脳梗塞の後遺症改善のために自宅でできるリハビリにはどんなものがある?

脳梗塞を発症し、病院で治療・リハビリをしたあと、退院が可能となれば、自宅でもリハビリを継続していくことになります。

一度失いかけた体の機能は、正しく動かし続けることで維持したり、低下を防止することが期待できます。

今回は、脳梗塞のリハビリで自宅でできる方法について説明します。

目次

退院後も病院や地域のサポートを受けることができる

自宅でのリハビリ方法は、自分だけで考える必要はありません。

退院後も、病院や地域のフォローを受けることができます。

具体的には、以下が挙げられます。

  • 外来でのリハビリ
  • 地域のリハビリ施設の利用
  • 訪問によるリハビリサービスの利用

また、自分で移動ができるかどうかによって、以下のように分けられます。

移動ができる場合
外来やリハビリ施設でのリハビリ
(送迎バスが出ていることもあります)

移動が難しい場合
訪問によるリハビリ

リハビリ施設や理学療法士・看護師にしかできない内容のものもありますが、自宅でも継続してリハビリができるよう、指導や説明をしてくれるケースがほとんどです。

そういったリハビリ内容を、自宅でも取り入れていくことになります。

後遺症別の自宅でのリハビリ方法

脳梗塞発症後に生じる後遺症によって、自宅でのリハビリ方法は異なります。

多くの方が指導や説明を受けているリハビリ内容について、詳しくご紹介していきます。

半身まひや痺れがある場合のリハビリ方法

半身まひや痺れがある場合、まずは自宅内で安全に移動が行えるように生活環境を整える必要があります。

【住宅改修】まずは生活環境を整えよう

生活環境を整えることを、よく住宅改修と呼びます。

一般の住宅には段差が多く、また、手すりは階段にしかついていない場合がほとんどです。

これでは移動が難しく、転んでしまう原因にもなります。

以下のような改修を検討しましょう。

  • 段差をスロープに変更する
  • ふみ台を置いて段差を低くする
  • 玄関や廊下・トイレやお風呂に手すりを設置する

住宅改修費用は、介護保険で助成されます。

ケアマネージャーや、市町村の担当窓口に相談してください。

リハビリ

生活環境が整ったら、いよいよリハビリに入ります。

リハビリと言っても、半身まひや痺れがある場合の自宅でのリハビリは、何よりも「身の回りのことをコツコツと続けること」が重要になります。

具体的には、以下のような日常の動作を指します。

移動する、食事をとる、トイレに行く、着替えをする、洗濯を回す、など

これらの日常的な動作を、まひしている方の手足も使いながら行うことで、身体機能の維持が可能になります。

これらすべての行為において、多少の差はあっても「動く」という動作が必要になります。

ある研究では、歩くことで、半身まひで傾きやすい体のバランスを整えたり、転びにくくなることがわかっています。

まひしている方ばかりを使うと、痛みや疲労の原因になるため、まひしていない方の手足もバランスよく使うようにしてください。

以下は、怪我をしたり転んだりする危険性もありますので、無理をせずに家族や介護サービスを頼りましょう。

食事を作る、洗濯物を干す・たたむ、入浴など

言語障害がある場合のリハビリ方法

言語障害とは、以下のような症状を指します。

  1. 言葉がなかなか出ない
  2. 相手の言葉が理解できない

これら両方の症状がある場合と、どちらかだけの症状の場合があります。

言葉がなかなか出なくても、相手の言葉を理解できている場合があります。

外来や通所のリハビリでは、まずは言葉を話す前の準備として「あー」と声を出したり、50音字、濁音などの発声練習をします。

自宅でも同じように行いましょう。

それに慣れてきたら、以下のような日常で頻繁に使うあいさつ言葉の練習を行いましょう。

あいさつ言葉の例

おはよう、ありがとう、いただきます、さようなら、おやすみ

家族や介護サービス提供者に「はい」「いいえ」で答えられる質問をしてもらったり、相手の言葉で真似できそうなものを真似するのもいいでしょう。

発声や発語を繰り返すほど、言葉は出やすくなります。

相手の言葉が理解できないことに対する直接的なリハビリはありませんが、コミュニケーションをとる方法として、相手にジェスチャーをしてもらったりをかいてもらうことが有効です。

嚥下(えんげ)障害がある場合のリハビリ方法

嚥下障害とは、食べ物を口に入れて飲み込むまでの一連の動作(噛む、噛んだものをまとめて舌の奥に送り込む、飲み込む)がうまくいかないことによる、以下のような状態を指します。

  • 食事に時間がかかる
  • むせる
  • 肺炎を起こす
  • 食事量の確保が難しい

嚥下障害は、時に栄養状態の悪化や、肺炎による重症化を引き起こすため、リハビリはとても重要です。

多くの病院やリハビリ施設で行われているものに嚥下訓練があります。

嚥下訓練には、直接訓練間接訓練があります。

直接訓練食事を食べる訓練のことを指し、すでに入院中に行っているもの
間接訓練自宅に帰り、食事以外の時間に行うリハビリのこと

嚥下訓練:間接訓練

間接訓練とは、食べる行為を行わない訓練のことをいいます。

食べて飲み込む動作をするためには、あらゆる器官を鍛える必要があります。

具体的な内容としては、以下の動作が挙げられます。

  1. 口をすぼめてつきだす・そのまま左右に動かす
  2. 頬を膨らませる・そのまま左右に動かす・すぼめる
  3. 水などを入れたコップでストローを吹く
  4. 舌を突き出す・そのまま上下左右に動かす
  5. 椅子に座って両端を手で押しながら「あー」と発声する
  6. 首を上下左右に曲げる・回す

これらの動作により、食べて飲みこむ準備が整うほか、むせることを防止します。

リハビリ以外で工夫できることとして、口の中は常に清潔に保ちましょう。

食べているとき以外でも、食事の残りカスなどが口の中に残っていると、誤えんをして肺炎の原因になります。

食事形態を変えることも、検討しましょう。

例えば、噛みにくい場合であれば、よく刻んだり、むせやすい場合はトロミ粉を使用すると良いでしょう。

①脳梗塞の後遺症を軽くするリハビリ方法と期間(急性期、回復期、生活期) | NHK健康チャンネル

②J⁻STAGE 理学療法学 脳卒中後在宅片麻痺患者の退院後の機能と体力の維持について
脳卒中後在宅片麻痺患者の退院後の機能と体力の維持について (jst.go.jp)

③J⁻STAGE 関東甲信越ブロック理学療法士学会
維持期脳卒中片麻痺に対する自主運動プログラムの効果 (jst.go.jp)

④脳卒中|病気について|循環器病について知る|患者の皆様へ|国立循環器病研究センター 病院 (ncvc.go.jp)

⑤摂食嚥下障害のリハビリテーション|慶應義塾大学病院 KOMPAS
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000270.html

脳梗塞後遺症の改善には自宅でのリハビリがかかせない

今回は、脳梗塞後に自宅でできるリハビリ方法について説明しました。

リハビリの方法は、外来や通所リハビリで説明を受けたものを行いましょう。

個人個人で必要なリハビリの内容は異なります。

自分だけで決めずに、リハビリスタッフに相談してリハビリ内容を決めてください。

自宅で正しくコツコツとリハビリを続けることが、後遺症の改善に繋がります。

今ある体の機能を大切に守りながら、無理のない範囲でリハビリを行いましょう。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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