脳ドックの結果が偽陽性?本当は正常なのに再検査が必要なの?

脳ドックに限らず、人間ドックなどの検査を受けて「偽陽性」の診断を受けることがあります。

偽陽性とは?

検査結果が「本当は陰性」にも関わらず「陽性である」と間違って判定されること

脳ドックのような検査は、あくまでも病気の可能性や異変を見つけるために実施されます。

具体的な病変などの確定診断は、脳ドックの結果だけでは難しく、掘り下げて検査をしなければ判断できないことがあります。

そのため「脳ドックの結果が陽性」でも、精密検査の結果が「陰性」と判定される「偽陽性」に該当する人が、一定数存在します。

とはいえ、検査費用もタダではありませんし、勇気を出して受けた検査結果が「偽陽性」だったら、ガッカリしてしまいますよね。

今回は脳ドックで偽陽性と診断される確率や、その理由などについて説明します。

目次

脳ドックで偽陽性と診断される確率

脳ドックで偽陽性となる確率については、明確に開示されていません。

ただし、アメリカの研究では「頸動脈エコー検査の偽陽性率は、36.5%だった」という報告もあり、脳ドックについて否定的な考えを持つ国もあります。

どのような場合に脳ドックで偽陽性の診断がされる?

それでは、なぜ脳ドックで偽陽性と診断されてしまうのでしょうか。

偽陽性と診断されやすい症状と合わせて解説します。

脳動脈瘤

頸動脈エコー検査(超音波検査)

頸動脈エコー検査(超音波検査)は偽陽性率が高く、アメリカの研究では頸動脈エコー検査の偽陽性率は、36.5%だったという報告もあります。

頸動脈エコー検査(超音波検査)の目的は、首の血管を画像に映し、首の血管が狭くなっていないか調べることです。

首の血管が狭くなっていると、脳の血管が詰まって、脳梗塞を発症するリスクがとても高くなります。

場合によっては、首の血管の狭くなっている内側を切除する頸動脈内膜剝離術バイパス手術を施行することがあります。

このことから、画像上の血管が狭いと「異常である」と判断されますが、必ずしも首の血管が狭くなっていたからといって手術が必要なわけではありません。

経過観察で良いレベルのものが、手術が必要と判定されてしまうことがあるわけです。

MRI 検査

MRI 検査では、脳動脈瘤のような所見が画像で発見されても、実際には脳動脈瘤がない「偽陽性」の判定を受けることがあります。

脳動脈瘤をMRI 検査だけで確定診断することは、専門医でも難しいです。

正確な診断をするためには、以下を行い、専門医の診察を受ける必要があります。

  • MRI の再検査
  • 脳血管造影検査(カテーテル検査)
  • CT 検査(3DCTA)

認知症に認められる脳萎縮

VSRADという「認知症に認められる特徴的な脳の萎縮」について、MRI画像をコンピュータ解析する検査があります。

この専用解析ソフトウエアには、健常な54〜86歳のMRI検査結果が搭載されており、データをもとに判定されますが「50歳未満で偽陽性になりやすい」とされています。

なぜなら、データベースからみる基本的な対象年齢は50歳以上であり、一般的に健常高齢者は若年者よりも相対的に内側側頭部の容積が保たれているからです。

ただし、そもそもVSRADはあくまでも診断の補助的検査であり、この検査の結果だけで確定診断には至りません。

認知症については、他にも症状や経過と合わせて、診断することが求められます。

「偽陽性」の可能性があっても脳ドックをおすすめする理由

脳ドックにはデメリットもありますが、それを上回る大きなメリットがあります。

実際に脳ドックを受けることによって得られる「予防効果」については、統計でも明らかになっています。

なぜデメリットがあっても脳ドックを受けた方が良いのか、具体的な根拠を確認していきましょう。

日本の脳ドックは環境が充実している

実は、脳ドックは日本独自の健康診断法であり、他国ではほとんど導入されていません。

その理由は、脳ドックに使われるMRIやCTは特殊な検査機械であり、諸外国では高額な料金が発生してしまうからです。

それに対して日本では、人口あたりのMRIやCTの保有台数が世界で一番多くなっています。

これにより、他国に比べて検査費用が安く、予約も取りやすい環境になっています。

また、脳血管疾患は日本の3大死因のひとつに挙げられるほど、恐ろしい病気です。

発症した場合のリスクと日本の整った予防医療の環境を考慮すると、脳ドックを受診すべきメリットは明白といえるでしょう。

脳ドックの普及による予防効果

脳ドックの普及による予防効果については、日本国内で脳血管疾患を発症して死亡するケースが減少していることから明らかになっています。

日本では、死因の4位に脳血管疾患が該当します。

脳血管疾患によって亡くなるケースはまだまだ多いといえますが、これでも死亡数は減少しています。

その理由として、脳ドックが普及したことが一番に挙げられます。

脳ドックは1992年に人間ドックの項目に含まれるようになり、広く日本国内に普及しました。

厚生労働省の統計では、1995年頃から日本国内における脳血管疾患の死亡者数は減少し続けています。

この統計からも分かるように、脳血管疾患による死亡者数の減少に、脳ドックが影響している可能性は高いといえるでしょう。

厚生労働省【令和3年人口動態統計月報年計(概数)の概況】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf

厚生労働省【脳血管疾患患者数の状況|平成30年版厚生労働白書】
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-02-04.html

特に血縁者に脳卒中の既往がある場合は受けた方が良い

親兄弟、親戚など血縁者に脳卒中を発症した人がいる場合、積極的な脳ドックの受診をおすすめします。

なぜなら、脳卒中のような脳血管疾患は遺伝との関係を指摘されており、家系で同様の疾患を発症しやすいとされているからです。

既に親族に脳卒中の既往がある人は、病気を予防するためにも、早めに脳ドックを受けるようにしましょう。

脳ドックは偽陽性などのデメリットよりもメリットの方が大きい

脳ドックでは、人間ドックなどの一般的な検査同様に「偽陽性」の診断を受ける可能性があります。

脳ドックは、あくまでも病気の可能性や異変を発見することを目的に行われる検査であり、具体的な確定診断を目的としたものではありません。

そのため何かしらの異常が発見された場合には、さらに掘り下げて検査を行う必要があります。

本当は何の問題もないにも関わらず、異常があると判定されるような「偽陽性」の結果に至ることがありますが、それは予防医療の観点から必要なステップと捉えることもできます。

また「偽陽性」の可能性があることを仮にデメリットと捉えたとしても、脳ドックの受診にはそれを上回るメリットが存在します。

実際に脳ドックによる病気の予防効果は証明されており、異常が見つかったとしても、早期治療により重度化を防ぐことができるのです。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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