脳梗塞における理学療法士の役割とは?7つの役割と発症時期に合った介入を紹介

脳梗塞を発症すると後遺症を伴うことが多く、医師から病状説明の席で「理学療法士によるリハビリをする」と説明を受けます。

しかし脳梗塞を発症した方のご家族は「脳梗塞での理学療法士の役割って何?」と疑問に思うことはないでしょうか。

理学療法士の役割が分かれば、ご家族は安心してリハビリを任せることができますよね。

そこで今回は、脳梗塞における理学療法士の役割を紹介します。

目次

脳梗塞における理学療法士の7つの役割

脳梗塞における理学療法士の役割は、以下の7つがあります。

  1. 患者さんの身体機能の回復
  2. 個々に合った理学療法のアプローチ
  3. 他職種との情報共有
  4. 患者さんの自宅退院を目指した介入
  5. 退院後の寝たきり予防の指導
  6. ご家族への指導
  7. 退院後の理学療法

それぞれ紹介します。

患者さんの身体機能の回復

理学療法士は、脳梗塞を発症した患者さんの身体機能の回復に重要な役割を担っています。

脳梗塞を発症した方は、後遺症のひとつである身体の麻痺を伴う方が多くいます。

脳梗塞の後遺症は、脳神経細胞が損傷されたことで発症しており、脳神経細胞が復活することはないため、もとのような機能回復はできません。

しかし、リハビリにより他の脳神経細胞が刺激され、損傷した脳神経細胞の替わりに、ある程度身体機能を行えるようになることがわかっています。

個々に合った理学療法のアプローチ

理学療法士は、身体機能のリハビリのプロであり、脳梗塞を発症した方に合ったリハビリをするのが主な役割です。

理学療法士は国家資格であり、大学や専門学校で専用のカリキュラムを履修し、理学療法士国家試験に合格した者だけが理学療法を提供可能です。

脳梗塞を発症した後の身体の麻痺は、以下のように個々によって異なります。

  • 身体の半側がほとんど動かせない方
  • 身体を動かせても自由に動かすことができない方

一人ひとりの身体機能を客観的に評価、問題点を抽出し、リハビリプログラムを作成し介入します。

他職種との情報共有

理学療法士は、患者さんの身体機能やリハビリによる回復過程などを、医師や看護師、患者さんに介入している他のスタッフと共有するのも役割のひとつです。

共有することで、リハビリの指示をしている医師がリハビリの時間を増減したり、理学療法でないリハビリを取り入れたりできます。

また療養上の世話をしている看護師は、患者さん自身ができることや、援助する方法を改めて考えられます。

他のリハビリスタッフと共有することで、多角的な面から患者さんの機能回復のアプローチが可能です。

患者さんの自宅退院を目指した介入

脳梗塞を発症した後は、急性期病院で治療を行い、リハビリ病院へ転院、その後自宅へ戻るのが一般的な流れです。

患者さんが自宅退院を目指せるような介入をするのも、理学療法士の役割です。

患者さんの身体状態に合わせて、杖や歩行器、装具を提案し、歩行練習とともに安全な使用方法も指導します。

車いすが必要な患者さんには、安全な操作方法や移乗方法を指導します。

また更衣や排泄動作など、日常生活に基づいた理学療法を反復して行うことも、自宅で安全に過ごすために効果的なリハビリです。

退院後の寝たきり予防の指導

患者さんが自宅でも継続してできるリハビリを伝えるのも、理学療法士の役割です。

患者さんは自宅へ退院後、病院のように毎日長時間リハビリを行うことができません。

リハビリをしないと筋力が低下し、回復した身体機能も徐々に低下するので、ベッドで寝たきりになることもあります。

患者さんが寝たきりにならず、なるべく身体機能が維持できるように、自宅で患者さん1人でもできるリハビリを入院中から指導します。

ご家族への指導

患者さんが退院後は、ご家族の協力が必要になるため、ご家族に指導を行うのも理学療法士の役割です。

患者さんが杖や歩行器、装具、車いすなどを使う場合は、使い方と注意点を指導します。

また、どの程度患者さん自身ができて、どこから介助が必要なのかも家族に伝え、自宅で生活するイメージを持ってもらいます。

ご家族は、患者さんの自宅での療養生活に不安を抱くこともあります。

ご家族の疑問点や不安な点を聞き、解決策を提案したり、一緒に考えたりするのも理学療法士の役割です。

退院後の理学療法

自宅で安全な生活をおくれるように、引き続きリハビリ介入するのも理学療法士の役割です。

自宅へ退院した後も、患者さんの状態によって理学療法士によるリハビリを受けることが可能です。

退院後に理学療法を受ける方法は、以下の2つがあります。

  1. 自宅から病院やリハビリ施設へ通う方法
  2. 通院が難しい場合は理学療法士が自宅へ訪問しリハビリする方法

脳梗塞の発症時期における理学療法士の役割

理学療法士は、患者さんが脳梗塞を発症した時期によっても役割が異なります。

脳梗塞を発症した後の時期を3つに分け、各時期の理学療法士の役割を紹介します。

発症して間もない急性期

脳梗塞を発症して間もない時期を「急性期」といいます。

急性期は、主に発症直後から2週間を指します。

脳梗塞のリハビリは、発症後48時間以内に始めるのが望ましいとされています。

その理由は、早くリハビリを開始すると、より身体機能が回復するとわかっているからです。

理学療法士は、まずはベッド上でのストレッチや関節可動域訓練から行い、徐々に起き上がる・座る・立つ・歩くリハビリをします。

リハビリにより患者さんの血圧が変動することがあるため、理学療法士は注意深く観察します。

症状が落ち着いた回復期

脳梗塞を発症してから2週間以降〜3ヶ月(または6ヶ月)、病院でリハビリをする時期を「回復期」といいます。

理学療法士は移動、更衣、排泄動作、入浴動作など、自宅での生活を想定したリハビリを行います。

患者さんが回復期にどれだけリハビリを行うかによって、退院後どのような生活を送れるのかが変わる大切な時期です。

自宅や施設で生活する生活期

患者さんが病院を退院後、自宅や施設で生活する時期を「生活期」といいます。

自宅で生活している方は、リハビリ病院やリハビリ施設に通い、理学療法士によるリハビリを受けられます。

以下のような方は、理学療法士が施設や自宅へ訪問し、リハビリを受けることが可能です。

  • 施設で生活している方
  • リハビリをしている場所へ通うのが困難な方

理学療法士は筋力低下の予防や身体機能の維持に加えて、外での歩行も行い、活動範囲を広げたリハビリをします。

また自宅で生活する場合は、転倒せず安全に生活することができるよう、手すりやスロープの設置など、必要な福祉用具を関係機関と相談するのも理学療法士の役割です。

脳梗塞における理学療法士の役割はとても重要

脳梗塞を発症した方は、身体の麻痺を伴うことが多いため、身体機能の回復に大きく関わる理学療法士の役割はとても重要です。

理学療法士は一人ひとりに合ったリハビリを提供することはもちろん、退院後の生活を見据えて他職種やご家族との関わりを大切にしています。

患者さんは、理学療法士によるリハビリを積極的に受けることで、退院後より良い生活を送る期待ができるため、ご家族は安心してリハビリを任せましょう。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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