by脳梗塞MZ編集部
脳梗塞と高次脳機能障害
高次脳機能障害は「見えない障害」とされています。身体の麻痺は、目で見てわかります。そのため周りの人も、それを障害として認識できます。しかし、高次脳機能障害は外見的に障害が目立ちにくいので、周りの人がそれを障害として認識してない場合が多いです。さらには本人も、それを障害と認識できていない場合さえあります。脳梗塞の後遺症で、一番理解が得られにくい後遺症です。
目次
高次脳機能とは
高次脳機能とは、言語、行為、認知、記憶、注意、判断などの、高度な脳の働きのことを言います。高次脳機能障害にはどんなものがあるのか、代表的なものの症状と対応の仕方について以下に例を挙げて説明します。
注意障害
症状
注意障害とは、対象を選ぶ(選択性)、対象への注意を持続させる(持続性)、対象を切り替える(転導性)、複数の対象へ注意を配分する(分配性)などの機能が障害され、注意を適切に向けられない状態のことです。簡単にいうと、気が散ってしまう状態のことです。
対応
刺激をなくし、集中しやすい環境を整えましょう。情報は整理して簡潔に伝えましょう。
遂行機能障害
症状
遂行機能障害とは、目標を明確にする(目標の設定)、目標達成のための手段を選択する(計画の立案)、正しい順序で開始、持続する(計画の実行)、自己の行動を評価・修正する(効率的な行動)などが障害され、物事を段取りよく進められなくなった状態のことです。簡単にいうと、計画的に行動できない状態のことです。
対応
計画は具体的に書き出し、1つずつ確実に行いましょう。わからなくなったら質問してもらうようにしましょう
記憶障害
症状
記憶障害とは、入力情報を脳内で処理できる形に符号化する(記銘)、貯蔵する(保持)、再生する(想起)のいずれかが障害され、新しいことが覚えられなくなったり、思い出すことができなくなったりした状態のことです。
対応
メモやカレンダーに記入することを習慣づけましょう
社会的行動障害
症状
社会的行動障害とは、感情を適切にコントロールすることができなくなり、不適切な行動をとる状態のことです。簡単にいうと、人間関係がうまく作れない状態のことです。感情を抑えられなくなったり、逆に自発的に行動できない等の症状がみられます。
対応
感情的になりやすい場合は、行動の前に一度確認する癖をつけましょう。発動性の低下がみられる場合は、するべきことのリストを作りましょう。周囲の人にも、患者を責めない、問題の起きるパターンを分析して予防してもらうなど協力を求めましょう。
失語
症状
失語とは、読む・書く・話す・聞くなどの言語機能が失われた状態のことです。
対応
ジェスチャーや絵など、非言語的コミュニケーションを利用しましょう。短い文や単語でゆっくりと話しましょう。最初の文字を言うなど、ヒントを与えましょう。日常会話に患者を参加させましょう。
失認
症状
失認とは、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、体性感覚など、その感覚自体の異常がなく、注意や知能といった一般的な精神機能が保たれているにも関わらず、対象を認知できない状態のことです。
対応
見て理解できない場合は、触れてみたり、音を聞くなど、他の感覚を使用することでわかりやすくなります。聞いて理解できない場合、筆談や手ぶり、ジェスチャーなどの工夫をします。
半側空間無視
症状
半側空間無視とは、全視野が目に入っているにも関わらず、意識して注意を向けない限り、左側(まれに右の場合もある)の物体に気が付かない状態のことです。患者は、食事で皿の左半分を残したり、歩行時に左側の物体にぶつかったりします。
対応
病識がないことが多いので、理解を促しましょう。話しかける場合は右から(半側空間無視のない方から)話しかけましょう。食事の配膳の際には、食事メニューを伝え、どこに何が置いてあるか把握してもらいましょう。
高次脳機能障害の診断
MRI、CT、脳はなどにより脳梗塞などの疾患の発症が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できること。そして現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害であること。発症前から有する症状と検査所見は除外すること。以上のような項目に当てはまる場合は、高次脳機能障害と診断されます。
これらの高次脳機能障害の検査・診断は、原因疾患(脳梗塞など)の急性期治療が終わった後に実施されます。
高次脳機能障害の治療
高次脳機能障害の治療は、リハビリテーションが主体になります。ゲームを通して訓練をしたり、買い物や料理のなどの実習を行ったりと、日常生活に結びつくようなリハビリプログラムを作ってくれます。
高次脳機能障害との付き合い方
高次脳機能障害者の方の日常・社会生活を支援するため、無料で相談やリハビリ等を行っている地域もあります。一度ご自身のお住いの地域のホームページを確認してみてください。また、家族会など、独自に活動をしている団体もあります。
同じ疾患を持つ方や、その家族など、同じように悩みを抱えている方とお話をするだけでも心が軽くなると思います。また、病院を退院してしまうと、新しい情報が入りにくくなりますので、こういった支援などを利用することで、新しい情報を取り入れることもできます。
患者さん本人も病気に対してストレスを感じますが、ご家族も同じようにストレスを感じます。このような支援を利用して、病気と上手く付き合っていきましょう。そして、もしその支援に助けられたなら、今度はご自身が助ける側に回ってあげてください。患者本人またはその家族にしかわからないこと、できないことがあると思います。
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