脳ドックと人間ドックの違いは?両方受けた方がいいの?

脳ドックと人間ドックの違いは何でしょう?

身体機能が衰えはじめるミドル世代やシニア世代では、自身の健康状態を管理するために、健康診断や人間ドックを受診する人も多いのではないでしょうか。

そして近年では、脳の健康状態を把握するべく、脳ドックを受診する人も増えてきました。

健康管理をしっかり行うために、人間ドックと脳ドックの両方を受けた方が良いとも一概には言えません。

脳ドックも人間ドックも保険の適応ではなく、自費診療となります。

両方受診するとなると、多額の費用が掛かるでしょう。

ではどうすれば良いのか。

今回はそのような疑問にお答えしながら、脳ドックと人間ドックの違いについてご紹介します。

目次

脳ドックとは?

脳ドックとは、脳の萎縮や脳血管疾患、脳腫瘍など脳に異変が生じていないか、または病気のリスクについて把握することができる検査です。

機械を使用して、現在の脳や脳血管の状態を画像に映し、状態を調べることで、病気の早期発見にも繋がります。

くも膜下出血や脳梗塞などの総称である脳卒中は、日本国内での死因ランキングで上位を占めています。

さらにそういった脳の病気が起因となって、脳血管性の認知症を発症する人も増えています。

脳の病気については、自覚することが難しく、ある日突然発症することが多いです。

そういった意味では、脳ドックで脳の状態を定期的に調べておくことは、病気のリスク管理や予防に有効であると考えられます。

人間ドックとは

人間ドックとは、広義では健康診断の一種です。

血液検査や尿検査のような一般的検査項目はもちろん、各臓器についての精密検査を受けることができます。

検査項目は自分で選択することができ、全身状態を満遍なく調べることができるため、病気の早期発見やリスク管理に役に立ちます。

健康診断と人間ドックの違いは?

前項で「人間ドックは広義では健康診断の一種である」とお伝えしました。

「身体の状態を定期的に調べることで、病気などの異変がないか把握することを目的に行う」という点では、人間ドックも健康診断も同じです。

明確な違いがあるとすれば、会社員などに労働安全衛生法から義務付けられている一般健診とは違い、人間ドックはあくまでも自由意志で受診できます。

また、一般検診では含まれていないCTやMRI、胃カメラなどの精密検査の項目を受けることができます。

検査機械は脳ドックと人間ドックで異なるの?

脳ドックと人間ドックでは前項でご紹介したとおり、検査目的や部位が異なります。

しかし、使用する検査機械の一部には、MRI検査やCT検査など共通するものがあります。

各検査について説明していきます。

MRI検査

MRI検査は、強い磁力を持つ筒状の機械の中に入り、磁気と電波の力を利用して、身体の血管や内臓の状態を画像に造影する検査です。

造影剤を使用したり、造影条件を操作することで、多様な性質の画像を抽出することができます。

さまざまな角度に調整することで、全身のあらゆる部位を詳細に断層撮影することができ、診断に役立ちます。

撮影した画像から、各臓器や血管の異変が発見された際に、病態がどのような状態に陥っているのか、詳しく評価するためにも使用されます。

多様な部位を撮影することができますが、特に筋肉や脳のように水分が多いものの診断に向いているのが特徴です。

デメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 身体の全体を撮影する場合におよそ30分〜1時間ほどかかる
  • 機械の動作中の音が大きい
  • 撮影時に入る筒状の中が狭い

さらに、検査の注意点として、ボルトやペースメーカーなどの金属が埋め込まれている人は実施できません。

それに対して最大のメリットは、CT検査と異なりX線を使用しないため、放射線被ばくの恐れがないことです。

妊婦や小さな子供でも、検査を受診することができます。

CT検査

MRI検査は、水分の多い脳や筋肉の撮影に適しているとご紹介しました。

CT検査の場合は、MRI検査と異なり、腎臓や膵臓、肝臓などの臓器や骨、呼吸器など水分の少ない部位の画像化に適しています。

場合によっては造影剤を使用して、異常部と正常部の組織に明確な違いをつけて撮影することもあります。

体内の状態を詳しく撮影することができるため、治療や診断に大きく役立ちます。

デメリットは、MRI検査と異なり、少なからず放射線被ばくしてしまうことが挙げられます。

それに対して、撮影にかかる時間がわずか数秒で、短時間で検査を終えることができる点は、メリットです。

その他検査

他にも、脳ドックの精密コースで実施される検査には、人間ドックでも実施されるものが多く存在します。

脳ドックで行われる場合は、脳血管障害のリスクとなりうる病変の発見という意味合いで行われます。

①血液・生化学的検査

一般的な健康診断でも行われる、私たちにもっとも馴染み深い検査です。

採血した血液の状態をデータ化し、貧血状態や糖代謝、肝機能、腎機能、脂質に異常がないか調べることができます。

これらの数値に異常が見られる場合には、二次的に脳の疾患へ進展する病気が隠れている可能性があります。

具体的には、動脈硬化や糖尿病、高血圧などが考えられます。

②尿検査

尿検査は血液検査同様に、誰もが一度は受けたことがある検査です。

尿を採取し、データを分析することで、尿糖や尿蛋白について情報を得られます。

尿糖では糖尿病、尿蛋白では腎機能低下について評価することができます。

これらは動脈硬化や高血圧などにより、内臓機能が低下し、引き起こされます。

間接的に、血管の状態について調べることが可能です。

③心電図検査

心電図検査は、心臓の動きについて、身体の表面から心臓の筋肉へ電流を流して検査をします。

心臓の動きをデータ化し、心筋梗塞や心房細動、心筋虚血や狭心症などのリスクについて調べることができます。

これらの疾患は、脳血管障害のリスクにもなり得るものです。

④ABI(血圧脈波)検査

ABI(血圧脈波)検査は血管の硬さや詰まり具合について、左右の手足の血圧を同時に測定し評価をする検査です。

動脈硬化のような脳血管障害のリスクとなる血管の異常の有無について、調べることができます。

脳ドックと人間ドックそれぞれに利点がある

今回は、脳ドックと人間ドックについてご紹介しました。

どちらも保険の適応外であり、自由診療となるため、同時に受診するとなると高額な費用が掛かります。

しかし、脳ドックと人間ドックではそれぞれ検査できる部位が異なるため、期間を開けてでも一度は両方受けてみたいものです。

「脳ドック」「人間ドック」ともに、自分の体の状態を知るためにも、ぜひ積極的な受診をおすすめします。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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