片麻痺に対する理学療法プログラム~自分でできるリハビリメニューのご紹介~

  • リハビリを頑張って、少しでも早く動けるようになりたい
  • 理学療法士のリハビリだけでは足りないから、自分でもできるプログラムを知りたい
  • 片麻痺になった家族にトレーニングメニューを教えてあげたい

脳卒中の後遺症により、片麻痺という「左右どちらかの手足に麻痺が残った状態」になると、重症度に関係なく、その人の日常生活に支障をきたします。

少しでも片麻痺がもたらす日常生活上の問題を軽減できるように、手足の運動や感覚の機能障害が改善するように、病気の発症後は早い段階から理学療法をはじめとするリハビリテーションプログラムが開始されます。

しかし、入院中の病院でリハビリを実施してもらえる時間は限られているため、物足りないと感じる人も少なくありません。

入院期間が過ぎて退院するとなると、リハビリを受けられる機会はさらに少なくなります。

「手足の状態を良くしたいのに、リハビリを受ける回数や時間が減ってしまう…」

そんなもどかしい思いを抱えている方は少なくありません。

今回は、片麻痺に対する理学療法プログラムの治療内容や効果について説明します。

さらに、自分でもできるリハビリのトレーニングメニューについてご紹介します。

目次

片麻痺に対する理学療法プログラム

理学療法は「起き上がる・座る・立つ・歩く」など人間の基本的な動作に対して、プログラムを組み立ててアプローチを行います。

片麻痺の場合は、このような基本的な動作が偏りやすく、スムーズに行うには工夫が必要です。

片麻痺の重症度によって、トレーニングメニューの内容が異なります。

そのため、理学療法士はその人の動作から「片麻痺が及ぼす問題点」を見つけ出し、個々に合わせたプログラムを考えます。

理学療法プログラムは、筋肉の成り立ちや神経科学に基づいたリハビリを行うため、成果を得られやすいと考えられています。

なお、注意点として、理学療法の知識がない人が自己流でトレーニングを行うと、筋肉や神経を痛めてしまったり逆効果になったりする場合があります。

なるべく担当の理学療法士に相談するようにしましょう。

リハビリテーションの目的

片麻痺に対しての理学療法のプログラムにおいて、基本的な目的は以下の2つです。

  1. 麻痺がある手足に対しての機能改善
  2. 障害が残らなかった能力を高めること

例えば、片麻痺があることで歩けなくなってしまった場合「歩くリハビリ」だけでなく、以下も行います。

  • 麻痺ではない半身をうまく動かして車椅子に乗り移る練習
  • 自分で車椅子を操作して移動する練習

最終的には自分でできることが増え、行動範囲が広がることで、その人らしい生活ができるようにQOLの向上を目指していきます。

麻痺という後遺症は、患者さんにとって大きな不安を与えるものです。

現状を受け入れられずに「もう何をしても意味がない」など、絶望してしまう方も少なくありません。

しかし、リハビリを行うことで「出来なかったことが出来るようになる経験」は、大きな自信や活力に繋がります。

理学療法をはじめとするリハビリテーションプログラムでは、残存する能力を最大限に引き出せるようにアプローチをしていきます。

リハビリテーションの効果について

神経には、失われた機能を補い適応するために可塑性という能力が備わっています。

リハビリテーションはさまざまな研究により「発症してから早い段階で介入することで効果を得られやすい」とされてきました。

具体的には発症してから約6ヶ月の間に得られるリハビリ効果は大きく、機能改善を認めるといわれています。

6ヶ月以降は、なかなか機能改善における大きな変化が起こりにくいとされ、プラトー(機能改善の停滞期)と呼ばれる「回復しにくい期間」に突入してしまいます。

しかし「6ヶ月を経過してリハビリをしても全く機能改善の見込みがない」というわけではありません。

長期的なリハビリによって、改善を認めた症例も多く報告されています。

自分でできる片麻痺に対する理学療法プログラム

先述しましたが、病気を発症してからリハビリ目的で入院する場合、入院期間には制限があります。

定められた期限を過ぎると、入院中に毎日行っていたリハビリの時間がなくなり、機能の低下がみられる恐れがあります。

リハビリテーションの効果が得られやすく大きな機能改善を見込める時期は、発症から6か月間です。

それ以降も、長い時間をかけてゆるやかに機能が改善するという報告もあり、退院後もリハビリを続けることが必要です。

ここでは、理学療法に基づいたプログラムを自主トレーニングで活用できるように、自分でできる片麻痺に対する理学療法プログラムをまとめます。

①上肢運動

両腕をまっすぐに伸ばした状態で、上下に動かします。

座位や臥位で行い、肩や肘の関節可動域を広げて、上肢機能を改善させます。

②立ち座り練習

何かに掴まった状態で、椅子やベッドから「立つ」「座る」動作を繰り返します。

下肢筋力やバランス能力を向上させるために行います。

③もも上げ・つま先上げ練習

座った状態、立って行う場合は何かに掴まって行います。

下肢運動機能や歩行能力の向上を目的にした運動です。

④腹筋運動

寝た状態で両足の膝を立て、お腹を覗き込むように頭を起こします。

体幹機能を向上させ、ふらつきや座位姿勢を改善できます。

⑤ブリッジ運動

寝た状態で両足の膝を立て、背中はつけたままお尻だけを浮かせます。

体幹機能やバランス機能の向上により、ふらつきや座位姿勢を改善させます。

運動の回数については、はじめは3回など少ない回数から慣らしていき、5回7回…と徐々に回数を増やしていきましょう。

もしも、現在リハビリを受ける機会があるようでしたら、担当の理学療法士に自分に合った自主練習のプログラムを提案してもらっても良いかもしれません。

可能であれば血圧などを測りながら、そのときの体調に合わせて無理のない範囲で行ってください。

片麻痺に対する理学療法プログラムを積極的に実践しよう

片麻痺の機能改善には、リハビリが欠かせません。

しかし、やみくもにトレーニングをしても意味がなく、理学療法のように根拠に基づいてプログラムを組み立てることが大切です。

「起き上がる・座る・立つ・歩く」という基本的な動作から、片麻痺がもたらした障害や問題点を見つけ出し、適切にアプローチすることで大きな効果を得ることができます。

医療機関で積極的にリハビリを受けることができる期間は、国によって定められています。

たとえリハビリ頻度が減ったとしても、自主トレーニングで補うようにできると良いでしょう。

今回は、自分でもできる理学療法プログラムの一部をご紹介しましたが、具体的な負荷量や重症度に合わせたトレーニングは、実際に理学療法士からアドバイスをもらえると安心です。

リハビリを受ける機会があれば、一度自主練習についても相談してみてください。

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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