脳梗塞の後遺症で介護が必要?!どんな手続きをすればいいの?

脳梗塞は、血栓や血管狭窄などによって「脳の血管が詰まり、血流が途絶えることで脳細胞が壊死する病気」です。

脳の血流が途絶えると、脳細胞に酸素やエネルギーが十分に供給されず、脳細胞は壊死してしまいます。

一度壊死したものは元に戻らず、壊死した脳細胞が司っていた脳の機能は障害を受けます。

これが、いわゆる「脳梗塞の後遺症」です。

後遺症の有無や重症度は、脳梗塞によって障害を受けた範囲や度合いによって異なります。

家族が脳梗塞の後遺症によって介護が必要になった場合、どんな手続きを行えば良いのか、介護に必要な費用と併せてご紹介します。

目次

脳梗塞で介護が必要になった時の手続き 

脳梗塞の後遺症によって介護が必要になった場合、行う手続きについてご紹介します。

介護保険を申請する 

介護保険とは、要支援や要介護認定を受けた方が、さまざまな介護サービスを利用する際に、費用の一部を給付してもらえる制度です。

『65歳以上の方や40歳以上の特定疾病をもつ方』を対象にしており、特定疾病に脳梗塞は含まれます。

市区町村役場の担当窓口で申請を行い、役場職員またはケアマネージャーの認定調査を経て、要介護や要支援と認定されれば介護サービスを受けられます。

ただし、この介護認定審査で決められた要介護度に応じて支給限度額は異なるので、注意が必要です。

限度範囲内でのサービス利用は、利用者負担が1割(一定以上所得者は2~3割負担)ですが、限度額を超えると、超過分全額自己負担となります。  

要介護状態の区分 1ヶ月の支給限度額 
要支援1 50,320円 
要支援2 105,310円 
要介護1 167,650円 
要介護2 197,050円 
要介護3 270,480円 
要介護4 309,380円 
要介護5 362,170円 
居宅サービスの支給限度額表 

出典:厚生労働省「区分支給限度額について」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000049257.pdf

この表で、介護度に応じた月間に支給される限度額が分かります。

限度範囲内で利用できるサービスについては、担当のケアマネージャーが管理を担います。 

一定以上所得者とは?

『合計所得金額が220万円以上の方』は、利用者負担が3割です。

ただし、合計所得金額の合計が『単身世帯で340万円未満、2人以上世帯で463万円未満』の場合は、2割負担に変わります。

また『本人合計所得220万円未満160万円以上』『単身世帯金額280万円以上、2人以上世帯346万円以上』は2割負担となります。

介護保険認定結果と同時に発行される介護保険負担割合証に自己負担割合が記載してありますので、確認しましょう。 

身体障害者手帳を申請する 

身体障害者手帳を所有していれば、自治体の福祉支援を受けることができます。

身体障害者手帳を申請するには、各都道府県の指定医に必要な診断書を作成してもらい、身体障害者手帳申請書と一緒に市区町村へ提出します。

ただし、身体障害者手帳における障害者とは「障害が永続する状態」を指すため、申請できるのは発症から6か月目以降です。

申請から1か月~2か月で手帳が交付され、障害の重症度によって1級から6級に認定されます。

その内、1級~3級に該当される方は、重度障害医療受給者証が交付されます(※市区町村によって4級まで含まれる場合があります)。

重度障害医療受給者は、脳梗塞に関わる医療費だけでなく、あらゆる医療費が無料になります。 

また、課税対象になる所得から一定額が控除され、税負担が軽くなります。

控除金額は3級~6級の障害者控除で27万円、1級~2級の特別障害者控除で40万円とされています。

所得税のほかにも、住民税や相続税などの税金も障害者控除によって軽減されます。 

障害年金を申請する 

障害年金とは、国から障害のある人へ支給される公的年金です。

障害の度合いによって、年金額は異なります。

例えば、厚生労働省の調査によると、障害年金を受給している人の57.9%が障害等級2級に該当しており、最低でも年間78万円の支給を受けています。

受給に必要な4つの条件 

障害年金の受給には、以下の4つの条件があります。

  1. 障害認定基準に該当する障害があること。 
    (身体障害者手帳の等級基準とは基準が異なりますので、別途手続きが必要です)
  2. 障害の原因となった疾病やケガの初診日から1年6か月経過していること。 
    (初診日から6か月目以降にそれ以上回復がない診断の場合、期限内でも認定されます)
  3. 初診日に65歳未満で、初診した月の前々月までの1年間に年金保険料の未納がない。 
  4. 20歳~64歳であること 

国民年金の方は、市区町村の年金窓口で、障害基礎年金の申請を行います。

厚生年金の方は、年金事務所または年金センターで、障害厚生年金の申請をします。

障害年金の審査は、およそ3か月かかり、審査に通ると、年金証書が郵送されてきます。

初回の振り込みは、年金証書が届いてから約2か月後になります。

2か月ごとに2か月分が振り込まれる形です。 

その他の手当を申請する 

傷病手当

疾病のために働くことができず、仕事を休んだ期間に、標準報酬日額の3分の2が支給されます。

最大で1年6か月までしか受給できませんので、その期間を超える場合は、障害年金の手続きを進めます。

事業主から健康保険の保険者へ申請する健康保険の制度です。 

失業手当

脳梗塞をきっかけに退職となってしまった場合に受給できる、雇用保険の制度です。

勤務先より離職票を受け取り、ハローワークで手続きします。

基本手当日額を給付日数分受け取れます。

受給期間は原則1年ですが、最長3年間まで延長できます。 

脳梗塞の介護にかかる費用 

脳梗塞後遺症によって介護が必要になった場合、介護にかかる費用についてまとめます。

在宅介護の場合 

介護度1月あたりの平均費用 
要支援1 2.8万円 
要支援2 3.4万円 
要介護1 5.4万円 
要介護2 7.7万円 
要介護3 7.2万円 
要介護4 10.1万円 
要介護5 10.7万円 
全体平均 6.9万円 

出典:家計経済研究所
http://www.kakeiken.or.jp/jp/research/kaigo2013/result1.html 

この表は、在宅介護を選択した場合にかかる介護費用です。

内訳は、以下のとおりです。

  1. 介護保険支給限度額内のサービス利用の負担額
  2. 限度額超過分(全額自己負担分)
  3. 介護保険対象外のサービス利用分
  4. その他(おむつや介護食などの介護用品代、医療費、社会保障費など)

※このうち「③介護保険対象外サービス」とは、デイケアでの食費などです。

この他にも、在宅介護の場合、手すりや段差の解消など住宅改修費用も介護保険の対象です。

改修前に申請し、施工後に支給されます。  

施設介護の場合 

『特別養護老人ホーム』や医療サービスと日常生活の介護サービスを中心とした『老人保健施設』などに入所する場合は、さらに費用が必要になります。

自宅での介護ができない方、重点的にリハビリを行う必要がある方などが対象です。 

介護施設に入所する場合は、介護費用に加え、居住費や食費、管理費など生活費用の支払いも必要になりますので、高額になります。

およそ15~30万円が月間金額の目安です。 

脳梗塞の後遺症が残ったら介護サービスを利用しよう 

脳梗塞後遺症によって日常生活に支障が生じる場合、介護サービスが必要になります。

介護保険では、介護度に応じて支給限度額が定められており、限度範囲内で利用するサービスを調整しなければなりません。

在宅介護、施設介護どちらにしても、それなりに介護費用はかかります。

肉体的にも精神的にも負担になりやすい介護ですが、金銭的な負担に関してはさまざまな給付金によって軽減できます。

どんな手続きを行えば良いのか、介護に必要な費用と併せてご紹介しました。

いざというときに慌てないために、必要な手続きや費用について確認しておきましょう。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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