脳ドックという検査を耳にしたことがありますか?
脳ドックとは、脳梗塞などの脳疾患のリスクの早期発見のための、脳に特化した検診のことです。
脳ドックとは
健康診断と脳ドックの違い
健康診断と脳ドックは、検査の項目が異なります。
健康診断では、血圧測定や採血などで、生活習慣病といわれる高血圧や糖尿病を発見することはできます。
しかし、脳の血管の様子や、動脈硬化の程度はわかりません。
脳ドッグでは、MRIや頸動脈のエコーなどの検査を行い、脳疾患のリスクの早期発見を行うのです。
人間ドックと脳ドックの違い
では人間ドックと脳ドックは、何が異なるのでしょうか?
人間ドックでは、通常頭部や頸部の検査は行いません。
人間ドックも脳ドックも、健康診断だけではわからない病気を早期発見するという点では同じです。
しかし、通常人間ドックは首から下の検査、脳ドックは首から上の検査となります。
脳ドックをお勧めする方
以下の方は、一度脳ドックを受けることをお勧めします。
・高血圧などの生活習慣病を指摘されている方
・40歳以上の方
脳梗塞自体は遺伝しませんが、同じ生活習慣の結果、家系内に多く発生する傾向はありますので、血縁者が脳梗塞を発症している場合も脳ドックをお勧めします。
脳ドックの受診頻度・検査項目
脳ドックは、異常がない場合は、2~3年おきの受診が目安となります。
医師の指示がある場合は、それに従ってください。
検査項目は病院によって異なりますが、頭部MRI・頭部MRA・頸動脈超音波検査を中心としているところが多いようです。
どれも痛みを伴う検査ではありません。
病院によっては、人間ドックと脳ドックを組み合わせたプランもあります。
MRI検査について
MRIは、磁気と電波を用いた検査です。
トンネルのような機械の中に入って行います。
MRI撮影中は、大きな音がします。
少し不安な気持ちになるかと思いますが、放射線技師の方が見てくれていいますし、20~30分程度で検査は終了します。
閉所恐怖症などがあり、検査が不安な場合は、事前に医師に相談しましょう。
最近は、オープンMRIと呼ばれる、閉鎖間を感じにくいタイプのMRIもあります。
MRIの検査を受ける際は、金属類はNGです。
検査に影響があるだけでなく、MRIの機械の故障の原因にもなりますので、注意しましょう。
金属類などが付いていないかの確認を、検査前に必ず行います。
看護師や放射線技師が一緒に行うので、過度に心配する必要はありません。
MRA検査について
MRAも磁気を用いた検査ですが、MRIは脳の断面画像を写し出すのに対し、MRAは血管を画像化する検査です。
それぞれ以下のことがわかります。
MRI:脳腫瘍や脳の萎縮
MRA:血管の狭窄などがあるか
頸動脈超音波検査について
頸動脈超音波検査は、頸動脈(首の血管)に医療機器を当て、動脈硬化の程度を調べる検査です。
頸動脈エコー検査といった方が、わかりやすいかもしれません。
脳ドックの費用
脳ドックは、健康な方を対象とした検査となりますので、健康保険は適応外となり、自費診療となります。
相場は2~5万円と言われていますが、病院によって異なります。
お住いの自治体によっては、脳ドックに補助金を出しているところもありますので、確認してみてください。
頭痛や立ちくらみなどがある場合は、保険診療となることもありますので、病院に問い合わせてみてください。
脳ドックで異常が見つかった場合
脳ドックで発見できる病気
脳ドックでは、脳梗塞だけでなく、その他の脳の異常も発見することが可能です。
具体的には、未破裂脳動脈瘤・脳腫瘍・脳動静脈奇形・もやもや病などです。
無症候性脳梗塞
脳ドックで見つかる脳梗塞は、無症候性脳梗塞のことを指します。
脳梗塞は、脳血栓症と脳塞栓症の2つに分類されます。
さらに、脳血栓症はアテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞に、脳血栓症は心原性脳梗塞に分類されます。
無症候性脳梗塞とは、ラクナ梗塞の一種です。
通常、ラクナ梗塞でも脳梗塞の症状が出ますが、この無症候性脳梗塞の場合は、症状がありません。
そのため、無症候性脳梗塞は「隠れ脳梗塞」と呼ばれたりもします。
無症候性脳梗塞は、高齢者に多く、特に男性に多いとされています。
無症候性脳梗塞を起こしている方は、今後脳梗塞を発症する頻度が高いため、しっかりと脳梗塞予防に取り組みましょう。
未破裂脳動脈瘤
未破裂脳動脈瘤とは、脳の動脈にこぶができている状態のことです。
特に自覚症状はない場合が多いのですが、これがなんらかの原因で破裂してしまった場合は、くも膜下出血を引き起こします。
くも膜下出血の死亡率は、30~40%とも言われている、恐ろしい病気です。
脳動脈瘤の大きさや位置にもよりますが、通常、脳動脈クリッピング術や脳動脈コイル塞栓術などの治療を行います。
脳腫瘍
脳腫瘍は、その名のとおり脳に腫瘍がある病気です。
しかし、良性のものもありますし、脳腫瘍と診断されたからといって過剰に心配する必要はありません。
万が一悪性の場合でも、脳ドックによって早期に発見できているのですから、手術や化学療法、放射線療法など、選択肢も多く残されています。
病気は知らずに放置していればどんどん進行してしまうので、病気が進行する前に脳腫瘍が発見できてむしろ幸運だったと、ポジティブな気持ちを持つようにしましょう。
脳動静脈奇形
脳動静脈奇形(AVM)は、脳の動脈と静脈が、ナイダスという血管の塊によって、直接つながっている病態のことを言います。
通常自覚症状はありませんが、なんらかの原因でナイダスが破裂した場合、くも膜下出血や脳出血を引き起こします。
また、けいれんを引き起こす場合もあります。
治療法としては、手術・血管内治療(塞栓術)・放射線治療などがあります。
もやもや病
もやもや病は、内頚動脈という血管の末梢が段々細くなり、最後には閉塞し、その代償として細いもやもやとした血管が、脳に血液を供給するようになる病気です。
手足の麻痺や言語障害が起きることがあります。
治療法としては、手術や内服などがあります。
脳ドックのまとめ
脳ドックでは、脳梗塞だけでなくさまざまな脳の病気の早期発見につながることが、ご理解いただけたかと思います。
ただし、脳ドックを受けたから脳梗塞にはならないと安心するのではなく、やはり日常生活で脳梗塞を予防していくことが一番大切なことです。
予防に取り組むことも忘れないでください。