脳梗塞と心の付き合い方

脳梗塞を発症してしまったとき、どのように脳梗塞と付き合っていけばよいでしょうか?

葛藤やさまざまな不安や心配を、うまく乗り越えていきましょう。

目次

自分の病気を正しく理解しましょう

脳梗塞とうまく付き合っていくには、まず自分の病気を正しく知ることから始めましょう。

脳梗塞は前兆がある場合もありますが、多くの場合はある日突然発症します。

半身麻痺や失語症などが出現した場合「昨日まで動いていた手足が動かない」「しゃべることができない」といった大きな体の変化が訪れるわけですから、悲しみや混乱、今後の不安など、さまざまな感情が入り混じると思います。

半身麻痺や失語は、リハビリをすることによって改善が見られる場合と、見られない場合があります。

ひとくちに脳梗塞といっても「頭のどの部位が障害されたのか」「どの程度の脳梗塞の大きさなのか」などは、個々で異なりますので、脳梗塞の症状も異なります。

ですから、後遺症の有無も人によって異なります。

たとえ同じような症状が出ている方がいても、その人と同じ経過をたどるわけではありません。

同じような症状が出ている方を見て、あれこれ考えたりしても、自分に当てはまるかはわかりません。

インターネットには、脳梗塞の知識や治療などたくさんの情報が書かれていますし、脳梗塞に関してブログを書いている方もいらっしゃいます。

そういったものが、自分のモチベーションを上げてくれたり、前向きになれるのでしたら、生活に取り入れればよいと思いますが、多くの場合は、そういった情報を得ることで不安は増長していきます。

インターネット上の情報は、自分自身に当てはまるものばかりではありません。

そういった情報を活用するのではなく、ぜひ主治医を頼っていただきたいと思います。

病気のことを一番理解しているのは、主治医です。

些細なことでも構いませんので、心配なことがあれば質問してみてください。

医師と話すときは、緊張してうまく話せないという方もいらっしゃると思います。

そんなときは、事前に聞きたいことをメモにまとめてから、質問してみてください。

「わからないことは質問する」「わからないことは主治医に聞く」この2点は重要なポイントです。

若い方は、なんでもインターネットに頼りがちですが、正しい情報や自分の今後については、医療スタッフに尋ねる癖をつけてください。

人間は病気になったときなどは、誰しも悪い方向にばかり考えてしまうものです。

インターネットばかりで情報収集をしている方は、悪い情報にしか目がいかず、心配しなくていいようなことを心配していることもあります。

悩みは相談しましょう

自分の病気を正しく理解したとしても、さまざまな悩みがあると思います。

そのときは、必ず誰かに相談しましょう。

医療スタッフに相談するもよし、家族に相談するもよし、自分が信頼できると思う人に相談しましょう。

悩みを相談せず我慢している人が「強い人」ではありません。

むしろ何も言わない・相談しない人は、ある日突然心が折れてしまったり、気持ちが爆発してしまったりすることもあるので注意が必要です。

後遺症として半身麻痺が残ってしまうことが確定している場合でも、悩みを口に出すということには意味があります。

「悩みを口にしても、どうせ麻痺は残ってしまうのだから意味がない」と思う方もいらっしゃるでしょう。

しかし、そうではありません。

たとえ解決しない悩みであっても、誰かに話すということは、心を落ち着かせます。

人に悩みを相談することで、新しい考え方を得られることもありますし、自分が何に悩んでいるかを整理できることもあります。

例えば、半身麻痺により、自分のボディーイメージが崩れることが悩みだと思っていたが、悩みを相談していくうちに「実は介護をしてもらうことへの抵抗があるという悩みだった」ということに気が付く場合があります。

人は悩みすぎると、一体何に悩んでいるのか、自分でもよくわからなくなっていきます。

悩みを口に出すことで、悩みが明確になり、その結果解決の糸口が見つかる可能性は十分にあります。

脳梗塞を発症した後は、うつ病を発症することがあります。

半身麻痺や言語障害などの不安や悲しみなどの心理的反応も関係しているといわれていますが、脳梗塞による脳の機能低下も関係しているのではないかといわれています。

ひとりで悩みを抱えるよりも、誰かに話をすることで、うつ病のリスクも軽減できます。

うつ病はなかなか自分自身では気が付きにくいので、家族の方も心の状態を気にかけておきましょう。

目標を持ちましょう

リハビリに励むためにも、目標を持ちましょう。

以下のような具体的な目標を設定しましょう。

・自分ひとりで衣類の着脱ができるようになる
・杖を使ってひとりで歩けるようになる など

目標を設定する際には、自分の病気について正しく理解し、相応しい目標を設定しましょう。

現実と目標が乖離していては、目標が達成できないとわかったときに、心が折れてしまう可能性があります。

医師やリハビリの先生と相談し、どのくらいの期間で、どのくらいの目標を持てばよいか相談しましょう。

ひとりでできることだけを目標に設定する必要はありません。

起き上がりを介助してもらう場合は「自分自身も麻痺のない側の手で柵をつかみ、協力して起き上がる」といった目標でも大丈夫です。

個人個人の状態に合わせて、目標を設定しましょう。

大きな目標として「旅行に行く」というのはいかがですか?

過去に脳梗塞を発症していても、旅行に行くことは可能です。

最近では、看護・介護付きの旅行もありますので、ご本人もご家族も安心して旅行を楽しむことができます。

無理だと諦めず、いろいろなことに挑戦してみてください。

とはいえ、旅行などは普段と環境が異なり、体の負担となることもありますので、主治医とよく相談して決めてください。

目標を達成したら、また新しい目標を立ててください。

目標があることで、人生に張り合いが出てきます。

大きな目標でも小さな目標でも構いません。

脳梗塞でも、できることを探してみましょう。

脳梗塞になってしまった過去は変えることができませんが、これからの未来をどう生きていくかは、今からでも変えることができます。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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