脳梗塞と構音障害・失語

脳梗塞後の後遺症のひとつに、言語障害というものがあります。

言語障害は、ざっくりといえば「しゃべりにくい」ということなのですが、「しゃべりにくい」といっても、そこにはさまざまなパターンがあります。

その障害がどういったものかを知ることで、断然コミュニケーションがとりやすくなります。

ぜひ言語障害について、詳しく学んでみてください。

目次

言語障害とは

言語障害は、構音障害失語症の2つに分けることができます。

この2つは似ているようで全然違います。

しゃべれない」からといって、怒らないでください。

コミュニケーションの方法を工夫すれば、会話が成立する場合もあります。

構音障害について

構音障害とは

構音障害とは、意図したとおりに音を出して話すことができず、発音・抑揚・スピードなどが障害されることをいいます。

患者は「ろれつが回らない」「言葉がもつれる」といった表現で訴えることが多いとされています。

構音障害は「話す」ことの障害です。

言葉の理解力に問題はありません。

つまり、読み書きは正常にできます。

ただし、利き手に麻痺が出ている場合は「書く」ことができない場合もあります。

構音障害のある方は、摂食・嚥下障害が生じる場合もあります。

構音障害の方とのコミュニケーションのポイント

お話でのコミュニケーションが難しい場合は「筆談」を用いてみてください。

筆談が難しい場合は、50音表やパソコンを用いてみてください。

失語について

失語とは

失語とは、脳の言語中枢に損傷を受け「話す」「聞く」「読む」「書く」に問題が生じた状態です。

構音障害の場合は「話す」ことが難しいのですが、失語症の場合はこれに加え「聞く」「読む」「書く」ことも難しくなります。

ただし、失語症であっても、障害された部位によって症状はかなり異なります。

失語の種類

失語には、ウェルニッケ失語(感覚性失語)、健忘失語、ブローカー失語(運動性失語)、全失語などがあります。

ウェルニッケ失語(感覚性失語)や健忘失語
比較的流暢に言葉を話すことができる

ブローカー失語(運動性失語)や全失語
発語がぎこちなかったり、発語がなかったりと、言葉を流暢に話すことができない

ウェルニッケ失語(感覚性失語)

流暢に話すことができますが、錯語(言いたい言葉が異なる言葉となって出てくること)やジャーゴン(話していることが支離滅裂で意味不明な状態)が混ざる場合があります。

言葉を聞いて理解する力が低下し、復唱することが困難な傾向があるため、言葉のキャッチボールが成り立たない場合があります。

健忘失語

最も軽度の失語症です。

言葉を聞いて理解する能力は保たれており、流暢に話すことも復唱することもできますが、物や人の名前が出てこないことがあります。

ブローカー失語(運動性失語)

言葉を聞いて理解する能力は保たれていますが、流暢に話すことや復唱することが困難な傾向があります。

右半身の麻痺を伴っている場合が多いです。

全失語

最も重症の失語症です。

話す」「聞く」「読む」「書く」といった機能のすべてが困難になります。

理解をすることが難しく、例えば、ある物の名称を伝えても、身の回りの物品からその伝えた物を正しく選択できません。

発語がまったくみられないか、発語があっても意味のある言葉を話すことは難しいです。

右半身の麻痺を伴っている場合が多いです。

失語の方とのコミュニケーションのポイント

話しかけるときはゆっくりと、わかりやすい言葉で話しかけましょう。

絵や図、ジェスチャーなどを使用するのもよい方法です。

「はい」「いいえ」で答えられるものなど、最初から選択肢を提示するのも効果的です。

答えられない質問は、質問の仕方を変えてみる工夫をしましょう。

なかなか言葉が出てこない場合も、せかさず怒らず待ちましょう。

構音障害の方には効果的な50音表ですが、失語の方には適していません。

失語の方は、仮名よりも漢字の方が理解しやすいので、簡単な漢字を用いて説明などをするのはよいと思います。

話がなかなか通じないときは、相手の表情や視線を注意深く観察しましょう。

言葉だけでなく、こういったところからも意思を汲み取ることができます。

失語の方とコミュニケーションをとる上で知っておいてほしいこと

失語の方とお話をするときに、知っておいてほしいことがあります。

失語の方とコミュニケーションがとれず、患者さんに対して怒っている場面を時々お見かけします。

思うようにコミュニケーションがとれず、イライラすることもあるとは思うのですが、怒らないでほしいのです。

特に全失語の方などは、理解力があまりよくないのですが、怒られていることや悪口を言われているというのは、なんとなく察しています。

失語症になっても、そういった側面は保たれるのです。

コミュニケーションを否定されることで、孤独感を感じたり、精神的にストレスを感じ、余計に失語が悪化するおそれもあります。

どうか温かく見守ってください。

言語聴覚士の活用

すべての病院ではないですが、言語聴覚士という、言葉や嚥下のリハビリテーションの専門スタッフがいる場合があります。

コミュニケーションがなかなかうまくいかず困っているときは、ぜひ言語聴覚士に声をかけてみてください。

病状は一人ひとり違うので、その患者さんに合った適切なコミュニケーション方法を示してくれます。

また、残念ながら言語聴覚士がいない場合は、医者や看護師にコミュニケーションの方法を尋ねてみてください。

力になってくれると思います。

社会参加の重要性

コミュニケーションがとりにくいと、どうしても家に引きこもりがちになってしまいます。

しゃべるのは恥ずかしい、話したくないという思いもあると思うのですが、ぜひ外出する機会を作ってください。

いろいろな人と会話をしたり、いろいろなものを聞くことで、言語機能が活性化します。

また、家に引きこもることは筋力低下にもつながりますので、結果的に歩けなくなったり、骨折しやすくなったりと、言語だけでなく別の問題を引き起こす可能性もあります。

無理のない範囲で構わないので、スーパーに行ったり、近所を散歩してみたりしてください。

外に出ることが、逆に気分転換になることもありますよ。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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