脳の老化は誰でも起こる現象?脳ドックでの衰えを予防しよう!

脳の老化については、記憶力の視点からみてみると、新しいものを記憶する流動性知能のピークはおよそ20歳代であり、その後衰えていきます。

これに対して、総合的な判断能力である結晶性知能は、およそ40歳代くらいまで向上し、以降も低下することはほとんどありません。

結晶性知能は、統合力・理解力・想像力などを総合して的確に判断を行う能力です。

このように脳の老化は誰にでも起こりうるものであり、予防には脳ドックで脳の状態を把握することが有効です。

今回は「脳の老化」と「脳ドックを活用した予防」についてご紹介します。

目次

脳の衰えとは

脳の衰えの一つに「物忘れ」があります。

物忘れが起こる原因として、タウたんぱく質(以下タウ)がリン酸化した状態で蓄積することが判明しています。

近年では、リン酸化したタウがどの程度蓄積しているのか、画像化できるタウイメージングが研究機関で行われるようになっています。

「知り合いの名前を思い出せない」というような生理的な物忘れは、タウの蓄積が海馬(かいば)と呼ばれる記憶を司る部位に留まっている状態です。

ところが、海馬から頭頂葉や側頭葉にタウの蓄積が広がると、病気としてアルツハイマー型認知症(=アルツハイマー病)を発症します。

脳は加齢に伴い萎縮する

加齢によって起こる脳の変化のひとつに「脳萎縮」があります。

年齢を重ねるにつれて、脳のシワがより大きく深いものになる状態変化です。

脳の萎縮は、一般的におよそ30歳代くらいから始まるとされています。

そして60歳以降になると、明らかな脳の萎縮を肉眼的にも捉えられるようになります。

大脳白質病変ってなに?若いひとでも要注意

血管性因子も脳の老化において、重要な役割を果たしています。

加齢に伴って、脳血管の循環障害が大脳白質という大脳皮質の深部へ広がるとされています。

これを大脳白質病変といいます。

軽度であれば無症状ですが、中等度以上の大脳白質病変になると高血圧や動脈硬化に関連し、転倒やムセ、頻尿などの症状が出現します。

慢性脳虚血性変化は、大脳白質病変の原因のひとつです。

慢性的に血液循環が悪くなり、脳の血管に血液が流れなくなることで大脳白質病変が現れるようになります。

無症状であることが多いのですが、重症化すると生活能力の低下や認知症の発症がみられるようになり、脳血管障害の発症リスクが高まるとされています。

大脳白質病変の原因は血流だけではないって本当?

大脳白質病変といえば、これまでは高血圧が原因となって引き起こされる高齢者特有の疾患として認識されていました。

ところが、近年では若年層にもみられる疾患となっており、原因も高血圧の他にストレスや睡眠不足などが考えられています。

このように大脳白質病変は加齢に伴って生じた変化だけではなく、他にもさまざまな要因があります。

最大の危険因子は高血圧

まず、大脳白質について説明します。

大脳の表面には神経細胞があり、それを灰白質といいます。

神経細胞の連絡路として、灰白質の奥に存在しているのが大脳白質です。

この白質全体に流れている細い動脈は、高血圧が長期に続くことで動脈硬化を引き起こします。

それにより脳血流が流れにくくなり、酸素が不足することで周りの脳細胞の働きが弱くなります。

結果的に細胞に含まれる水分が血管から染み出るようになり、脳ドックを行なった際に脳画像から白い斑点がみられるようになります。

この状態が大脳白質病変です。

生活習慣病

生活習慣病は、大脳白質病変の原因のひとつとして明らかになっています。

具体的には喫煙、メタボリック症候群、腎臓病、痛風などが挙げられます。

大脳白質病変は、高血圧によって発症する高齢者特有の疾患として捉えられていましたが、近年は睡眠不足やストレスを溜めている若年層での発症が増えてきました。

他にも、脳卒中の既往が近親者にある場合には、リスクが高いと考えられます。

リスクを把握し、生活習慣病全般の予防や改善を目指すことは認知症や脳梗塞などの発症予防に繋がります。

それには高血圧の管理も重要です。 

大脳白質病変の診断の重要性について

大脳白質病変についての診断方法、および早期発見の重要性について詳しく解説します。

脳ドックで脳MRI・MRAを活用する

頭部MRIやMRAなどの画像診断検査を用いると、大脳白質病変を発見することができます。

MRI検査脳の状態を画像に写すことで、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などの疾患が判明できる
MRA検査脳や頚の血管の状態を画像に写して、脳動静脈奇形や狭窄、動脈瘤を見つけることができる

加齢による変化と判別するためには、MRI検査とMRA検査の両方を組み合わせて行うことを推奨します。

大脳白質病変は、MRI検査における脳の断面画像で、細胞の隙間が白色に見える状態で現れます。

この白色の部分が広いほど、大脳白質病変が重度化していると診断されます。

大脳白質病変は早期発見がカギ

大脳白質病変が進行し、その範囲が広がると脳の神経細胞にも影響するようになります。

これは「脳血管性パーキンソン症候群」と呼ばれるような症状が出現する状態です。

そのため、たとえ自覚症状がなかったとしても、大脳白質病変を指摘されたことがある人は定期的に脳ドックを受けることを推奨します。

高血圧や生活習慣病など、大脳白質病変の発症リスクがある方以外にも、以下のようにすでに生活に支障をきたす症状が現れている方は、すぐにでも病院やクリニックなどの医療機関を受診しましょう。

  • 動作が緩慢になっている
  • 精神面で抑うつ状態になっている など

大脳白質病変を早期発見することで、進行を予防することが重要です。

脳の老化を予防するためには脳ドックが有効

大脳白質病変は、必ずしも加齢によって出現するわけではありません。

その原因は、高血圧や生活習慣病など、若年層でも見られることがあります。

大脳白質病変が見つかる状態は、脳血管障害を発症するリスクが高いと考えられます。

そのため、若年層でも脳の状態を把握しておくことは、生活習慣を見直すきっかけにもなり、疾患予防において重要です。

物忘れなど、加齢によるものだと簡単に自己解釈せずに、一度脳ドックを受けてみてはいかがでしょうか?

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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