、血管が閉塞されて血流が障害されてしまい、血流の障害が一定時間をすぎると、脳梗塞になってしまいます。

ただし、血管が閉塞されても、側副血行路といって、細い血管が新たにできて脳梗塞を免れることも多いです。

このようなギリギリの状態のときに、水分不足や水分不足に伴う血圧低下があると、血流が足りなくなり、脳梗塞になってしまうことがあります。

ラクナ梗塞

ラクナ梗塞は、脳の深部にある細い血管の血流が障害されることで起きる、小さな脳梗塞です。

元々細い血管を通っているため、血流には余裕がありません。

水分不足になると、血液が濃縮され、血液の成分が凝集してドロドロの血液となります。

その状態が続くと、ラクナ梗塞が発生しやすくなります。

特に高齢者は水分不足に注意が必要

特に高齢者は水分不足に注意が必要

水分不足は誰にでも起きる可能性がありますが、ご高齢の方は特に注意が必要です。

体にある水分は、筋肉や皮下組織などに多く備蓄されていますが、ご高齢の方は筋肉量が減少するなどの要因で、元々予備の水分が多くありません。

それに加えて「トイレが近くなるから」と言って、あまり水分をとりたがらない方がいらっしゃること、腎臓の機能が低下して水分を保持する能力(抗利尿ホルモン)が低下することなどが関係して、ご高齢の方は水分不足に陥りやすいのです。

ご高齢の方は、のどが乾いたなど、水分不足のサインに気づきにくい傾向もあります。

自分だけではなく、周囲の方も注意する必要があります。

正しく水分補給をして脳梗塞を防ぎましょう

水分不足を防ぐには、やはり水分補給が必要です。

ただし闇雲に水分ばかりとっても、効果が得られにくいでしょう。

そのため、ポイントをおさえた水分補給が有効です。

まず、どれくらいの飲水をすればよいのか?

年齢などにより違いはありますが、私たちが1日に必要とする水分量は、体重あたり35〜40ml程度といわれています。

体重60kgの方であれば、1日に2〜2.5リットルということになります。

食事からも水分を摂取することができますので、飲料からは1〜1.2リットル程度の水分摂取が勧められます。

また、血液の粘稠度、つまり濃さには、1日の中でも変動があることが知られています。

血液がドロドロになり、最も脳梗塞になりやすいのは、睡眠中と朝起きたときです。

人は寝ている間に、500mlくらい汗をかいているとされています。

そのため、水分補給をすることがないため、夜間・起床時に脳梗塞が発症しやすくなるのです。

就寝前と起床時に、コップ1杯程度の水分補給をするようにしましょう。

こんな水分補給はNG!利尿作用のある飲み物

水分補給が大事であることは分かりましたが、水分なら何でもいいのでしょうか?

もちろん、そうとは限りません。

飲み物の中には、尿を出しやすくする(利尿作用)効果があるものがあります。

いくら水分をとったつもりでも、逆に水分不足になってしまうのです。

利尿作用のある飲み物の代表は「アルコール」です。

お酒を飲むとトイレが近くなるのは利尿作用があるためで、特に利尿作用の強いビールを1リットル飲むと、1.1リットルの水分が体外に出ていくとされています。

また、緑茶やコーヒーなどカフェインの入った飲み物も、利尿作用を持っています。

飲むのは、水やカフェインの入っていない麦茶などがよいでしょう。

まとめ

脳梗塞と水分不足の関係について、解説しました。

意識しても、なかなか十分な水分はとれていないもの。

適切に水分を補給して、脳梗塞を予防しましょう。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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