脳梗塞の種類は3タイプ~アテローム血栓性脳梗塞・心原性脳梗塞・ラクナ梗塞

脳梗塞とは、脳動脈の狭窄や閉塞により灌流域(血液の流れる場所)の虚血が起こり、脳組織が壊死に陥る疾患です。

障害部位により、さまざまな局所神経症状をきたします。

脳血管疾患死亡数の半数以上を占め、高齢化に伴い罹患数(その病気にかかった人の人数)の増加が予想されています。

また寝たきりの原因疾患の第1位であり、発症予防とともに、早期のリハビリテーションによるADL(日常生活動作)向上、社会復帰が重要です。

目次

脳梗塞と年齢・男女比

脳梗塞は、70歳以上に多いとされています。

しかし40~50代の働き盛りでも発症しますし、多くはないですが10代や20代、さらには妊婦なども発症するケースがあります。

脳梗塞の発生頻度と性差については、大差はないものの、女性に比べ、やや男性の方が多いです。

女性が脳梗塞を発症した場合、男性に比べて高齢発症で、発症時の重症度が高く、予後不良となりやすいといわれています。

脳梗塞自体は、遺伝するものではないとされています。

しかし、脳梗塞は生活習慣とも関わりが深い病気ですから、同じ生活習慣をしていて脳梗塞を発症した方がいる家系では、脳梗塞を発症しやすいといえるでしょう。

脳梗塞の種類

脳卒中は、以下の3種類に分類されます。

・脳梗塞
・脳出血
・くも膜下出血

この中で、脳梗塞は脳卒中のおおよそ6割を占めると言われています。

とても多いですね。

脳梗塞を2種類に分類

脳梗塞は、まず脳血栓と脳塞栓の2種類に分けることができます。

脳血栓
動脈硬化などによって血栓ができ、それが血管を塞いでしまう状態。

脳塞栓
心臓などにできた血栓が脳まで流れていき、血管を塞いでしまった状態。

脳梗塞3種類に分類

脳梗塞は、さらに細かく分類することができます。

以下の3種類です。

・アテローム血栓性脳梗塞
・心原性脳梗塞
・ラクナ梗塞

アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞は脳血栓、心原性脳梗塞は脳塞栓となります。

それぞれ少しずつ危険因子や原因が異なります。

発生割合としては、どれも3割程度です。

日本ではラクナ梗塞が多いとされてきましたが、近年では食生活の欧米化により、アテローム血栓性脳梗塞が増加しています。

アテローム血栓性脳梗塞

原因

アテローム血栓性脳梗塞は、以下が危険因子として挙げられます。

高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒など

これらの病気や習慣により動脈硬化が進むと、脳梗塞を発症しやすくなります。

動脈硬化とはその名のとおり、動脈の血管が硬くなって、弾力性が失われた状態のことをいいます。

動脈硬化によって、プラーク(ドロドロした粥状物質)が成長し、血液を流れにくくしたり、血栓(血の塊)を形成することで脳梗塞を起こします。

症状

安静時に発症することが多いとされます(睡眠中に発症、起床時に気付くなど)。

片麻痺、構音障害などに加え、ときに失語や意識障害がみられます。

ときに症状の段階状の悪化を認めます。

一時的に麻痺や言語障害が出るものの、その後症状が消失する一過性脳虚血発作(TIA)がみられることもあります。

一過性脳虚血発作は、脳梗塞の前触れとされており、注意が必要です。

心原性脳梗塞

原因

心原性脳梗塞は、心房細動などの心疾患が危険因子として挙げられます。

心臓内にできた血栓の一部が脳動脈に流れ込み、血管を閉塞させ脳梗塞を起こします。

心房細動は、不整脈の一種です。

心臓が一定のリズムで血液を全身に送れないため、そこによどみが生じます。

よどみが生じている状態だと、血栓を作りやすいのです。

心房細動のある方は、正常な方に比べて、脳梗塞を発症する確率が5倍程度高いとされています。

症状

典型的には活動時に突然発症し、短時間で症状が発生します。

片麻痺、意識障害を多く認めます。

広範囲な梗塞巣となり、重篤な症状になることが多いとされています。

ラクナ梗塞

原因

ラクナ梗塞は、以下が危険因子として挙げられます。

高血圧、糖尿病、高脂血症など

脳内の細い血管が傷つき、詰まってしまうことで、脳梗塞を引き起こします。

症状

症状は運動障害のみ、感覚障害のみなど、比較的軽いことが多いとされます。

アテローム血栓性脳梗塞や心原性脳塞栓症に比べて、比較的軽症です。

脳細胞が壊死する範囲が小さいので、症状が出ないこともあります。

これを無症候性脳梗塞というのですが、高齢者の方では「脳ドッグなどでCTやMRI検査を受けてみたところ、知らぬ間に脳梗塞を起こしていた」なんていうことも、少なくありません。

ラクナ梗塞は、予後も一般的には良好ですが、繰り返すと認知症やパーキンソン症候群の原因となることもあります。

脳梗塞を発症した著名人

著名人の方の中にも、脳梗塞を発症された方はいらっしゃいます。

長きにわたり巨人の4番打者として活躍したプロ野球選手、ミスターこと長嶋茂雄さんも脳梗塞を発症されました。

長嶋さんの脳梗塞の種類は、比較的後遺症が重いとされる心原性脳梗塞です。

長嶋さんは、毎日欠かさずリハビリをされていたそうです。

そして病院でのリハビリに加え、ご自身でも自主的にリハビリをされていたそうです。

きっと血のにじむような努力をされたことでしょう。

リハビリは肉体的にも精神的にもつらいですが、やった分だけ必ず自身のプラスになります。

脳梗塞で脳が障害された範囲によっては、リハビリで麻痺をすべて取り除くのは難しい場合もあります。

しかし、リハビリで残存機能を維持すること、また残存機能を最大限活かすことによって、生活は変わっていきます。

諦めずにリハビリに取り組んでいきましょう。

長嶋茂雄さんの他にも、昭和の大スター西城秀樹さん、国民的バンドのMr.Children桜井和寿さんなど、若くして脳梗塞を発症された方もいらっしゃいます。

若いから脳梗塞にはならない、若いから脳梗塞になっても麻痺は残らない、というのは間違いです。

若いからと過信せず、高血圧や心疾患など脳梗塞の危険因子を抱えている方は、まずその治療をしっかりと行っていきましょう。

脳梗塞を発症された患者さんの中には、こういった危険因子を抱えているにもかかわらず未治療であったり、途中で治療を中断された方も多く含まれています。

また、危険因子を抱えていなくとも脳梗塞を発症することはありますので、脳梗塞を発症したときに適切な対処ができるよう、しっかり学んでいきましょう。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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