脳ドックの異常発見率はどれくらい?脳ドックで発見できる9つの異常とその確率とは

脳ドックは人間ドックに比べ、その内容や検査にかかる時間に関して、受ける方の負担が少ないものと言えます。

それゆえに、異常がある場合にちゃんと見つかるのか、病気の発症予防につながるのか気になる方もいらっしゃるでしょう。

脳ドックは受診するプランや受診機関によって検査内容などが異なりますが、主流となるのは脳MRI検査です。

そこで今回は「脳MRI検査で異常が発見される確率」について詳しく解説します。

目次

脳MRI検査で発見された9つの異常

脳MRI検査とは、MRI(磁気共鳴診断装置)という機器で、脳全体や脳の血管を調べるものです。

現代の脳MRI検査では、かなり詳細に脳の状態を観察することができます。

脳MRIで発見できる異常状態は、主に以下の9つです。

  1. 慢性虚血性変化
  2. 脳動脈瘤
  3. 脳萎縮
  4. 無症候性脳梗塞
  5. 無症候性脳出血
  6. 脳動脈硬化
  7. 脳動脈狭窄
  8. 髄膜種
  9. 脳動脈解離

各異常状態についての詳細は、次の段落でその異常発見率とともに解説します。

【9つの異常に分けて解説】脳ドックの異常発見率

ここでは、ある1つの健診機関で、脳MRI検査にて発見された9つの異常とその異常発見率についてご紹介します。

あくまで1つの健診機関によるデータになりますので、参考程度にご覧ください。

①慢性虚血性変化

慢性虚血性変化とは、継続して脳の血の巡りが悪くなっていることを指します。

慢性虚血性変化の発見率

ある健診機関での慢性虚血性変化の発見率は、約21%(176名中37名)となっています。

軽度なものは、加齢性の変化として高齢者に多くみられます。

加齢以外の原因では、高血圧、メタボリックシンドローム、喫煙などが原因で起こることがあります。

慢性虚血性変化は自覚症状がなくても、放置すると脳梗塞の発症につながってしまいます。

特に、高血圧は慢性虚血性変化の最大の原因とされているため治療が必要となります。

そのほか、まれではありますが、多発性硬化症という難病が原因で起こることもあります。

慢性虚血性変化が早期発見されることで、脳梗塞の発症予防などの対処ができます。

②脳動脈瘤

脳動脈瘤とは、血管のコブを指します。

脳MRI検査で、3㎜以上の動脈瘤があれば発見されます。

脳動脈瘤の発見率

ある健診機関での脳動脈瘤の発見率は、約5%(176名中9名)となっています。

脳動脈瘤は、破裂すると脳出血となり命に関わります。

また、時に手術を含めた治療が必要となる場合があります。

そのため、早いうちに発見することがとても重要です。

③脳萎縮

脳萎縮とは、脳全体のシワが深くなったり多くなっていることを指します。

脳萎縮の発見率

ある健診機関での脳萎縮の発見率は、約3%(176名中5名)となっています。

脳の萎縮は30代から生理的なものとして始まっていきますが、ある一定以上の萎縮が進むと認知症の発症につながります。

認知症を防ぐことは難しいですが、萎縮が発見されることで、認知症の進行を遅らせることができる可能性があります。

④無症候性脳梗塞

無症候性脳梗塞とは、脳MRI検査上で脳梗塞が認められるにも関わらず、これまで自覚症状がなかったものを指します。

かくれ脳梗塞」とも呼ばれます。

無症候性脳梗塞の発見率

ある健診機関での無症候性脳梗塞の発見率は、約3%(176名中5名)となっています。

無症候性脳梗塞がある場合、再度脳梗塞を発症する危険性が高くなるため、内服治療をすることがあります。

無症候性脳梗塞が発見されることで、脳梗塞の再発予防の対処ができます。

⑤無症候性脳出血

無症候性脳出血とは、無症候性脳梗塞と同様、脳MRI検査上では脳出血が認められるにも関わらず、これまで自覚症状がなかったものを指します。

無症候性脳出血の発見率

ある健診機関での無症候性脳出血の発見率は、約3%(176名中5名)となっています。

無症候性脳出血は、将来、規模の大きい脳出血につながることがあるため、内服治療をすることがあります。

無症候性脳出血が発見されることで、脳出血の発症を予防するための措置ができます。

⑥脳動脈硬化

脳動脈硬化とは、脳動脈の内側の壁が厚くなり血管が硬くなることです。

脳動脈硬化の発見率

ある健診機関での脳動脈硬化の発見率は、約2%(176名中4名)となっています。

脳動脈硬化は、脳動脈を狭窄させ、ひいては脳梗塞の発症につながります。

脳動脈硬化が発見され、その原因となる生活習慣の見直しに取り組めば、脳梗塞の発症予防に繋がります。

⑦脳動脈狭窄

脳動脈狭窄とは、脳の血管が狭くなっている状態を指します。

先に述べた脳動脈硬化が進んだ結果、狭窄に至ります。

脳動脈狭窄の発見率

ある健診機関での脳動脈狭窄の発見率は、約1%(176名中2名)となっています。

脳動脈狭窄は、将来、脳梗塞を発症する危険性が高くなるため、内服治療をすることがあります。

脳動脈狭窄が発見されることで、脳梗塞の発症予防が期待できます。

⑧髄膜種

髄膜種とは、脳にできるがんのうち最も頻度が高いものです。

ゆっくりと大きくなるため自覚症状がなく、脳ドックで見つかる脳のがんの約半数が髄膜種であると言われています。

髄膜種の発見率

ある健診機関での髄膜種の発見率は、約1%(176名中2名)となっています。

髄膜種は良性であることが多いですが、大きくなるものや悪性の可能性があると、手術を含めた治療が必要になります。

早いうちに発見されることが重要です。

⑨脳動脈解離

 脳動脈解離とは、脳動脈の内側の壁の一部がやぶける状態を指します。

脳動脈解離の発見率

ある健診機関での脳動脈解離の発見率は、約1%(176名中2名)となっています。

脳動脈解離は、脳梗塞やくも膜下出血を発症する危険性が高く、時に手術が必要になることがあります。

早いうちに発見されることがとても重要です。

各異常ごとの発見率を述べましたが、これはあくまで1つの健診機関のデータによるものです。

健診機関全体で考えると、異常がある方はもっと多くなり、発見率も高くなるでしょう。

脳ドック検診、脳MRI検査のご案内 (city-hospital-shiogama.jp)

髄膜腫|東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍外科 (u-tokyo.ac.jp)

脳動脈解離| 慶應義塾大学病院脳神経外科教室 (keio.ac.jp)

脳ドックで異常が発見されることはしばしばある

今回は、脳ドックで異常が発見される確率について解説しました。

脳の異常は、進行している時点では自覚症状が出ないものが多く、病気を発症してからでは命に関わるほか、大きな後遺症を残すことがあります。

脳ドックを受けることにより、病気を発症する前に異常に気づける可能性があることが明らかになっています。

脳ドックを受けて、大切な命、また、不自由なく過ごせる今の体を守っていきましょう。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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