【脳梗塞後遺症のリハビリ】重症度別に手のリハビリ内容を解説

一度脳梗塞を発症すると、後遺症が残ることも少なくありません。

そして、その症状に対して、改善・回復を目標に日々リハビリをしていく必要があります。

今回は、脳梗塞後の手に対するリハビリ方法について解説します。

目次

脳梗塞後の手の後遺症とは

多くは、手を含めた片側の腕に症状が出ます。

代表的なものでは、麻痺、しびれ、それらによる手指の動かしにくさがあります。

そのほか、人によっては痛み拘縮(腕が固く動きにくくなる)なども起こります。

脳梗塞後の手のリハビリは重症度や病期によって異なる

リハビリは、脳梗塞の重症度や、発症からの時期(病期)によって、方法が異なってきます。

脳梗塞の重症度とは

脳梗塞の重症度は、3つの段階に分けられます。

重度寝たきり、常に介護を必要とする
中等度何らかの介助を必要とするが、歩行は介助なしで行える
軽度何らかの症状はあっても、明らかな障害はなく日常生活が可能

中等度において、歩行は介助なしで行えますが、歩行するためには、以下のような手の動作が必要になってきます。

  • 手を使って立ち上がる
  • 腕で立った時の体のバランスをとる
  • 腕をふる

つまり、歩行は手に関する指標でもあります。

脳梗塞の病期とは

脳梗塞の病期には、以下があります。

急性期発症から2週間以内
回復期2週間~3ヶ月
生活期・維持期3ヶ月~6ヶ月

急性期や回復期でのリハビリは、以下で行います。

  • 治療をしている病院
  • リハビリ専門病棟・病院

回復期・維持期でのリハビリは、リハビリ専門病院通院・通所・訪問で、そのほか受けた指導のもと、自分で行います。

脳卒中治療ガイドライン2021における リハビリテーション領域の動向
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/37/1/37_129/_pdf/-char/ja

脳梗塞の後遺症を軽くするリハビリ方法と期間(急性期、回復期、生活期) | NHK健康チャンネル

重症度や病期別における手のリハビリ内容

重症度のなかで、重度と中等度・軽度ではリハビリの方法が大きく異なります。

重度はそれだけ脳のダメージが大きく、まずは体の状態を安定させる必要があるためです。

ただし、医師がリハビリ可能と判断した場合、重症度に関わらず、発症から24時間~72時間以内にリハビリを開始することが、その後の機能改善や再発リスクの低下につながると言われています。

急性期における手のリハビリ

急性期(発症後2週間以内)における手のリハビリは、重度の場合、意識障害や麻痺の程度も強いため、患者さんがベッド上に寝た状態で、理学療法士に腕を動かしてもらうといった内容になります。

具体的には、以下が挙げられます。

  • マッサージ
  • 関節可動域訓練(腕や手首の関節を動かしてもらう)
  • 良肢位訓練(脱臼しないような腕の向きの癖をつけてもらう)

中等度や軽度の場合は、重度と同様のリハビリを数日行ったあと、体の状態が安定していれば、ベッドからどんどん離れるリハビリが行われます。

具体的には、以下のような訓練です。

  • 座る訓練
  • ベッドから立つ訓練
  • 車いすの乗り降りの訓練
  • 排せつ時は車いすで移動する訓練

これらは一見、足を中心とした訓練に思えますが、実はすべての動作において手も共に動いています。

具体的には、以下のような動きです。

  • 布団に手をついて身を起こす
  • 柵や車いす、トイレの手すりを持って移動する

そのため、これらの訓練は手に大切なリハビリにもなります。

回復期におけるリハビリ

回復期(2週間~3ヶ月)における手のリハビリは、重度の場合では以下のような訓練になります。

  • 座る訓練
  • 車いすへの乗り降りの訓練
  • 排せつ時に車いすで移動する訓練

麻痺が強ければ立つ訓練は難しいですが、改善しているようであれば行います。

点滴や注射による治療もまだ並行していることが多いので、病院は変わらないまま治療とリハビリを行います。

中等度や軽度の場合では、日常生活や歩行自立に向けたリハビリが行われます。

リハビリを積極的に行うために、この段階でリハビリ専門病棟病院に移ることが多いです。

内容は、以下のような訓練があります。

  • 車いすや歩行器といった補助具をなくしていく歩行訓練
  • 食事動作、清潔保持、更衣などの訓練

手先の細かい運動になると、理学療法士以外に作業療法士も加わり、手先のマッサージや掴む・つまむ、置く・離すといったリハビリも行われます。

リハビリを行っても、お箸をもつ、ボタンをかけるなど緻密な運動が難しい場合は、補助具を使用してのリハビリが行われます。

以上のように、中等度・軽度では「自宅退院後、自分で身の回りのことが行えること」を目標にしたリハビリ内容になります。

生活期・維持期におけるリハビリ

生活期・維持期(3ヶ月~6ヶ月)における手のリハビリは、重度の場合では、機能改善がみられれば日常生活や歩行自立に向けた訓練が行われます。

残念ながら回復期から機能改善がみられないこともあるので、その際は医療ケアも行える療養施設で、回復期同様のリハビリを行うこととなります。

中等度や軽度の場合では、改善した機能維持や社会復帰に向けたリハビリが行われます。

多くは自宅退院となっているため、通院・通所によるリハビリ訪問によるリハビリを利用する方が多いです。

また、そこで受けた指導をもとに自分でもリハビリを行います。

自宅では病院よりもよりたくさんの活動が必要になるため、これまでの訓練の強度をあげたり、筋力トレーニングをすることになります。

具体的には、以下のような訓練が挙げられます。

  • 何かを持ちながらの歩行訓練
  • マシンを使い肘をはさんだ上下の筋肉のトレーニング
  • サーキットトレーニング(つかむ、くぐる、登るなど多種目を組み合わせた運動)

自分で行うリハビリでは、以下があります。

  • あえて障害のある方の手を使って生活する
  • 握りボールを使った握る/離すの反復
  • ダンベルで筋肉トレーニングをする

全体として「回復した機能を維持する」「機能を低下させない」ということを目標にしたリハビリ内容になります。

脳梗塞発症後の手のリハビリは積極的にコツコツ続けることで改善が期待できる

今回は、脳梗塞後の手のリハビリについて説明しました。

手の後遺症の程度やリハビリによる改善具合は個人差が大きいです。

しかし、以下を心がけることで、その後の機能改善に期待ができると言われています。

  • 発症からなるべく早くリハビリを始めること
  • 長期にわたりリハビリを継続させること

自分の生活の質を向上させるために、リハビリが始まったら、積極的に、そしてコツコツと続けていきましょう。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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