スマート脳ドックを受診することで何がわかるのか

スマート脳ドックは脳の状態を調べる検査であり、脳の病気や異常を早期に発見するために行われます。

早期発見することで病気の発症を予防できますが、そもそも「脳の病気や異常にどのようなものがあるのかあまり知らない」という方もいると思います。

今回はスマート脳ドックを受診することで何が分かるのか、具体的な病気や症状についてご紹介します。

目次

スマート脳ドックを受診すると何がわかるの?

スマート脳ドックでは、頭部MRI、MRA、頸部MRAを使用して、脳や脳血管の状態を調べます。

スマート脳ドックの検査結果により、以下のいずれかが発見されます。

  • 病気
  • 病気には至っていない異常な状態

スマート脳ドックで発見できるもの①主な病気

スマート脳ドックで発見できる主な病気として、以下の3つが挙げられます。

  1. 脳梗塞
  2. 脳出血/陳旧性脳出血
  3. 脳腫瘍

それぞれ詳しく説明します。

脳梗塞

脳梗塞は脳の血管が血栓によって詰まったり、血管内部が細くなり血流が滞ることで発症する病気です。

血行不良によって、脳細胞に酸素や栄養が送られず、脳の働きに障害が生じるのです。

日本では、死因や寝たきり要因の上位に「脳卒中」が挙げられます。

脳梗塞は、脳卒中の半数以上の割合を占めているとも言われています。

脳梗塞は発症しても自覚症状がない場合があり、高齢者では10~20%に「ラクナ梗塞」という小さな脳梗塞がみられるとされています。

スマート脳ドックで発見される脳梗塞の重症度はさまざまです。

しかし、脳梗塞の所見がある場合は、再発のリスクが高まるので注意が必要です。

脳出血/陳旧性脳出血

脳出血は、脳の血管が破れて出血が漏れでた痕跡であり、脳血管が高血圧などで傷むことで発症リスクが高まります。

陳旧性脳出血とは、症状がない微小な脳出血の痕跡のことです。

血管状態の改善がされないかぎり、脳出血は再発のリスクが高いです。

つまり、陳旧性脳出血のように過去に脳出血を引き起こした所見がある場合、高血圧をはじめとする生活習慣の見直しなど、再発予防に努める必要があります。

脳腫瘍

スマート脳ドックで発見される脳腫瘍は、多くが良性のものです。

そのため、腫瘍が発見されたとしても、経過観察となる場合がほとんどです。

しかし、まれに神経膠腫(グリオーマ)という悪性腫瘍が見つかることがあります。

これは、短期間で進行しやすく、早期発見・早期治療が重要な腫瘍です。

脳腫瘍は、良性や悪性に限らず、専門医による評価や治療方針の判断が重要になります。

スマート脳ドックで発見できるもの②脳の異常

スマート脳ドックで発見できる脳の異常として、以下の4つが挙げられます。

  1. 脳微小出血
  2. 脳血管の詰まりや白質病変
  3. 脳血管のコブ(脳動脈瘤)
  4. 脳萎縮

それぞれ詳しく解説します。

脳微小出血

スマート脳ドックは、症状が現れていない段階で受診する方がほとんどです。

そのため、出血病変が発見されたとしても、症状を引き起こすレベルではない「微小出血」である場合が多いです。

脳微小出血は、加齢や高血圧との関連が認められています。

「高齢者の5~20%」「脳梗塞の30~40%」「脳出血の60~70%」にみられます。

このことから脳微小出血が発見された場合、今後「脳出血」「脳梗塞」を発症する可能性が高いことがわかります。

さらに、認知機能障害との関連も示唆されていますので、血圧などの管理が重要です。

脳血管の詰まりや白質病変

スマート脳ドックで脳をMRI画像に抽出した場合、脳血管の詰まりを発見することができます。

また、脳血管が詰まることで現れる白質病変についても見つけることができます。

大脳白質病変とは、血流が悪いことで器官が酸素不足に陥るような「虚血」が大脳白質に起こっている状態のことです。

これらは加齢によっても見られる病変ですが、年齢平均と比較して進行が疑われる場合は、注意が必要です。

ほとんどは自覚症状がなく、気づかないうちに白質病変が増加して、認知機能が低下するような「認知症発症のリスク」が高まることが判明しています。

脳血管のコブ(脳動脈瘤)

脳動脈瘤という脳血管のコブは「脳血管の破裂リスク」となります。

30歳以上の約3%に認められ、以下のような人は、特に注意が必要です。

  • 脳卒中の家族歴がある人
  • 高血圧や喫煙などの生活習慣病のリスクが高い人

脳動脈瘤が破裂すると「くも膜下出血」となりますが、破裂する率は高くありません。

脳動脈瘤が発生した部位や大きさでも破裂率は変動するので、治療の必要性や経過については、担当の医者と相談するようにしましょう。

脳萎縮 

脳委縮は、脳自体が委縮して体積が減少している状態です。

個人差があるものの、加齢によっても脳の萎縮は起こります。

一般的に約30歳から脳の萎縮が起こり、60歳くらいで過去の検査画像を比較した際に「脳委縮による脳の違い」が明確に現れます。

なぜ脳の萎縮が起こるのかというと、脳の神経細胞は脳血管から送られる栄養を吸収していますが、動脈は加齢とともに硬化していくからです。

脳血管に小さな梗塞が起こることで、栄養が脳の神経細胞へ送られなくなり、神経細胞が減少します。

このような加齢に伴う脳の変化により、物忘れなどの認知機能低下が引き起こされるのです。

スマート脳ドックで発見できるもの③その他

その他、以下のような症状もスマート脳ドックで発見できます。

  1. 新型コロナウイルスの後遺症
  2. 認知症

それぞれ順に説明します。

新型コロナウイルスの後遺症

新型コロナウイルス感染症の後遺症の一つとして「血栓」という血管内に血の塊ができることがあります。

この後遺症については、感染時の症状の有無にかかわらず起こる可能性があり、各臓器に影響を及ぼすので注意が必要です。

スマート脳ドックでは、新型コロナウイルスの後遺症による血栓が脳内にできているか調べることができます。

認知症のリスク

スマート脳ドックは、脳卒中や脳腫瘍のような病変、脳血管の状態などを検査することはできますが、認知症については確定診断することができません。

なぜなら、認知症の診断については、脳の画像検査だけでなく、その他の指標も必要となるからです。

しかし、大脳白質病変の有無などの認知機能低下のリスクとなりうる状態について、確認することはできます。

スマート脳ドックで大脳白質病変が発見された場合、認知機能について専門的な検査が必要になります。

詳細な評価を行う場合は、認知症の専門施設の受診をおすすめします。

スマート脳ドックで脳の病気や異常を早期に発見しよう

スマート脳ドックでは、脳出血や脳梗塞などの脳卒中、脳腫瘍などの病気や脳血管の異常について調べることができます。

他にも、認知症そのものについてはスマート脳ドックのみで診断することはできませんが、大脳白質病変などの認知症リスクについて検査することができます。

近年では、新型コロナウイルスの後遺症で脳に影響が現れていないか調べるために、サービスを利用する人もいます。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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