脳梗塞と保険・労災について

脳梗塞に限りませんが、病気になるとお金がかかります。

病気に対して「金銭面で事前に備えておくこと」、いざ病気になったときに役立つ「労災の知識」について、ご紹介します。

目次

脳梗塞と保険について

健康保険と民間の医療保険の違い

保険、保険、とひとくちに言っても、さまざまな種類の保険があります。

一番身近なのは、健康保険です。

健康保険は、国民皆保険制度によって、全国民の加入が義務付けられています。

健康保険は、以下のように種類が分かれます。

・自営業か?企業勤めか?
・社会保険か?国民健康保険か?

社会保険は社保、国民健康保険は国保といった呼び方をすることもあります。

私たちが病院を受診した場合、原則かかった費用の3割を負担することで、診察や治療を受けることができます。

これは、健康保険のおかげです。

また、医療機関などで支払う医療費が上限額(年齢や所得によって異なります)を超えた場合、その超えた額を支給する「高額療養費制度」という制度もあります。

これは、健康保険に加入していれば、どなたでも使える制度です。

一方、病気に備えて保険に加入しておいた方がいいといわれる保険は、民間の医療保険のことです。

CMなどでも、よく目にしますね。

健康保険を利用することで、診察や治療は原則3割負担で受けることができるのですが、入院中の食費や差額のベッド代などは、全額自己負担となります。

この3割負担や全額自己負担といった、健康保険ではカバーできない部分を補うために、民間の医療保険が存在します。

3大疾病とは

がん・心臓病・脳卒中の3つの疾患を合わせて、3大疾病と呼びます。

この3つの疾患は、日本人の死因の約半分を占めています。

脳卒中は、他の疾患に比べ、入院日数が長期化する傾向があります。

それは、後遺症に対してリハビリ治療を行う必要があるからです。

脳卒中は、退院後も定期的な通院が必要になりますし、後遺症が残り、介護が必要になることもあります。

民間の医療保険では、この3大疾病に特化した保険のプランを打ち出しているところもあります。

また、この3大疾病に、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病を加え、7大疾病として保険プランを打ち出しているものもあります。

脳梗塞の危険因子には、高血圧症・糖尿病といった生活習慣病が、深く関係しています。

脳梗塞を心配されている方は、危険因子も含めて、医療保険を検討するとよいかもしれません。

医療保険の内容

医療保険の内容は保険会社によってさまざまですが、代表的なものとしては「終身医療保険」と「定期医療保険」があります。

それぞれ以下のとおりです。

終身医療保険
保証期間:一生涯
保険料:一定

定期医療保険
保証期間:5年や10年などの一定期間
保険料:更新時に保険料が上がるのが一般的

医療保険に加入する際は、自分にどのような保証が必要なのか考えながら選びましょう。

以下のように、最近はさまざまな保険プランも出てきています。

・働けなくなったときや介護が必要になったときに保険金が支払われるプラン
・先進医療に対して保険金が支払われるプラン など

自分に適したプランを検討してみましょう。

備えあれば、憂いなし患いなしです。

脳梗塞と労災について

労働災害について

労災という言葉を時々聞くことがあると思います。

労災とは「労働災害」のことです。

労災は、労働者が業務上で被った怪我や疾病などの災害に対して保証する制度です。

労働災害には「業務災害」と「通勤災害」の2つがあります。

業務災害
業務中の事故や過労

通勤災害
通勤中の負傷など

労災保険は、労働者をひとりでも雇用する会社に加入が義務付けられています。

保険料は、事業主が全額負担します。

また、ここでいう労働者には正社員のみならず、パートやアルバイトも含みます。

労災の認定を行うのは、労働基準監督署となります。

脳梗塞は労働災害なのか

脳梗塞は、基本的には生活習慣が原因で発症します。

しかし、業務中に長時間飲水できない状況にあったなど、業務が原因で脳梗塞が発生したと考えられる場合は、労災と認められることがあります。

労災として認定されるには「業務起因性」と「業務遂行性」の2つの要件を満たしている必要があります。

業務起因性
業務が原因で発生していること

業務遂行性
業務を行っているときに発生したこと

もし休みなく働いていたり、残業が多かったりと「業務起因性」が考えられる場合は、労働基準監督署や社会保険労務士などに相談してください。

脳梗塞の発症が、業務が原因であったことが明らかであると認められると、労災が認定されます。

実際に、脳梗塞と過重労働の関連性が強いとして、過去に労災認定されたケースも存在します。

労災保険の補償内容について

労災が認定されると、治療費は国から全額支払われます。

また、病気になって仕事を休んだ際の給料の一部も補償されます。

これは「休業補償給付」といって、通常仕事を休んでから4日目以降は、給料の6割が支払われます。

さらに、休業補償給付とは別に「休業特別支援金」として、給料の2割が支払われます。

治療が長引いたり、後遺症が残った場合は、さらに給付金の支給があります。

仕事との付き合い方

残業は当たり前と考える時代もありましたが、近年は過重労働に厳しい目が向けられるようになってきました。

過重労働による自殺者の増加に伴い、2019年には労働基準法の改正も行われました。

過重労働をやめてもらうように、国もさまざまな取り組みを行っています。

業務改善に取り組む企業も多いですが、一部の企業では、まだ過重労働の悪しき習慣が根付いたままです。

勤務時間が長いと、生活リズムが不規則になったり、外食が増えたり運動量が減ったりと、生活習慣病を引き起こしやすくなります。

生活習慣病が引き起こされると、脳梗塞発症のリスクが高まります。

職場の環境がおかしいと感じたら、労働基準監督署に相談したり、転職をしたりすることをおすすめします。

健康は損なってしまうと、元には戻らないこともあります。

自分自身の選択が、ときに命を救うこともあります。

仕事と健康について、よく考えてみてください。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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