【片麻痺リハビリ】効果的な自主トレーニングを知ろう!

脳卒中後の片麻痺を想定し、病院で行うトレーニング(リハビリテーション)との違いも含め、自宅での自主トレーニング方法について説明します。

目次

片麻痺とは

左右どちらか片側のみの、上下肢の麻痺を「片麻痺」と呼びます。

一般的に、右の脳を損傷すると左の麻痺、左の脳を損傷すると右の麻痺を発症します。

片麻痺では、片側の運動障害・顔の麻痺・麻痺側の見えにくさ・喋りにくさが出現します。

運動麻痺以外の症状について

左右の違いによって、特徴的な症状が一緒に出現することがあります。

脳の優位半球は人によって異なるため、障害された脳の部位が同じでも、出現する症状には個人差があります。

左麻痺

以下が起こることがあります。

・服を着る、脱ぐといった動作ができない(着衣失行

・左側の空間に関して、視野・視力的には見えているが、認識できない(半側空間無視

右麻痺

以下が起こることがあります。

・人から聞く言葉の理解は出来るが、単語や短文でしか話せない(運動性失語

・「お箸を持つ真似をしてみて」といわれても、目の前に道具がないとその動作の真似ができない(観念性失行

・自ら歯磨きをすることは可能だが、人から「歯磨きをして」といわれると理解ができない(観念運動性失行

リハビリテーション(リハビリ)とは

脳卒中におけるリハビリとは、脳卒中によって生じた不自由さに対し、あらゆるサポートを受けながら訓練することで、可能な限り自分で出来ることを増やし、自分らしい生活・人生を送れるようにすることを意味します。

リハビリの段階

脳卒中後のリハビリは、大きく3つの時期に分けられます。

①脳卒中発症後24~48時間以内に開始する、急性期リハビリテーション

②自宅での生活をイメージしながら行う、回復期リハビリテーション

③自宅での生活を送りながら行う、維持(生活期)リハビリテーション

自主トレーニングが特に重視されるのが、③の段階です。

この段階では、自宅環境を含め、社会に適応し、今の能力の維持・さらなる改善を目指すこととなります。

効果的な自主トレーニングのポイント

入院中に、自宅での生活を想定してリハビリを行いますが、実際に自宅で過ごすときには想定していなかった生活の難しさを感じます。

まずは一定のリズムで生活し、自分に出来ること・出来ないことの把握に努めましょう。

「このベルトを締められるようになる」のような具体的で小さな目標を立てて、その目標の達成を目指して自主トレーニングをすることがポイントです。

また、適切な自主トレーニングを行っても、栄養が不足していると効果が発揮できません。

バランスの良い食事をしっかりとることも忘れないようにしましょう。

自主トレーニングの内容

麻痺が軽度であり、感覚もある場合は、ウォーキングやスポーツジムのプログラムなど通常のトレーニングが可能です。

中等度以上の麻痺の場合は、怪我のリスクが高まるため、体調にあったトレーニングをしましょう。

日常生活のすべてがトレーニングとなりますが、日々の生活だけでは筋力や細かな動作の機能が低下する可能性があるため、リハビリグッズを取り入れることもおすすめです。

麻痺側の大きな筋肉の自主トレーニング

歩くなどの基本的な動作には、大きな筋力の維持・向上が必要です。

このようなゴムベルトなどで鍛えることができます。

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使い方は多数ありますが、例えば、椅子に座った状態で、鍛えたい腕や足と反対側の椅子の足にゴムベルトを巻きつけます。

そして、鍛えたい腕や足でゴムベルトを持ち、引っ張るという動作をゆっくり行います。

手・指の細かな動きの自主トレーニング

トイレ・食事・入浴などの動作には、手・指の感覚が大切です。

手・指のストレッチとマッサージは、1日に複数回行うと効果的です。

また、テレビを見ながらなど、時間があるときにゴムボールなどを使用して握る練習をしましょう。

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握るものはゴムボールでなくても構いません。

握っている感覚をつかみやすい物が好ましいです。

他にも、将棋や編み物なども良いトレーニングとなります。

自主トレーニングの注意点

基礎疾患や麻痺の程度によって、適切なトレーニング方法が変わります。

医師やリハビリスタッフと相談し、自分に合ったトレーニング方法を見つけていきましょう。

また、入院中にトレーニング時の注意点や具体的なメニューをもらえることがありますので、そちらも参考にしてください。

自宅では、入院中と異なりリハビリの時間が定められていないため、ゆっくり休みたくなるかもしれません。

筋肉は1日使わなかっただけで、1~3%萎縮するといわれています。

そのため、自身でトレーニングのスケジュールを立てて主体的に活動することが大切です。

一方で、麻痺側のトレーニングに力を入れすぎると、健側(麻痺していない側)に負担がかかり、怪我や身体のバランスの悪さにつながるので注意が必要です。

周りがサポートできることは?

トレーニングは本人が主体的に行うことが大切ですが、周囲の方々もサポートできることがたくさんあります。

入院中、退院後の生活を精一杯イメージしてトレーニングしてきても、実際にうまくいかないと自信を失い、不安が大きくなります。

そのため、本人が前向きにトレーニングに取り組めるよう、一緒に目標を立てたり、ポジティブに声を掛けたりしましょう。

また、片麻痺だけでなく失語や失行などの症状がある場合には、その症状に合った対応が必要となります。

失語であれば、言おうとしていることを汲み取り、こちらからその言葉を伝える。

「え・・・えがえ・・」と言われたときに「メガネですか?」と言う、など

失行がある場合には、動作の順序を繰り返し説明するなどです。

そして、左麻痺の方は転倒しやすい傾向にもあるため、配慮が必要となります。

日々のサポートは、根気が必要ですが、本人もサポートする側も辛くなりすぎないように力を抜きながら、自主トレーニングを行っていきましょう。

片麻痺に対する効果的な自主トレーニングとは

その人にあったトレーニングを主体的に行うことで、生活に必要な機能を長期的に維持・向上させることができます。

実際の生活の中で、具体的な目標を立てて自主トレーニングをしていくことがポイントです。

安全に留意し、全身のバランスを整えることを意識しながら自主トレーニングに励んでいきましょう。

参考)サルコペニアを知ろう(医学会新聞、医学書院)
https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2011/PA02920_02

参考)介護保険下の脳卒中維持期リハビリテーション(リハビリテーション医学 2005; 42: 58-7
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1963/42/1/42_1_58/_pdf/-char/ja

参考)脳卒中治療ガイドライン2021における リハビリテーション領域の動向(理学療法科学 37(1):129–141, 2022
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/37/1/37_129/_pdf/-char/ja

参考)脳卒中のリハビリテーション エビデンスに基づく脳卒中リハの基本戦略(2020 年 2 月改定)
https://www.hanshin-rh.jp/torikumi/file/nousottyu.pdf

この記事を書いた人

脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は、65歳以上が要介護の状態になる原因の1位(厚生労働省調べ)であり、脳卒中患者のQOL向上の一助となることを目指し、基礎知識・予防・リハビリ情報をお届けするWEBマガジンです。

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