回復期リハビリテーション病院の選び方 その1

入院をしても「すぐに転院させられる」「すぐに退院させられる」といった声を、患者さんやその家族から聞くことがあります。

家族の「もう少し長く入院させてほしい」という要望とは裏腹に、なぜ病院側は早期に転院や退院を求めるのでしょうか?

そこには、医療の仕組みが関係しています。

目次

病院の役割について

診療所・クリニックと総合病院・大学病院の違い

軽い怪我や病気の場合、私たちは通常、近隣の診療所・クリニックを受診するかと思います。

いきなり総合病院・大学病院には行きません。

総合病院・大学病院に行ったとしても、診察は可能です。

しかし、医療保険制度改正法により、2016年4月からは、紹介状なしでこういった大きな病院を受診した場合は、診察料の他に特別の料金がかかることになりました。

それぞれ以下のとおり役割が異なります。

診療所・クリニック
軽症や日常的な病気を診察する役割

総合病院・大学病院
救急や重い病気を診察する役割

軽症の方が総合病院や大学病院を受診してしまうと、本来は総合病院や大学病院で診てもらうべき、救急や重い病気の患者を診ることができなくなってしまいます。

これを防ぐために、医療保険制度が改正されたのです。

病院の種類

診療所・クリニックと総合病院・大学病院の違いは説明しましたが、総合病院や大学病院といった入院施設のある大きな病院の中でも、さらに役割は細分化されています。

病院は大きく分けると「急性期病院」「回復期病院」「慢性期病院」の3つに分類することができます。

急性期病院
病気や怪我が発症し、急激に健康を損なった状態の患者を診る役割

地域の救急指定病院や救急救命センターなどが、この急性期病院に該当します。

病院のベッド数は限られていますので、急性期病院で長期入院が増えると、緊急の治療を必要とする患者を受け入れることができなくなります。

ですから、病状がある程度落ち着いた方は、退院や転院が求められます。

回復期病院
リハビリで身体的機能を回復させる役割

病気や怪我をする以前の生活に戻れるように、サポートが行われます。

入院期間に関しては、急性期病院ほど短くはありませんが、一定の入院期間の目安が定められています。

慢性期病院
比較的病状が安定しているが、再発の予防や体力の維持を目指し、長期にわたり医療的ケアを必要とする患者を診る役割

生活習慣病などで、入退院を繰り返す方もいます。

慢性期病院での入院期間は、急性期病院や回復期病院に比べて長くなります。

しかし、慢性期病院にも入院できる期間には限度があります。

入院・転院の流れとしては、急性期病院から回復期病院へ、さらに慢性期病院へと移っていくのが一般的です。

しかし、病状によっては、回復期病院の過程を飛ばしたり、急性期病院のあとは転院せず退院、となることもあります。

患者の病状や年齢、家族環境など、さまざまなことを考慮し、転院するか退院するかは決定されます。

病院側が転院や退院の調整は行ってくれますが、転院や退院などの希望がある場合は、早い段階で病院側に意向を伝えてもらった方が、調整がスムーズです。

早めの転院や退院を求められる3つの理由

入院後に早めの転院や退院を求められる理由は、3つあります。

1. 病院の機能分化を行うため

ひとつめの理由は、病院の機能分化を行うためです。

医療機関それぞれの役割分担を行うことで、医療を適切に提供しなければならないのです。

2. 長期入院により、診療報酬が低くなるため

ふたつめの理由は、長期入院により診療報酬が低くなるためです。

診療報酬とは、医療保険から医療機関に支払われる治療費のことです。

医療機関は、提供した医療サービスに対する対価として、診療報酬という形で支払いを受けます。

国の財源には限りがあります。

そして、医療費はその財源を大きく圧迫しています。

医療費を削減するため、国は生活習慣病の予防を呼びかけるなど、さまざまな施策を講じています。

その施策のひとつとして、国は2週間での退院を推奨しています。

2週間を超える入院に対しては、診療報酬つまり病院に医療保険から支払われるお金が大きく下がります。

儲け主義の悪徳病院でなくとも、病院を経営していくためにはお金が必要ですから、国の定めた入院後2週間での退院に従っていく必要があるのです。

もちろん、2週間の入院期間を超えたからといって、まだ治療が必要な患者を無理やり退院させることはありません。

病院は、急性期を脱するだろうという見込みが立った時点で、どんどん転院調整をしていきます。

そのため、転院や退院を急かされていると感じることもあるかもしれません。

転院する際には、調整が必要です。

ベッドの空き状況や患者の状態など、さまざまなことを考慮して、転院を調整しなければならないのです。

転院調整に何日も時間がかかることもありますし、何週間もかかってしまうこともあります。

ですから余計に、患者やその家族に対し、転院を早期から促していく必要があるのです。

3. 医療技術が高く、長期の入院を必要としないため

最後3つめの理由は、医療技術が高く、長期の入院を必要としないためです。

近年では、さまざまな手術方法が確立し、多くの医療技術が発達しています。

手術などで患者の体にかかる負担も抑えられ、安静期間も短くてよいなど、長期入院の必要性自体がなくなってきています。

そのため、早期の転院や退院を促されます。

転院先を決めるポイント

なぜ病院が早期に転院または退院を求めるのかが、お分かりいただけたかと思います。

決して、病院側が患者の病状や家庭環境について考慮していないわけではありません。

医療の仕組み上、早期に転院や退院を促さないといけないシステムになっているのです。

医療の仕組みがわかったところで、次に転院先の選び方をお伝えしていきます。

上記で説明したとおり、転院は急かされます。

ゆっくりと悩んでいる時間はないので、ポイントを押さえて効率的に転院先を選んでいきましょう。

次の記事で、詳しく解説していきます。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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