頸動脈狭窄症について

脳梗塞発症の危険因子として、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒などがあります。

高血圧や糖尿病は、動脈硬化を引き起こします。

動脈硬化によって「頸動脈狭窄症」という病気を引き起こすことがあります。

頸動脈狭窄症は、脳梗塞の原因となることがあります。

目次

脳梗塞と動脈硬化について

脳梗塞と動脈硬化の関係

脳梗塞と動脈硬化には、密接な関係があります。

高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、この動脈硬化を引き起こします。

動脈硬化が起きると、血管の柔軟性が失われて硬くなり、プラークと呼ばれる塊が血管の壁に形成され、血管が細くなっていきます。

その結果、血流が悪くなってしまい、血栓(血管内に血の塊ができること)・塞栓(脳梗塞の場合は、心臓などでできた血栓が脳の血管に到達し、血管を塞いでしまうこと)ができ、脳梗塞が引き起こされます。

動脈硬化について

動脈硬化は、全身の動脈で起こります。

なかでも内頚動脈(首にある太い血管)は、動脈硬化が起こりやすいとされています。

この内頚動脈が狭くなった状態を「内頚動脈狭窄症」といいます。

内頚動脈狭窄症は、脳梗塞のうち「アテローム血栓性脳梗塞」というタイプの脳梗塞の原因となります。

また、心臓には「冠動脈」と呼ばれる血管があるのですが、この血管でも動脈硬化が起こりやすいとされています。

冠動脈が動脈硬化を起こしている場合も脳梗塞を発症しやすく、この場合は「心原性脳梗塞」というタイプの脳梗塞の原因となります。

冠動脈の動脈硬化は、脳梗塞だけでなく、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)の原因にもなります。

頸動脈狭窄症とは

頸動脈狭窄症」とは、動脈硬化などにより、頸動脈が狭くなっている状態のことをいいます。

狭窄率が高いほど、脳梗塞を引き起こしやすくなります。

加齢でも動脈硬化は引き起こされますが、生活習慣病でも動脈硬化は引き起こされますので、生活習慣病を抱えている方は要注意です。

生活習慣の見直しが必要となってきます。

頸動脈狭窄症の診断

検査にはいくつかの種類があります。

痛みを伴わないものとしては、頸動脈のエコーがあります。

超音波を使った検査で、首にエコーの機械を当てるだけです。

また、MRIやCTで検査を行うこともあります。

血管造影検査では、動脈を穿刺するので痛みを伴いますが、血管の状態をより詳細に評価することができます。

検査は、脳ドックなどで受けることができます。

まずは、かかりつけ医に相談してみてください。

クリニックでも、頸動脈のエコーなど行っている場合があります。

頸動脈狭窄症の症状

頸動脈狭窄症の場合、無症状であることが多いです。

一過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞を発症してから、頸動脈狭窄症が発覚することも多くあります。

また、頸動脈狭窄症によって、脳の血流が減少した場合に、めまいや立ちくらみを感じる方もいます。

頸動脈狭窄症の治療

症状は出ないことが多い頸動脈狭窄症ですが、放っておくと脳梗塞を引き起こしかねないため、治療が必要です。

治療は、頸動脈の狭窄率や患者の年齢など、さまざまなことを考慮して行いますが、内科的治療や外科的治療を行います。

内科的治療
内服治療や生活習慣の改善

外科的治療
頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)や頸動脈ステント留置術(CAS)

頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)とは

頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)」は、頸部の皮膚を切開し、直接プラークを取り除く手術です。

麻酔は、全身麻酔となります。

確実に病変を除去できますが、全身状態が悪い場合には、全身麻酔を行うことが難しいなどの問題が生じることもあります。

頸動脈ステント留置術(CAS)とは

頸動脈ステント留置術(CAS)」は、足の付け根の太い動脈からカテーテルを挿入し、頸動脈の狭窄部でステントを広げ、血管を拡張します。

麻酔は、局所麻酔で行われることが多いです。

近年、頸動脈ステント留置術(CAS)は普及してきてはいますが、頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)に比べると、まだ治療の歴史が浅いといった部分もあります。

手術による脳梗塞発症のリスク

頸動脈狭窄症の手術は、脳梗塞を予防するために行っているのですが、頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)、頸動脈ステント留置術(CAS)ともに、治療の際に、脳梗塞を発症するリスクがあります。

脳梗塞を発症してしまうリスクは、頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)と比べ、頸動脈ステント留置術(CAS)の方が高いとされています。

手術によるリスクは、脳梗塞だけでなく、脳出血や感染症、アレルギーなど、さまざまなものがあります。

どの手術でもそうですが、リスクなしの手術はあり得ませんので、こうした合併症などについて理解してから、手術に臨むことが大切です。

不安に思うことがある場合は、主治医とよく相談してください。

頸動脈再狭窄の可能性

多くはないですが、術後、頸動脈の再狭窄を起こす可能性はあります。

医師の指示に従い、定期的な診察を受けてください。

生活習慣病を予防しよう

頸動脈狭窄症も、もとをたどれば、動脈硬化を引き起こす生活習慣病が原因であることが多いです。

頸動脈狭窄症は治療が可能ですが、治療にはリスクを伴います。

頸動脈狭窄症になる前に、生活習慣の改善に取り組んでいただけたらと思います。

脳梗塞は、予防できる病気です。

まずは、悪い点を見直し、生活習慣を改善することが大切です。

さらに、検診を定期的に受け、病気があれば治療することも重要です。

健康診断だけでは検査しきれない部分もありますので、できれば脳ドックも受けておきたいですね。

頸動脈狭窄症は「手術したから治療が終わり」というものではありません。

頸動脈狭窄症は動脈硬化が根底にあるのですから、そこを治療していかなければ、脳梗塞を発症する可能性は十分にあります。

ちょっとしたことでも構いませんので、今日から生活習慣の改善に取り組んでいきましょう。

脳梗塞の再発予防

頸動脈狭窄症の治療は、脳梗塞の予防にもなりますが、すでに脳梗塞を発症してしまった方の再発予防にもつながります。

手術を行う場合は、脳梗塞の急性期治療が終わって、体の状態が落ち着いてからとなります。

手術をするかどうかや、手術の時期に関しては、脳梗塞の状態や、年齢、他の疾患などによっても変わってきますので、主治医と相談してください。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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