脳梗塞の発症後は後遺症を伴うことが多く、リハビリが必要となります。
後遺症が残った場合、脳の神経細胞は損傷を受けています。
残念ながら、その機能が完全に回復することはありません。
しかし、リハビリによって他の神経細胞がその機能を代行し、身体の機能が少しずつ回復していきます。
すなわち、身体機能を回復させるためにはリハビリが必須なのです。
しかし「脳梗塞のリハビリに要する期間が分からず、今後の生活の目処が立たない」と不安に感じる方も多いでしょう。
今回は「脳梗塞のリハビリ入院期間」「発症後のリハビリをする時期」について解説していきます。
脳梗塞のリハビリ入院期間
脳梗塞のリハビリ入院期間は、後遺症と身体の状態によって様々です。
脳梗塞発症後は、以下の流れが一般的です。
- 急性期病院へ入院
- 回復期病院へ転院
- 自宅に帰る
急性期病院では、手術や投薬といった治療を行い、身体の状態をみながらリハビリも行います。
急性期病院への入院期間は、約2〜4週間です。
状態が安定したら、回復期病院へ転院してリハビリを重点的に行います。
回復期病院でのリハビリ期間は発症から150日、高次脳機能障害を伴う重度脳血管障害の場合は180日が上限となっています。
上記の期間は目安となり、身体の状態によっては早期に退院し、自宅に帰られる方もいらっしゃいます。
昨今の流れでは、平均在院日数をなるべく短くする取り組みが行われています。
この期間のなかで、ご本人とそのご家族は、自宅に帰るための準備や、自宅に帰らない場合は施設を探さなければなりません。
脳梗塞の入院期間は2週間?
世の中では「脳梗塞の入院期間は2週間」というイメージが先行していますが、2週間とは「急性期病院での入院期間の目安」を指しています。
急性期病院は、病気やけがをした方の救急搬送を受け入れ、病状が変化しやすく、命の危険がある方が優先的に入院できる機関となっています。
また、自宅での生活ができる状態まで回復している方は、自宅へ退院します。
脳梗塞を発症した方の病状は様々であり、2週間の入院期間は絶対ではありません。
「おおよその目安」と心に留めておきましょう。
脳梗塞のリハビリは早期に行うことで回復に近づく
脳梗塞のリハビリは、早期に始めることで、より回復が早いことが分かっています。
「早期」とは、脳梗塞発症後48時間以内を指します。
リハビリ開始時期が遅くなると、ベッド上で過ごす時間が長くなるため、筋力の低下や認知機能の低下が進行します。
自宅での日常生活は、常に身体の筋肉をつかっています。
また、病院では過ごすスペースが限られており、周りの変化も感じられないため、認知機能の低下が起きやすい環境です。
リハビリは全身状態をみながら、できるだけ早く始めるのが良いでしょう。
リハビリの段階としては、まずベッド上のリハビリから始め、起き上がる、歩く、といった段階を踏んで、徐々にリハビリの種類を増やしていきます。
脳梗塞のリハビリ期間は3つに分けられる
脳梗塞のリハビリ期間は、以下の3つに分けられます。
- 急性期
- 回復期
- 維持期
ここでは、①各期間の概要と、②それぞれの期間に行うリハビリ内容について説明します。
急性期
急性期とは、発症から2週間頃までをいいます。
急性期病院に入院している期間が「急性期」に当てはまります。
急性期は、以下を中心にリハビリを行います。
- 日常生活動作のリハビリ
- 寝たきり予防
脳梗塞発症直後は身体の変化が起きやすい時期のため、医師・看護師・リハビリスタッフが注意深く観察しながらリハビリを進めます。
状態が安定していれば、回復期病院への転院がすすめられます。
自宅で過ごせるほどの回復状態であれば、回復期病院を挟まずに自宅退院となります。
急性期病院から回復期病院へ転院するとなった場合、「転院」することについてご本人やご家族が戸惑ったり、不安に感じることもあるかもしれません。
しかし、回復期病院の方がリハビリできる時間は長く、そこでのリハビリは機能回復に直結します。
回復期病院に転院することは、ご本人のためになると言えるでしょう。
不安なことや分からないことがあれば、主治医や看護師、リハビリスタッフへ伝えましょう。
回復期
回復期とは、発症から3〜6ヶ月頃までをいいます。
回復期病院での入院期間、退院後に自宅で過ごす期間が「回復期」に当てはまります。
回復期は、以下がリハビリ内容の中心となります。
- 日常生活動作のさらなる改善
- 復職のサポート
この期間は、身体の状態が安定しているので、急性期病院よりも積極的なリハビリができます。
「身体をどの程度動かすことができるのか」をリハビリ専門スタッフが見極め、必要時は補助具を使ったリハビリを提案します。
「どうしたら安全に身体を動かすことができるのか」、アドバイスを受けながらリハビリを行うのがポイントです。
復職される方の場合は、細かな目標を設定し、その目標を達成できるように段階を踏んでリハビリを行います。
また、退院後の生活を見据え、必要な方には公的サービスなどの導入準備も行います。
地域には、ケアマネジャーという「自宅で療養する方に必要なサービスを考え・提供する」資格保有者がいます。
退院前にご本人とご家族、病院のスタッフ、ケアマネジャーで自宅でのサポートに向けた顔合わせと会議を行います。
維持期
維持期とは、発症6ヶ月頃からをいいます。
維持期は、以下がリハビリ内容の中心になります。
- 退院後の生活を安全におくる
- 復職のサポート
- 寝たきり予防
この時期は、自宅で過ごす時間が多くなるため、身体機能が低下しないように注意することが大切です。
自宅では、段差や手すりがないことも多く、日常生活がスムーズに行えなかったり、転倒する危険性もあります。
安全な生活がおくれるように、ケアマネジャーと段差の対応や手すりの設置といった相談を行い、まずは生活環境を整えることから始めましょう。
また、回復期病院ではリハビリの時間がしっかり確保されますが、自宅はそうではありません。
活動量の低下によって、寝たきりになる可能性もあります。
自宅でもしっかりとリハビリを継続できるよう、自己管理が必要になります。
「一人ではリハビリが続かない」という方は、リハビリができる場所へ通うのも一つの方法です。
脳梗塞のリハビリ期間を知り備えよう
今回は「脳梗塞のリハビリ期間」について紹介しました。
脳梗塞は、重症度と発症後の期間によって、リハビリを行う場所も内容も異なります。
ご本人やご家族は入院から転院、退院と目まぐるしく感じることもあるでしょう。
分からないことは医療スタッフにその都度確認し、リハビリについて理解・納得しながら進めていくことが大切になります。
また、リハビリは入院期間だけでなく、自宅に帰ってからも継続的に行うことが必要です。
ご自身でのリハビリが難しい場合は、ケアマネジャーに相談し、リハビリができるような環境・サポートを受けると良いでしょう。
脳梗塞のリハビリは、早期の段階から継続的に行うことで、より回復力が高まります。
安心安全に、生きがいや楽しみを見つけながら生活するためにも、リハビリについての理解を深め、期間に合わせた適切なリハビリ方法を計画的に行うと良いでしょう。