by脳梗塞MZ編集部
脳梗塞と介護保険制度その1
脳梗塞を発症し、幸運にも命をつなぐことができた場合でも、半身麻痺などの後遺症が残ってしまうことは少なくありません。後遺症などの影響で自立した生活を送ることが難しい場合には、利用できるサービスがあります。介護保険制度、要介護認定、介護サービスなど聞いたことはあるかと思うのですが、よく知らないという方がほとんどかと思います。そこで、脳梗塞と介護保険制度その1では介護保険制度について、要介護認定の流れなどをお伝えしていきます。脳梗塞と介護保険制度その2では介護度や介護サービスの内容などをお伝えしていきます。
目次
介護保険制度について
介護保険制度の歴史
介護に関するサービスを利用する上で、介護保険制度という言葉が出てくるかと思います。脳梗塞に限らず、私たちが介護に関するサービスを受けることができるのは、この制度のおかげです。
ひと昔前は、介護は子どもや家族が行うことが当たり前の時代がありました。しかし、今日では、介護者の高齢化の問題や核家族化の問題など、様々な課題が見え始め、子どもや家族だけで介護を行うことが困難になってきました。そこで、社会全体で介護を支えていくために2000年に介護保険制度が作られました。
介護サービスの自己負担額について
介護保険制度とは、介護が必要な方に介護費用の一部を給付する制度です。介護サービスの自己負担額は原則1割ですが、収入に応じて2~3割となる場合もあります。また、介護度の状態によって、支給される限度額が異なります。
介護保険制度の加入について
ここまでの記事を読んで、「そんな制度があるなんて知らなかった、介護保険制度に加入していなかった、どうしよう」と感じた方はいらっしゃいませんか。大丈夫です、安心してください。40歳になると、介護保険の加入が自動的に義務付けられ、保険料を支払うことが決まっています。任意で加入する生命保険などとは異なり、介護保険制度は国が行っている制度です。
40歳から64歳までの方は第2号被保険者と呼ばれ、保険料は加入している健康保険と一緒に徴収されます。65歳以上の方は第1号被保険者と呼ばれ、保険料は原則として年金からの天引きで市区町村が徴収します。第2号被保険者から第1号保険者への移行には手続きなどが必要なく、自動的に切り替わります。
介護保険制度の財源について
介護保険制度の財源について、先ほど40歳以上になると保険料が徴収されることはお伝えしました。被保険者(40歳以上の方)が納めている保険料は、介護保険制度の財源の50%程度になります。残りの50%は、国や県・市町村の税金で賄っています。
介護保険の適応条件
第1号被保険者(65歳以上の方)は、原因を問わずに要介護認定または要支援認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。また、第2号被保険者(40歳から64歳の方)は、老化に起因する疾病(特定疾病)が原因で要介護認定または要支援認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。
老化に起因する疾病(特定疾病)
老化に起因する疾病は以下の16疾病となります。
1がん(末期)
2 関節リウマチ
3筋萎縮性側索硬化症
4後縦靱帯骨化症
5骨折を伴う骨粗鬆症
6初老期における認知症
7進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
8脊髄小脳変性症
9脊柱管狭窄症
10早老症
11多系統萎縮症
12糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および 糖尿病性網膜症
13脳血管疾患
14閉塞性動脈硬化症
15慢性閉塞性肺疾患
16両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
介護サービスの利用の流れ
介護サービスを利用するには、要支援認定または要介護認定を受ける必要があります。
まずは、市区町村の窓口で「要介護(要支援)認定」の申請をします。地域包括支援センターなどで申請を代行してもらうことも可能です。申請後は、市区町村の職員などの調査員がご自宅を訪問し、心身の状況を確認するため、本人やご家族から聞き取りなどの調査を行い ます。これを介護認定調査といいます。主治医には心身の状況について意見書を作成してもらう必要があります。意見書の作成は市区町村から主治医に直接依頼があります。
この調査の結果と主治医の意見書をもとに、介護認定審査会で審査が行われ、介護度の判定が行われます。認定結果は、申請から30日以内に、市区町村から通知されます。その後は、ケアマネージャーにケアプランを作成してもらい、サービスの利用開始となります。
介護認定調査で心がけるポイント
介護認定調査では、介護を必要とする方の状態を正確に調査員に伝える必要があります。調査員から質問を受けた際は、ありのままの状況を伝えましょう。調査当日は、介護を必要とする方だけでなく、ご家族が同席されることをお勧めします。
よくある例は、介護を必要とする方が、いつも以上に動作を頑張ってしまったり、できないことを「できる」と言ってしまい、介護度の判定が低く出てしまうパターンです。ご家族が同席することで、できないことはできないとしっかりと伝えましょう。介護度が実際の状態と異なっていると、受けたいサービスを受けることができなくなってしまう場合があります。
また、介護度を上げてもらおうとして、できることをできないと言うのはやめましょう。主治医の意見書と介護を必要とする方の状態が異なる場合には再調査となってしまう場合があります。
介護サービスの拒否
介護を必要としているにもかかわらず、介護保険を申請しない、また介護度の判定は出ているものの介護サービスを利用しないという方も少数ではありますがいらっしゃいます。介護サービスの利用が恥ずかしい、みっともない、自分はまだできるといった気持ちがあるようです。介護サービスを利用することは決して恥ずかしいことではありません。
介護サービスを利用することは、ご自身の生活を手助けするだけでなく、費用面での負担も軽減しますし、家族の介護負担も減らすことができます。介護サービスは自分のため、と思っている方には、ご家族のためでもあるということを伝えていただければと思います。見方が変われば、サービスの利用を検討してくれるかもしれません。
せっかく介護サービスを利用する権利をお持ちなのですから、利用できるものは最大限利用していただければと思います。
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