脳ドックは受けない方がいい?脳ドックで分かること・受けない方がいいと言われる理由

脳ドックは、受診することで脳血管疾患の有無やリスクが分かります。

しかし一方で「脳ドックは受けない方がいい」と言われることがあります。

「病気が分かるなら受けた方が良いのでは?」「なぜ脳ドックを受けない方がいいと言われるの?」と気になる方もいるでしょう。

そこで今回は「脳ドックを受けない方がいいのか」という疑問にお答えしながら「脳ドックで分かること」「脳ドックを受けない方がいいと言われる理由」についても紹介します。

目次

脳ドックは受けない方がいい?

結論からいうと「脳ドックは受けない方がいい」ということは決してありません。

なぜなら、脳ドックにより脳血管疾患の有無が分かることで、治療が必要な場合は早期治療ができるからです。

加えて、脳血管疾患のリスクが高い場合は、今後の生活に注意する予防行動ができます。

脳血管疾患とは、脳血管のトラブルによる病気の総称です。

代表的なものは、脳血管が閉塞する脳梗塞、脳血管が破裂し発症する脳出血があります。

脳血管疾患は日本人の死因の第4位です。

令和3年には、10万4,588人もの方が脳血管疾患により亡くなりました。

私たちにとって身近な病気であるため、脳ドックは受けるにこしたことはありません。

厚生労働省 令和3(2021)年人口動態統計月法年計(概数)の概況 結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf

脳ドックで分かること

脳ドックを受けることで脳血管疾患の有無やリスクが分かりますが「具体的な内容が知りたい」という方もいると思います。

脳ドックで分かることを以下にまとめました。

  1. 過去に発症した脳梗塞と脳出血
  2. 脳動脈瘤
  3. 脳血管の狭窄・脳血管壁の厚さ
  4. 脳腫瘍
  5. 脳の萎縮

脳ドックで分かる5つの内容を、順に説明します。

1.過去に発症した脳梗塞と脳出血

脳ドックでは、過去に発症した小さな脳梗塞や脳出血が分かります。

小さな脳血管のトラブルであれば、特に症状がなく過ごされている方が多くいます。

しかし、今後新たに脳梗塞や脳出血を発症するリスクが高いため、日常生活に気をつける予防行動をとるようにしましょう。

2.脳動脈瘤

脳ドックでは、動脈がこぶのようになった脳動脈瘤が分かります。

脳動脈瘤は突然破裂するため、発症すると命に関わりとても危険です。

大きさや位置によっては、手術が必要となります。

3.血管の狭窄・血管壁の厚さ

頸部エコーにより、血管の狭窄・血管壁の厚さがわかります。

血管が狭く血管壁が厚いと、脳血管疾患にかかるリスクが高いです。

脳血管が狭い理由は、コレステロールにより粥腫(じゅくしゅ:お粥のように見えるもの)が沈着しているからです。

また、血管壁が厚い状態は「動脈硬化」といわれる状態であり、脳血管疾患の主な要因は動脈硬化といわれています。

動脈硬化は、高コレステロール・高血圧・高脂血症・高血糖などが理由で起こり、日常生活が要因といわれています。

4.脳腫瘍

多くはないですが、脳ドックで脳腫瘍が見つかることがあります。

脳腫瘍が見つかった場合、専門の医療施設にて精密検査を行います。

5.脳の萎縮

脳ドックのMRAという検査では、磁器を利用し脳の断面を見ることができるため、脳が萎縮しているかが分かります。

脳の萎縮はアルツハイマー型認知症の診断に用いられることがありますが、それだけでは認知症の診断はできません。

脳の萎縮があっても、認知症でない方はいます。

脳ドックを受けない方がいいと言われる理由

脳ドックは、受診することで脳血管疾患の有無やリスクが分かり、早期治療や予防行動につながります。

ではなぜ「脳ドックはうけない方がいい」と言われることがあるのでしょうか。

脳ドックを受けない方がいいと言われる理由を以下にまとめました。

  1. 偽陽性になることがある
  2. 脳血管疾患が判明した時の精神的負担がある
  3. 自由診療のためお金がかかる
  4. 身体的負担がある
  5. 脳血管疾患の発症リスクが低い

5つの理由を順に紹介します。

1.偽陽性になることがある

脳ドックでは、偽陽性になることがあります。

偽陽性とは「本来は陰性(異常なし)のはずが、陽性と出ること」です。

MRIという脳血管の状態を調べる検査にて、脳動脈瘤がないのに脳動脈瘤があるように見えることがあります。

偽陽性となった場合は、専門の医療施設にて精密検査が必要です。

精密検査にて、偽陽性だったと判明することがあります。

「脳ドックで偽陽性が出るなら受けない方がいい」といった意見があります。

しかし、脳ドックだけでなく、健康診断などあらゆる検査では疑わしい病気は精密検査をすることが基本です。

精密検査の結果が偽陽性であったなら安心ですし、陽性であれば早期治療が可能です。

2.脳血管疾患が判明した時の精神的負担がある

脳ドックにて脳血管疾患が判明することにより、気分が落ち込むことがあります。

脳ドックで過去の脳梗塞や脳出血が分かっても、今問題なく過ごされているのであれば、特に治療はしません。

また、脳動脈瘤が見つかった場合、大きさや位置によっては治療をせず、経過観察(治療をせず様子をみる)が良いとなることがあります。

人によっては、脳血管に異常があると判明したあとに、ふさぎ込んだり、過度に神経質になったりすることがあります。

3.自由診療のためお金がかかる

脳ドックは、保険診療ではなく自由診療となります。

つまり、脳ドックにかかる費用は、全額自己負担です。

自由診療は医療施設で料金を設定でき、施設によって料金が大きく異なります。

保険診療であれば1〜3割の負担で済むところが全額自己負担となると、検査を受けることに抵抗を持つ方がいます。

このような理由から「お金がかかるなら脳ドックはしない方がいい」という意見があるのです。

4.身体的負担がある

脳ドックの検査は、1時間半〜3時間ほどかかります。

健康診断のように短時間で終わらないため、時間がかかるという負担があります。

加えて、MRIで用いられる機械の閉鎖的な環境や、工事現場のような「ガンガン」と響く音が苦手に感じる方もいます。

今は閉鎖的な環境でないタイプのMRIがあります。

また、音の負担を軽減できるように、耳栓を使用し検査を実施しています。

5.脳血管疾患の発症リスクが低い

人によって、脳血管疾患の発症リスクは異なります。

脳血管疾患の発症リスクが低いといわれる、若くて持病がなく健康な方は、脳血管疾患の発症リスクが低いため受けない方がいいといわれるでしょう。

しかし、脳血管疾患の発症リスクが高いといわれる以下のような方は、受けた方がいいといわれます。

  • 生活習慣病をお持ちの方
  • 家族に脳血管疾患を発症した方がいる方

「脳ドックは受けない方がいい」ということはない

今回は「脳ドックを受けない方がいいのか」という疑問にお答えしながら「脳ドックで分かること」「脳ドックを受けない方がいいと言われる理由」を紹介しました。

「脳ドックは受けない方がいい」ということは決してありません。

脳ドックによって、脳血管疾患の有無やリスクが分かり、早期治療や予防行動につながります。

しかし、人によって脳ドックの必要性や負担も異なるため、受けない方がいいと言われる理由もわかります。

自分にとって脳ドックが必要なのか、負担がかからないかを考え、受けるか判断しましょう。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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