理学療法士が行うリハビリ。脳梗塞による麻痺には、どんなリハビリを行うの?

脳梗塞の発症後は、容態を確認しながらも麻痺が残らないよう、出来る限り早いタイミングでリハビリを行う必要があります。

脳梗塞は筋肉に直接的な損傷を受ける病気ではなく、筋肉を動かす脳の司令塔が影響を受けることによって麻痺が残る可能性のある病気です。

そのため、リハビリにおいてはただ単に筋力を鍛えるのではなく、脳の神経と感覚を結びつけながら行う専門的なリハビリを受ける必要があります。

今回は理学療法士による、脳梗塞による麻痺を軽減するためのリハビリについて、ご紹介していきます。

脳梗塞後も悲観的になることなく、理学療法士の正しい知見に基いて、なるべく麻痺が残らないようリハビリに励みましょう。

目次

脳梗塞によって生じる麻痺

脳梗塞は、脳の中にある太い血管や頸動脈が詰まり、脳細胞が酸素不足に陥った結果として発症する脳の病気です。

血管の壁にコレステロールが溜まることによって生じる動脈硬化や高血圧、高脂血症、糖尿病によって引き起こされる動脈硬化によって誘発されると考えられています。

脳梗塞によって脳細胞が影響を受けると、その脳細胞が司っていた部分の身体機能が正常に動かなくなります。

代表的な後遺症は、片麻痺や全身麻痺、言語障害、そして視覚障害などです。

脳梗塞による麻痺は、早めのリハビリが鍵

脳梗塞によって損傷を受けた脳細胞は、脳梗塞の発症後から半年ほどの間に自己再生を試みます。

この期間に、医師の指導と理学療法士のサポートによるリハビリを行うことで、発症後の麻痺の残り方に差が出ることが分かっています。

脳梗塞の発症後は、血圧が安定しなかったり、容態が急変したりするリスクがありますので、麻痺が残るのを防ぐためには専門家による正しいリハビリを受ける必要があります。

脳梗塞による麻痺を防ぐリハビリを行う「理学療法士」とは

理学療法士は、病気やけがなどによって身体機能に障害を持った人の身体機能回復や向上、維持を支援するための専門職です。

日本では、理学療法士法に基づいて国家資格として定められています。

医療の現場では、PT(Physical Therapist)と呼ばれています。

主に脳梗塞の患者に対して、理学療法士は医師の診断に基いて麻痺が残りやすい場所を把握し、容態に合わせたリハビリテーションプログラムを作成します。

具体的には、以下のような理学療法技術を用いて、脳梗塞の後遺症で残りやすい麻痺に対してのアプローチを適切に行います。

運動療法や体位変換、筋力トレーニング、マッサージ、温熱療法、電気療法

特に脳梗塞は、麻痺が残ることによって要介護状態になりやすい病気でもあります。

退院後の日常生活が自立したものになるよう、患者一人ひとりの状況に合わせた支援を行うことが特徴といえます。

理学療法士(PT)と混同しやすい「作業療法士(OT)」とは

理学療法士と混同しやすい医療スタッフに、作業療法士という職業があります。

作業療法士は、OT(Occupational Therapist)と呼ばれています。

日常生活の動作や作業を通してリハビリを進める専門職です。

身体と心のリハビリを行うという特徴があり、手芸や工作といった日常的な作業を通して、心身の機能回復をサポートします。

脳梗塞による麻痺が生じた場合は、基本的な動作能力の回復を目的とする理学療法士によるリハビリが一般的ではありますが、必要に応じて作業療法士のサポートも受けることがあります。

理学療法士による、脳梗塞後の麻痺に対するリハビリ

脳梗塞を発症した後のリハビリは、発症後24時間〜48時間を目途に、寝返り練習や自分で座る練習から始めます。

容態が落ち着いた脳梗塞の発症後2週間〜半年以内は、特に積極的なリハビリを行うことが推奨されています。

この脳梗塞の発症後2週間〜半年の期間は「回復期」と呼ばれています。

病院によっては、脳神経外科からリハビリテーション科に移り、理学療法士による専門的なリハビリをおこなうところもあります。

理学療法士による、脳梗塞が原因の麻痺を改善するリハビリ①運動療法

脳梗塞による麻痺に対しては、筋力トレーニングや運動療法が有効とされています。

理学療法士は、患者の状態に合わせて、手足の動きを改善するための運動プログラムを作成していきます。

特に脳梗塞は、脳のどの部分に損傷があったかによって、麻痺が生じる部分が予測しやすい病気です。

脳の右側で脳梗塞が起こった場合は左半身、脳の左側で脳梗塞が起こった場合は右半身の片麻痺が生じる可能性が高いので、脳のダメージを鑑みて、リハビリプログラムを考案します。

ただ筋力のみを鍛えても、脳梗塞による麻痺で影響を受けた運動機能が回復することはありません。

そのため、運動の感覚を正常に取り戻すことができるようなリハビリを行います。

理学療法士による、脳梗塞が原因の麻痺を改善するリハビリ②感覚療法

脳梗塞の後遺症による麻痺は、患者の感覚機能を低下させる傾向があります。

感覚麻痺(しびれ)とも表現され、熱い・冷たいといった感覚を感じにくくなったり、常に手や足がしびれている感覚が抜けない方もいます。

そのため理学療法士は、電気刺激や磁気刺激によるリハビリや、反復療法やマッサージなどを通して、感覚を改善するためのリハビリを行います。

理学療法士による、脳梗塞が原因の麻痺を改善するリハビリ③日常生活動作の練習

脳梗塞を発症した患者は、回復期(脳梗塞の発症後2週間〜6カ月程度)を終えると、自宅での日常生活に戻ります。

脳梗塞の後遺症として麻痺が残っているままでは、自立した生活を送ることができず、介護サービスや家族の助けを常に必要とする状況に陥る可能性があります。

そのため理学療法士は、患者が日常生活を送る上で必要な動作の練習を繰り返し指導します。

患者の状況に応じて、杖や歩行器などの道具も取り入れながら、退院後の生活を自立して送ることができるよう、リハビリを行っていきます。

理学療法士によるリハビリは、脳梗塞による麻痺を防ぐために絶対必要

脳梗塞を発症すると、一命を取り留めたとしても麻痺が残る可能性があります。

脳梗塞の後遺症としての麻痺は、歩行や運動への影響はもちろんのこと、食べ物を飲み込むことや会話、触覚やしびれなど、あらゆる身体機能に影響を及ぼします。

そのため、脳梗塞発症後は、なるべく早くリハビリを開始する必要があります。

ただし、脳梗塞後は急な容態の変化や血圧に配慮が必要な時期でもあります。

そのため回復期のリハビリでは、国家資格をもった理学療法士による正しい指導を受けましょう。

理学療法士の指導に基づくリハビリを行うことで、脳梗塞の後に残る麻痺のリスクを少しでも軽減することができます。

脳梗塞の後遺症としての麻痺を正しく理解して、脳梗塞の発症後も麻痺に対するリハビリを積極的に取り入れていきましょう。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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