【脳卒中対策の食事】コーヒーで脳梗塞を予防できるってホント?

脳梗塞を予防するための食事やレシピについて調べていると「コーヒーで脳梗塞を予防することができる」といったような噂を耳にすることがあります。

そこで今回は「コーヒーで脳梗塞を予防することができるのか?」といった疑問について、医学的根拠を交えながら解説していきたいと思います。 

目次

脳卒中と脳梗塞の違いは?

今回のテーマは「コーヒーで脳梗塞を予防することができるか」です。

結論としては、コーヒーの摂取で脳梗塞発症のリスクを下げることができる可能性があります。

より正確には「コーヒーの摂取で脳卒中のリスクが低下する可能性」が報告されています。

だからこそ、コーヒーと脳梗塞の関連性を理解するためには、まずは「脳卒中と脳梗塞の違い」を勉強しておく必要があります。

脳卒中とは「脳梗塞・脳出血・くも膜下出血」のこと

脳卒中とは、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血を合わせた疾患のことを言います。

それぞれの違いについては、以下のとおりです。

脳梗塞
何らかの原因で脳の血管が詰まってしまった場合

脳出血
脳の血管が破れてしまった場合

くも膜下出血
脳血管が破れて「くも膜」と呼ばれる部位の下に出血が起こった場合

つまり、脳梗塞とは脳卒中の中のひとつであり、「コーヒーの摂取で脳卒中のリスクが低下する可能性がある」という報告だけでは、脳梗塞のリスクが下がっているのか、脳出血のリスクが下がっているのか、ということまでは分かりません。

とはいえ、脳梗塞が脳卒中全体の約7割を占めていると言われていますので、脳卒中のリスクが下がるということは、脳梗塞のリスクが下がると推測することも可能です。

また、脳卒中のことを「脳血管障害」と表現されている場合もあります。

「脳血管障害といえば脳卒中であり、脳卒中の中のひとつが脳梗塞である」とイメージしておきましょう。

参考)
脳血管障害・脳卒中 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

コーヒーで脳卒中リスクが低下する可能性あり

ではここからが本題の「コーヒーで脳梗塞を予防することができるか」について解説していきます。

先にも述べたように、 医学研究によって「コーヒーの摂取で脳卒中のリスクが低下する可能性がある」ということが報告されています。

コーヒーと脳梗塞の関連性が直接研究されたわけではありませんが、コーヒーの摂取によって、脳梗塞よりも広い意味である脳卒中のリスクを下げることができるということは「コーヒーで脳梗塞を予防することができる可能性」も十分考えられます。

JPHC Studyについて

コーヒーによる脳卒中リスク低下効果に関しては「JPHC Study」という研究が行われています。

JPHC Studyによると、コーヒーの摂取によって脳卒中のリスクを低下させることができると報告されています。

より具体的には、1日1杯のコーヒー摂取によって、脳卒中リスクが減少する可能性が見出されています。

コーヒーの他にも、1日に2杯以上の緑茶摂取が脳卒中リスクを低減させる可能性も報告されています。

明確な理由は明らかになっていませんが、コーヒーの摂取頻度が高い人は糖尿病の既往歴が低い傾向があり、コーヒー摂取によって糖尿病の発症を低く抑えている可能性も考えられます。

糖尿病は脳卒中発症の大きなリスク因子であることから、コーヒーの摂取によって糖尿病の発症を低く抑え込むことで、脳卒中のリスクを低下させている可能性があります。

コーヒーに含まれるクロロゲン酸という成分が、血糖値を改善させる効果をもつと言われており、これによって糖尿病のリスクを引き下げているという可能性も考えられます。

※JPHC Studyによると、糖尿病既往歴の割合は、コーヒーを飲まない群で7.1%、日に2杯以上摂取する群において3.5%でした

参考)
緑茶・コーヒー摂取と脳卒中発症との関連について(多目的コホート研究:JPHC Study)https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3278.html

脳卒中リスクを下げるコーヒーの成分とは?

コーヒーに含まれているカフェインという成分は、非常に有名です。

コーヒーにはカフェイン以外にもさまざまな成分が含まれており、ポリフェノールやビタミンCなども豊富です。

ポリフェノールやビタミンCには「抗酸化作用」と呼ばれる特殊な作用があり、この抗酸化作用が脳卒中リスクを低減させることが報告されています。

また、コーヒーに含まれているカフェインには、脳細胞を保護するという作用が示唆されており、コーヒーの摂取によって脳細胞の機能低下が抑制できるのではないかと期待されています。

このように、コーヒーを摂取することで、コーヒーに含まれているさまざまな成分の働きにより、脳卒中のリスクを低下させたり、脳細胞を保護したりする働きが期待できるということになります。

参考文献)
Prediger RD: J Alzheimers Dis 20, S205-20 (2010).
Chen GC, et al: J Am Heart Assoc, (2013). e000329.

カフェイン過剰摂取による健康リスク

コーヒーには脳卒中発症リスクを低下させる可能性が示唆されていますが、カフェインを過剰摂取することによる健康リスクも考えなくてはいけません。

厚生労働省によると「カフェインを過剰に摂取した場合には、中枢神経系の刺激によるめまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気等の健康被害をもたらすことがあります。」と報告されています。

脳卒中リスクが下がるからと言って、闇雲にコーヒーを摂取すれば良いというものでもありません。

参考) 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html

コーヒーは1日何倍まで飲んでいいの?

先ほど示した「JPHC Study」では「1日1杯のコーヒー摂取によって脳卒中リスクが減少する可能性」が報告されていました。

とはいえ、実際には、1日3回毎食後コーヒーを飲んでいるという方も少なくないでしょう。

では、コーヒーは1日何倍まで飲むことができるのでしょうか? 

健康成人のカフェイン摂取量は400mgまで?

何杯まで飲んでもいいのかといった、コーヒー摂取量の上限値を考える際には、カフェインの摂取量に注目するのがポイントです。

日本ではカフェイン摂取量の上限値は明確にされていませんが、海外(アメリカやカナダ)では、「健康成人のカフェイン摂取量は400mg」と言われています。

厚生労働省によると、インスタントコーヒー1杯のカフェイン量がおおよそ80mgと言われています 。

そのため「コーヒー1日5杯」までであれば、カフェインの摂取基準範囲内に収まるのではないかと推測されます。 

もちろん、このデータはアメリカやカナダのカフェイン摂取量をもとにしておりますし、コーヒー以外にもカフェインが含まれているもの(緑茶など)を摂取することで、 カフェインの摂取量がオーバーしてしまう可能性もあります。

「コーヒー1日5杯」というのは、あくまでも参考値としてお考えください。

コーヒーを飲んでリラックスする習慣を作ってみませんか?

今回はコーヒーによる脳卒中リスク低減効果について紹介しました。

脳卒中リスクを低下させるだけではなく、コーヒーにはリラックス効果などもありますので、コーヒーを飲みながらゆったりと心と体を落ち着かせるのもおすすめです。

コーヒーでストレス発散することができれば、脳卒中だけではなく、さまざまな病気を予防していくことができる可能性もあります。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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