30代から脳ドックを受けるのは早い?検査するべき人の特徴はある?

脳卒中ともいわれる脳血管障害は、日本人の死因ランキングにおいて上位に含まれています。

医療の発展により、脳血管障害を発症しても生存する可能性はありますが、脳にダメージを受けることによって、麻痺などの後遺症が残存する場合も多くあります。

そして、脳に何らかの病気が発症した場合、日常生活を今までと同じように送ることが困難になります。

こういった事態を防ぐために、脳ドックで自分の脳の状態について把握し、病気やリスクを予防することが大切です。

とはいえ、何歳から脳ドックを受ける必要があるのでしょうか?

今回は、はじめて脳ドックを受ける人の年齢や推奨される条件、頻度についてご紹介します。

目次

脳ドックは健康で長生きするために必要な検査

先述したとおり、医療の発展により、現代を生きる人たちの寿命は年々長く伸びています。

具体的な例を挙げると、厚生労働省が発表している「日本人の平均寿命の変化」についての統計において、1990年と2015年で比較した際に「男性75.9歳から80.7歳へ」「女性81.9歳から87.0歳へ」と平均寿命が延伸していることは明らかです。(※)

さらに、厚生労働省は以下のように発表し、長寿社会において“健康的に”長生きする必要性について呼びかけています。

『ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。』

人生100年時代構想会議中間報告より引用

令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-「平均寿命の推移」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-02-01.html

30代の脳ドック受診は早過ぎることはない!

一般的に脳の萎縮など器質的変化は、およそ30歳代くらいから始まるとされています。

さらに、大脳白質病変が出現する原因は、高血圧や生活習慣病など若年層でも見られることがあります。

大脳白質病変は、生活能力の低下や認知症の発症がみられるようになり、脳血管障害の発症リスクが高まるとされています。

そういった老化現象の始まりとして、30歳を節目に脳ドックを受けることは妥当といえます。

脳の異変については自覚症状が出るケースが少なく、事前に気づくことは難しいです。

だからこそ、脳ドックで客観的に自分の脳の状態について把握することをおすすめします。

若くても脳ドックを受けた方が良い人とは?

まず、大脳白質病変が起こる原因のひとつに、生活習慣病があります。

生活習慣病は、メタボリック症候群、痛風、腎臓病、糖尿病などがあります。

生活習慣病のリスクとして、ストレスや睡眠、喫煙などが知られています。

こうした生活習慣病は近年、若年層での発症が多くみられるようになっています。

また、血縁関係のある親族の中に脳血管障害を発症した人がいる場合には、他の人に比べて発症するリスクが高いとされます。

以上のように、発症リスクが高いと予測される人については、20代や30代などの若年層でも、積極的な脳ドックの受診をおすすめします。

脳ドックはどのくらいの頻度で受ければよい?

健康診断は、1度受ければ終わりではありません。

検査した時点で正常だった場合も、今後異常が見つかる可能性もあります。

ここでは「脳ドックをどのくらいの頻度で受ければよいのか」についてご紹介します。

正常だった場合はおよそ3〜5年おきでOK

 脳血管障害の中で、20〜30代の若年層に多くみられるのは脳出血です。

脳出血は、脳動脈にできた瘤(こぶ)がある日突然破けてしまうことで発症し、猛烈な痛みが頭を襲います。

脳出血には遺伝的な要因もあり、脳動脈に瘤ができやすい人が存在するため、20代や30代でも出来るだけ早期に、脳ドックで脳の状態を調べておくことが大切です。

そこで『異常なし』と診断された場合は、40歳まではおよそ3〜5年おきの脳ドックで問題ないでしょう。

若年層で脳ドックを1〜2年おきに受ける必要がある人

以下に当てはまる方は、若年層であっても脳ドックを1〜2年おきに受診するのが良いでしょう。

  • 『濃い味付けが好き』『甘いものばかり食べる』など偏った食生活を送っている
  • 喫煙者
  • 過度に飲酒する
  • 運動習慣がない

さらには血液検査などで高血糖、高血圧、脂質異常などを指摘されたことがある人は、20代や30代の若年層であっても血管年齢が老化し、状態不良になっている可能性が高いです。

これらは生活習慣病のリスクでもあり、動脈の動きや血流が固まりやすくなる『動脈硬化』に発展しやすいです。

現代では、若年層の人たちで生活習慣病や動脈硬化を発症する割合が増加しています。

脳ドックなどの検査を受診し、明確に脳血管障害のリスクを自覚することで、毎日の生活習慣を見直すきっかけにもなります。

また、身体に激しい衝撃を受けるようなスポーツをする人、特にボクシングやレスリング、サッカー、アメリカンフットボールなどの脳震盪を起こす可能性があるスポーツをされている方は、まめに脳ドックで状態を確認しておくことをおすすめします。

脳に問題が無い場合でも50代以上になったら2〜3年おきの受診

脳血管障害など、脳疾患発症のリスクは50代になると急上昇します。

50代以上では、身体の老化だけでなく、長年かけて蓄積されたダメージやリスクが負債となって、病気を発症しやすくなります。

死に関わる可能性のある脳や心臓の重篤な疾患というと、ある日突然発症する「くも膜下出血」「心筋梗塞」を想像する方が多いかと思います。

ところが、実際には20年〜30年かけて身体に悪影響を及ぼすリスクが溜まっていき、気づいた時には重篤な疾患へ繋がっていることがあります。

発症を防ぐためには、早期段階でリスクについて検査・認識することが重要です。

さまざまな病気になりやすい50代以上では、脳ドックで『異常なし』と診断されても、2〜3年おきに検査を受けることをおすすめします。

50代以上になり脳に異常が見つかった場合は1年に1回受診

50代以上では、何かしらの異常が多くの人にみられるようになります。

『大脳白質病変』などは、脳の老化現象として加齢によって大脳が変化し、自然に引き起こされることもあります。

そのため、よほどの異常がなければ『経過観察』とされる場合が多いです。

50代以降に脳ドックを受けると『脳腫瘍』『脳動脈瘤』『無症候性の脳梗塞』などが見つかる場合もあります。

ただし、こういった脳疾患は必ずしも早急な外科手術が必要と判断されるわけではありません。

脳ドックによる検査結果の説明で、医者から『経過観察』と判断された場合、最低でも1年に1回ペースで脳ドックを受診するようにしましょう。

病気の進行によって、外科手術など積極的な治療が必要になることがあります。

自分の身体について過信せず、医者と相談しながら最善策を取れるようにしたいところです。

脳ドックを受ける必要性は30代などの若年層も同じ

今回は、はじめて脳ドックを受ける人の年齢や推奨される条件、頻度についてご紹介しました。

脳ドックを受けるのに、年齢は関係ありません。

近年では、20代や30代などの若年層でも、脳の疾患を発症するリスクがあるとされています。

健康な状態で生活を送るために、ぜひ脳ドックを受けましょう。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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