脳梗塞発症後の理学療法は何をする?症状別のリハビリ内容を紹介

脳梗塞を発症すると、後遺症を伴うことが多く、機能回復のために理学療法のリハビリをします。

脳梗塞を発症した方のご家族は「理学療法ってどんなことをするの?」と、疑問を抱くことはないでしょうか。

理学療法で実施されるリハビリが分かれば、脳梗塞をより知ることができ、退院後の生活のイメージもつかみやすいです。

そこで今回は、脳梗塞発症後の理学療法を症状別に分けて紹介します。

目次

脳梗塞発症後は理学療法含めたリハビリが重要

脳梗塞とは、脳の血管が何らかの要因で詰まり、脳に酸素や栄養が行き渡らなくなり、脳の神経細胞が障害を受ける病気です。

障害を受けた脳の神経細胞は元に戻ることはありませんが、リハビリにより障害を受けていない他の神経細胞が役割を代行することが期待できます。

リハビリは以下の3つがあり、患者さんの状態によって実施されます。

  1. 理学療法
  2. 作業療法
  3. 言語療法

それぞれの特徴は、以下のとおりです。

  1. 理学療法:身体の大きな部分の機能回復
  2. 作業療法:手の細かい動作や精神的アプローチ
  3. 言語療法:飲み込みや言葉の理解

脳梗塞発症後は、手足の麻痺が後遺症として残ることが多いため、理学療法が早くから実施されます。

脳梗塞発症後の後遺症に合った理学療法

脳梗塞は、障害を受けた部位によって後遺症がさまざまであり、患者さん一人ひとりの後遺症に適した理学療法が提供されます。

脳梗塞発症後の後遺症の内容と、どのような理学療法のリハビリをするのか紹介します。

手足の麻痺

脳梗塞の後遺症で多くみられるのが、手足の麻痺です。

手足の麻痺は、大きく分けて以下の2つがあります。

  1. 運動麻痺
  2. 感覚麻痺

運動麻痺は、手足が思うように動かせず、歩行や食事、着替え、トイレ動作、入浴動作など、日常生活に大きく関わります。

感覚麻痺は、しびれを感じたり、触れるだけで痛みを感じたりすることです。

手足の麻痺の理学療法

手足の麻痺に対する理学療法は、患者さんの身体の麻痺の状態をみながら、以下を行います。

  • 関節の可動域を広げるリハビリ
  • ベッドの起き上がりから、座位の姿勢・保持
  • 立ち上がり
  • 歩行練習

歩ける患者さんには、歩行練習をなるべく多く行った方が良いとされています。

歩行の際に使用する用具は、患者さんの状態によって選択され、杖や歩行器、装具なども使用可能です。

装具は足に取り付けるもので、足の弱い部分を補えます。

そして着替えやトイレ動作、入浴動作など、どのように身体を動かすとよいのか実践しながら指導します。

感覚障害は、リハビリの段階を順に踏んでいくことで、徐々に和らぐことが期待できます。

記憶障害

記憶障害の症状は、以下があります。

  • 経験した過去の記憶が抜け落ちる
  • 新しい物事を覚えるのが困難

患者さん自身は、記憶障害の自覚がないことがほとんどです。

そして、記憶障害が要因で日常生活に影響を及ぼすようになると、脳血管性認知症と呼ばれるようになります。

記憶障害の理学療法

記憶障害の理学療法は、繰り返し歩行訓練や日常生活動作などのリハビリを行います。

記憶障害は、新しい物事を覚えるのが困難ですが、何度も繰り返すことで動作の定着が期待できます。

半側空間無視

半側空間無視とは、視力に問題はなく、左側の空間が認識しづらい状態のことです。

症状は右側ばかりを向くことや、移動中に左側にある物にぶつかったり、食事の左側だけ残したりします。

半側空間無視の理学療法

半側空間無視の理学療法は、左側が認識しづらい状態であるため、左側に意識を向けるようなリハビリをします。

左側に意識を向けられるよう声をかけたり、左側から音を出したりします。

また、右側から順に左側に意識を向けてもらい、何があるのか、異常はないのかを確認するリハビリも有効です。

注意障害

注意障害とは、注意散漫で他のことに気をとられやすく集中できない障害です。

注意を持続できないことや、さまざま刺激から重要なものを選べなかったり、注意を向ける対象を切り替えることができなかったりします。

また、一度に2つの作業を平行することが難しいです。

注意障害の理学療法

注意障害の理学療法では、以下を確認します。

  • どの程度体を動かすと集中できなくなるのか
  • どういったことに気をとられやすいのか

脳梗塞発症後は体が疲れやすく、心理的な落ち込みもみられやすいです。

そういった症状が、注意障害をさらに引き起こします。

そのため、小さな目標を決めて無理のないリハビリを提供します。

目標を達成することで患者さんの自信をつけ、リハビリへの動機づけを行います。

また患者さん自身が、注意力が散漫しやすい状態であると自覚できるように介入することで、患者さん自身で注意を払える期待ができます。

遂行機能障害

遂行機能障害とは、以下のような障害がみられます。

  • 計画が立案できず突発的な行動をする
  • 行動が始められない
  • 自発的に行動できず受動的になる

また、客観的に自分を見られないので、上手く対応できず、同じ失敗を繰り返すことがあります。

注意障害と同様、一度に2つの作業を平行することが難しいです。

遂行機能障害の理学療法

遂行機能障害の理学療法は、注意障害と同じリハビリで改善が期待できます。

加えて自主性を引き出すために、退院後の生活をイメージしながらどのような目標をたてるか患者さんと一緒に考え、実現可能なプログラムを組み立てます。

脳梗塞発症後に理学療法を始める時期

脳梗塞発症後に理学療法を始める時期は48時間以内が理想です。

発症直後に病状が落ち着いたら、主治医の判断にてベッド上でできる理学療法から開始します。

ベッド上で過ごす時間が長くなるほど、関節可動域が狭くなり筋力も低下し、退院後の生活に大きく影響します。

なるべく早くベッドから離れて過ごせるようになることで、身体機能の改善を見込むことが可能です。

また、リハビリは中断することなく続けるものです。

リハビリを中断すると、改善した機能が低下することがあるため、根気よく続けることが大切です。

脳梗塞発症後は早くから個々に合った理学療法が行われる

今回は脳梗塞発症後の理学療法を、症状別に分けて紹介しました。

脳梗塞の後遺症は、患者さんによってさまざまであり、症状に合った適切な理学療法が実施されます。

発症後早期からリハビリを行うことで、より早く身体機能が回復すると見込まれます。

どのような理学療法をされているのか、ご家族が知ることで、脳梗塞の症状や退院後の生活がイメージできるでしょう。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

目次