50代になると、体に何かしらの症状を覚えたり、病気が見つかる方が増えてきます。
そのなかで「人間ドックしか受けたことがないけれど、脳ドックは受けたほうがいいのだろうか」と思う方もいれば「症状がないから脳ドックはいいだろう」と思う方もいるでしょう。
感じ方はさまざまかと思いますが、自覚症状がないからといって、脳の状態を知らないのは大変危険です。
特に50代になると、脳ドックでの異常所見率が約40%にのぼることがわかっています。
これにはしっかりとした理由があります。
今回の記事では、50代になったら脳ドックを受けた方がいい理由について、詳しく解説します。
50代になったら脳ドックを受けた方がいい理由
50代になったら脳ドックを受けた方がいい理由は、以下の5つです。
- 年齢とともに脳も老化する
- 脳の病気の原因となる、生活習慣病の人が増える
- 飲酒や喫煙をする人の割合が多い
- 運動習慣がない人の割合が多い
- ストレスを感じる人の割合が多い
それぞれの詳細について、解説します。
年齢とともに脳も老化する
脳全体や脳血管は、その他の体の部分と同様に、加齢に伴い老化していきます。
脳の萎縮や血管が硬くなるといったことは、老化のひとつであるため、正常の範囲内である場合は心配いりません。
ただし、老化のスピードが速い方や程度が重い方は、認知症や動脈硬化と診断されることがあります。
脳の老化している状態が、正常範囲内であるか異常であるかを確認するために、50代になったら脳ドックを受けることが推奨されます。
脳の病気の原因となる、生活習慣病の人が増える
脳の病気は、脳自体が原因で起こることは少なく、脳に関連する体の異変が続いた結果、発症するものです。
その異変とは、主に生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム)のことを指します。
まず、高血圧とは、血圧測定で140㎜Hgかつ・または90㎜Hgの状態が続くことを指します。
次に糖尿病ですが、こちらは血液検査で、以下の①②のいずれか又は両方に加えて、③の状態が続くことを指します。
- 空腹時血糖値が126㎎/dl以上
- 食後2時間血糖値が200㎎/dl以上
- HgA1C(ヘモグロビンエーワンシー)が6.5%以上
また高脂血症は、血液検査で、以下の①②③のいずれか又は2つ以上の状態が続くことを指します。
- LDLコレステロールが140㎎/dl以上
- HDLコレステロールが40㎎/dl未満
- 空腹時トリグリセライドが150㎎/dl以上
最後にメタボリックシンドロームですが、こちらは①ウエストの周囲が男性で85㎝以上、女性で90㎝以上の状態に加えて、先に述べた高血圧、糖尿病、高脂血症が一定の基準を満たしている状態を指します。(基準は以下の表を参照)
また、高血圧、糖尿病、高脂血症が複合した状態であり、その項目が多いほど、脳卒中による死亡リスクが2〜4倍高くなることがわかっています。
ある調査では、50代になると、肥満(表ではウエスト周囲が基準値以上の人)の割合が、約3人に1人になることがわかっています。
これらのことから、50代になったら、脳ドックを受けることが推奨されます。
飲酒や喫煙をする人の割合が多い
過度な飲酒(ビールでは2缶以上/日を毎日)や喫煙は、生活習慣病につながります。
過度な飲酒によって、脳卒中の発症率が約68%増加します。
そのなかでも、脳出血やくも膜下出血のリスクが高まることがわかっています。
喫煙は本数に関わらず、男性で1.3倍、女性で2.0倍、脳卒中を発症しやすいことがわかっています。
さらに、ある調査によると、50代の男性では、生活習慣病のリスクを高める量の飲酒をしている人の割合が、20代〜60代のなかで一番多いことが分かっています。
また、習慣的に喫煙している人の割合は、男性で約2.5人に1人となっています。
これらのことから、50代で脳ドックを受けることが推奨されます。
運動習慣がない人の割合が多い
運動習慣とは「週に2回、30分以上の運動」を指します。
運動不足は肥満につながり、生活習慣病、そして脳卒中へとつながっていきます。
ある調査によると「運動不足」を感じている人は、20代〜70代のなかで50代が最も多くなっています。
仕事が忙しかったり、管理職の立場になる人が増える世代であり、運動の機会はなかなか取れないのかもしれません。
50代で運動習慣がなく、肥満傾向にある人は、特に脳ドックを受けることが推奨されます。
ストレスを感じる人の割合が多い
ストレスは万病のもとで、脳の病気へも関わっています。
ストレスがたまり暴飲・暴食、喫煙をすると、生活習慣病のリスクが高まります。
そのほか、ストレスで分泌される「コルチゾール」というホルモンが体の免疫機能を低下させ、病気にかかりやすくなってしまいます。
ある調査では、「ストレスをよく感じる」割合は、20代〜50代のなかで50代が最も多くなっています。
このことから、50代で日常的にストレスを強く感じている、それにより生活習慣の乱れがある人は、特に脳ドックを受けることが推奨されます。
50代では脳の病気になる原因が多く潜んでいる
50代になると、脳の老化が進行するとともに、これまでの長い生活習慣の影響が、体や脳に現れはじめてきます。
しかし、それらは多くの場合、自覚症状がなく、検査をしてはじめて分かるものも多いです。
脳の異変が見つかっても、早期に治療を開始すれば、脳卒中という大きな病気を防げることもあります。
脳卒中後の後遺症による生活への影響は、計り知れません。
50代になったらぜひ脳ドックを受けて、健康で自立した人生を目指しましょう。