脳梗塞と深い関わりのある誤嚥性肺炎

脳梗塞を発症すると、誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなる場合があります。

誤嚥性肺炎とは何なのか、なぜ脳梗塞を発症すると誤嚥性肺炎のリスクが上がることがあるのかをお伝えします。

目次

誤嚥性肺炎とは

物を飲み込む働きを「嚥下」といいます。

食べ物や飲み物は通常食道から胃に入りますが、誤って気管に入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」といいます。

通常むせることで、気管から異物を排出します。

しかし、この機能が低下していると、異物が排出できず、肺の中で炎症を起こしてしまいます。

これを「誤嚥性肺炎」といいます。

咳嗽反射とは

気管に異物が入ったときは、意図せずともむせ込みが起こり、気管から異物を排出しようとします。

この反射機能のことを「咳嗽(がいそう)反射」といいます。

この咳嗽反射のおかげで、誤嚥性肺炎を防ぐことができます

誤嚥性肺炎と通常の肺炎の違い

よく肺炎という言葉を耳にするかと思いますが、誤嚥性肺炎と肺炎は違うのでしょうか?

いずれも肺が炎症を起こしている状態のことですが、以下のような違いがあります。

肺炎
多くの場合、細菌やウイルスに感染することにより、肺が炎症を引き起こします。

ですから、肺炎というと、通常この細菌やウイルス感染による肺炎のことを指す場合が多いです。

誤嚥性肺炎
誤嚥を起こしたことにより、異物が気管に入り、そこに含まれた細菌から肺炎を引き起こしている状態。

よく耳にする肺炎とは意味合いが異なる場合があります。

誤嚥性肺炎の場合は、ウイルスや細菌の感染により引き起こされる肺炎と、症状も異なる場合があります。

誤嚥性肺炎とは

嚥下機能(食べ物や飲み物を飲み込む機能のこと)は、加齢などで低下していきます。

脳梗塞を発症した場合は、嚥下障害(食べ物や飲み物を飲み込む機能に障害が起こった状態のこと)が引き起こされることもあります。

嚥下機能が低下したり障害されたりすると、誤嚥が起きやすくなりますし、咳嗽反射もうまく行うことができなくなってしまいます。

その結果、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまいます。

食べたり飲んだりしていなくても、誤嚥性肺炎を起こすことがあります。

それは「不顕性(ふけんせい)誤嚥」といって、寝ているときや無意識のときに、唾液を誤嚥してしまう場合です。

この不顕性誤嚥の場合は、咳嗽反射は見受けられないので、周囲の人も誤嚥が起こっていることに気が付きません。

加齢や脳梗塞により、歯磨きができなかったり、入れ歯の手入れができなかったりすると、口腔内の清潔が十分に保てません。

食事を摂っていなくても、口の中で細菌はどんどん増殖していきます。

その状態で不顕性誤嚥が起こると、高濃度の細菌も一緒に気管に入っていき、肺炎が重症化しやすくなります。

誤嚥性肺炎の症状

発熱・咳・痰といったものが、誤嚥性肺炎の症状です。

しかし、高齢者の場合は、このような症状が見られないことがあります。

活気がなかったり、食事の際に口の中に物をため込んだり、時には失禁してしまうなど、一見肺炎とは無関係のように見える症状が見られることもあります。

誤嚥性肺炎の検査

誤嚥性肺炎の検査には、以下のようなものがあります。

・胸部のレントゲン、CT検査
・血液検査
・痰の培養検査 など

誤嚥性肺炎の治療

誤嚥性肺炎の治療は、薬物療法が基本となります。

呼吸状態が悪い場合は、酸素投与を行います。

時には、人工呼吸器を装着する場合もあります。

誤嚥性肺炎の予防

誤嚥性肺炎を予防するには、口の中を清潔に保つことが重要です。

以下のことを心がけましょう。

食後の歯磨き

食後は歯磨きをするように心がけましょう。

歯だけでなく、舌もしっかりと磨くようにしましょう。

舌に白い苔状のものが付着していませんか?

これは「舌苔(ぜったい)」といって、細菌や食べ物のカスなどの汚れです。

舌磨きは、舌ブラシなどの専用のものを使うか、歯ブラシを使用するのであれば、優しく磨いてください。

強い力で舌磨きを行うと、舌が傷ついてしまいます。

認知症の方などは歯磨きを嫌がる方もいますが、その場合は、歯磨きをしてもらう工夫を考えてみましょう。

なぜ歯磨きを嫌がるのかというと、歯磨きの必要性が理解できていなかったり、口周りを触られることを不快に感じたりするからです。

優しく丁寧に、歯ブラシを見せながら、どんなことを行うのか説明しましょう。

歯磨きを気持ちいいことだと感じてもらえれば、次回の歯磨きに繋がりやすくなります。

食事をしている・していないに関係なく、歯磨きをするようにしましょう。

不顕性誤嚥のリスクを減らすことができます。

食事の前に口腔体操(口をすぼめたり・ふくらませたり、舌を上下左右に動かしたりしましょう)を行ったり、食事中はテレビを切り、食事に集中してもらうことも、誤嚥性肺炎の予防に効果的です。

食事の姿勢

食事の姿勢は、背筋がまっすぐになるようにしましょう。

頭が後ろに仰け反った状態だと、喉頭口という気管の入り口が開いたままになりやすく、誤嚥のリスク上がってしまいます。

クッションや枕などを使って頭の位置を調整しましょう。

食後は食べ物の逆流を防ぐため、すぐに横にならず、しばらく座っておくなど、頭を高くする姿勢をとりましょう。

食事について

嚥下機能が落ちている方は、病院の先生などと相談し、食べ物のサイズや硬さを調整したり、とろみをつけてみましょう。

食事のペースは速すぎず遅すぎず、30分程度で終わらせるのが基本です。

長い場合でも、1時間以上はやめておきましょう。

食事のペースが速いと、十分に噛んだり飲み込んだりできないことで、誤嚥のリスクが上がります。

食事のペースが遅いと、疲れてしまい、飲み込みが悪くなり、誤嚥のリスクが上がります。

口腔体操の一例

口腔体操にはさまざまなものがありますが、一例を紹介します。

体操の前に

まず、体操の前に、姿勢を正してください。

椅子に座り、背もたれから背中を離せる方は離してください。

次に深呼吸をします。

首をゆっくりと左右に傾けます。

5回ずつ行ったら、今度は首を回します。

これも5回ずつ行います。

首回しが終わったら、肩の上げ下げを10回行いましょう。

あいうべ体操・パタカラ体操

あいうべ体操・パタカラ体操を行いましょう。

あいうべ体操
「あ」「い」「う」を発声した後に「べ」と舌を突き出します。

これを5回行います。

パタカラ体操
「パ」を10回、「タ」を10回というように「パ」「タ」「カ」「ラ」を順に発声していきます。

「パタカラ」を各10回、全体で5回行いましょう。

体操が終わったら、もう一度大きく深呼吸をして終了です。

食事の前に行うと効果的ですので、試してみてください。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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