by脳梗塞MZ編集部
脳梗塞の治療って何をするの?
脳梗塞の治療は、点滴治療が中心となります。脳梗塞の発症から投与開始までの時間が数時間と限られているものもあるため、脳梗塞と思われる症状を呈した場合は救急要請が必要です。
目次
tPA治療
tPA治療の歴史
脳梗塞の急性期治療はtPA治療の登場により大きく様変わりしました。日本でtPA治療の薬が認可されたのは2005年、今からおよそ15年前になります。この薬が認可された当時は、脳梗塞発症後3時間以内に治療を開始することと決まりがありましたが、今ではさらなる臨床試験などの取り組みのおかげで、脳梗塞発症4.5時間以内であればtPA治療を行ってもよいことになっています。
脳梗塞の治療は、詰まった血管を再開通させ脳細胞を守ればいいわけですが、これは難しく、このtPA治療が確立されるまではなかなか有効な治療法はありませんでした。
tPA治療とはどんなものか?
PA治療というのは血栓を溶かす点滴治療です。血栓を溶かして血管を再開通させることで、症状の改善を図ります。この点滴は早ければ早いほど効果があるとされています。
脳梗塞を発症すると、閉塞により血流の途絶えた部分はすぐに壊死しています。壊死してしまったその周辺の部分の血流が低下している領域をペナンブラといいます。この領域は時間が経ってしまうと徐々に不可逆性(元に戻らない)の壊死へと移行します。しかし、早期にtPA治療を行うことで、このペナンブラの部分は血流が再開し、回復するのです。tPA治療を行うことによって麻痺なく回復された方も大勢いらしゃいます。
救急要請をしてから病院に到着するまでに1時間弱、病院についてから治療を開始するまでに1時間弱はかかります。一刻も早く治療を受けるためにも、迅速な救急要請が必要となってきます。
ACT FAST
「ACT FAST」という言葉をご存知ですか。これはその名の通り「急いで行動して」という意味です。脳梗塞を発症したときは急いで病院に行こうというスローガンのことです。「ACT FAST」には、脳梗塞の症状を確認する重要なポイントも含まれています。
FASTのF
FASTのFは「Face」つまり「顔」です。笑顔を作ってもらったり、イーっと口を横に広げ歯を見せてください。左右差はありませんか。片側が下がっていたり動かないときは異常が起こっています。
FASTのA
FASTのAは「Arm」つまり「腕」です。手のひらを上にして両腕を肩の高さで水平に保ってください。片腕が下がってくる、または片腕が挙がらないときは異常が起こっています。
FASTのS
FASTのSは「Speech」つまり「言葉」です。何でもいいのでしゃべってみてください。呂律が回らなかったり、言葉がスムーズに出てこないときは異常が起こっています。
FASTのT
FASTのTは「Time」つまり「時間」です。発症時刻を確認してください。そしてこの「Time」には急いで、という意味も込められています。FASTの「Face」「Arm」「Speech」のような症状がある場合はすぐに救急要請をしてください。
なぜtPA治療は脳梗塞発症4.5時間以内でないと治療が開始できないのか?
ここまで文章を呼んで、なぜtPA治療は脳梗塞発症4.5時間以内でないと治療が開始できないのか疑問に思っておられる方もいらっしゃるでしょう。それは出血のリスクが上がってしまうからです。発症から時間が経つと脳梗塞になってしまった部分はもう元には戻らないと先ほどお伝えしましたね。その部分に血栓を溶かすtPA治療を行ってしまうと、血管も細胞ももろくなっているため血管壁が破綻し、脳出血を起こしてしまうのです。
tPA治療はどこの病院でもできるわけではありません。脳神経外科医や神経内科医がいること、そしてCTやMRIが24時間使える病院でないと治療はできません。ですからFASTの症状があった場合、ご自身で病院を探してその病院に行くのではなく、救急要請をしてほしいのです。救急隊の方は、脳梗塞が疑われる場合にはきちんと専門の病院へ搬送してくれます。治療は時間との闘いです。
tPA治療の適応
tPA治療は誰でも受けることができる治療ではありません。脳梗塞発症後4.5時間以内に治療開始することはもちろん、そのほかにも適応ルールがあります。脳梗塞の大きさや年齢、基礎疾患、採血データなどによって、tPA治療が可能かどうか判断されます。血栓を溶かすtPA治療には出血リスクが付き物となります。出血のリスクが高いと判断された場合はtPA治療は断念せざるをえなくなります。
tPA治療以外の脳梗塞の治療
脳梗塞の点滴
脳梗塞の治療は点滴がメインとなります。tPA治療も点滴療法なのですが、tPAというのは血栓溶解薬となります。この他にも、抗血小板薬・抗凝固薬・脳保護薬・抗脳浮腫薬などの点滴があります。これらの点滴も適応となる発症からの時間は決められているのですが、24時間以内であったり48時間以内と、tPAほど適応時間は限られていません。脳梗塞の種類や基礎疾患によって点滴の種類が選択されます。点滴の種類にもよりまずが、出血などのリスクはあります。
血管内治療
脳梗塞の治療には血管内治療があります。足の付け根の動脈からカテーテル(細い管)を入れ、頭までカテーテルを進め、血栓を取り出し血流を回復させる方法です。この治療も、発症から8時間以内でないと治療の適応となりません。治療のリスクとして、出血や血管損傷などがあげられます。
脳梗塞の治療に関するまとめ
先述した通り、脳梗塞治療には適応となる発症からの時間が決められているものがあります。そのため、脳梗塞を発症してから病院に到着するまでの時間が早ければ早いほど、治療の選択肢が増えるのです。脳梗塞かもしれないと思ったら、様子見をするのではなく救急要請をしましょう。
脳梗塞の治療に限りませんが、治療を行うということは、そこには何らかのリスクが存在します。特に脳梗塞の場合は血栓を溶かしたり、血を固まりにくくしたりするなどの薬を使うことが多いので、当然出血のリスクは高くなります。こうしたリスクのことも頭に入れておきましょう。
脳梗塞の一番の薬は「予防すること」です。こちらはノーリスク、一切の副作用はありません。ご自身が取り組めることからで結構です。血圧を測ってみる、5分運動してみる、など何でも構いません。まずは予防を意識することから始めてみましょう。
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