by脳梗塞MZ編集部
基礎体力を上げよう!残った機能を活かそう!
脳梗塞のリハビリと言えば、麻痺が出てしまった部分を治すことを目的にリハビリするというイメージはありませんか。もちろん、麻痺を改善していくことがリハビリの中心となるかと思いますが、リハビリはそれだけではありません。時には、別のアプローチ方法もあります。麻痺の改善だけでなく、他にどんなリハビリを行うのか見ていきましょう。
廃用症候群の予防
ベッドで長期間の安静が強いられると、私たちの身体には様々な変化が起きます。筋力の低下や関節の痛み、時には精神面に影響し、うつ状態になってしまうこともあります。こういった長期臥床により身体に不調が生じた状態を廃用症候群といいます。脳梗塞になったらできるだけ安静にといわれていました時代もありましたが、今はそうではありません。発症直後からリハビリを開始することが推奨されています。
脳梗塞を発症した場合、患者さんの年齢や麻痺の程度にもよりますが、最初に行われるのは、麻痺の改善ではなく、この廃用症候群の予防です。特にご高齢の方の場合は、数日ベッドに横になっていただけで、歩くことができなくなってしまう場合があります。そこで、なるべく早い段階から身体全体を動かしていくリハビリが行われます。
ベッド上で手足の関節を動かしたり、寝返りを打つ練習をしたりといったこともリハビリの一つになります。
基礎体力を上げよう
基礎体力を上げるというのは、廃用症候群の予防と重なる部分もあります。片麻痺(左または右半身に麻痺が生じていること)があり歩けない場合は、その麻痺側ばかりのリハビリに取り組んでいても、全身の筋力がなければ歩くことができません。麻痺側だけでなく、非麻痺側も筋力を落とさないようトレーニングしていく必要があります。
リハビリをする上で、自分でもこういった知識を持っておいた方がいいとは思いますが、リハビリのメニューはリハビリの先生が考えてくれますので、過剰に心配する必要はありません。自己判断でのリハビリは、筋や関節を痛めたり、転倒の原因になったりする場合がありますので注意してください。リハビリの先生と相談して、自主的にリハビリをする場合は問題ありません。
体幹を鍛えよう
普段私たちは座ったり歩いたりするときに意識してバランスをとっていません。しかし麻痺が生じてしまうと、途端に体のバランスをとるのが難しくなってしまいます。座るだけでも体が傾いてしまうこともあるかと思います。バランスが悪いままだと、いくら麻痺側のリハビリを頑張っても思うように動かすことはできません。麻痺側のリハビリと同時に、体幹を鍛える(非麻痺側の予測的姿勢制御に対するリハビリ)必要があるのです。
体幹が安定すると転倒を防ぐことができる
リハビリを行っていく中で、気を付けなければいけないのが転倒です。麻痺が生じると体のバランスがとりにくくなってしまいますので、転倒しやすくなります。麻痺側のリハビリだけでなく、体幹を安定させるというのもリハビリのひとつです。
転倒してしまったときに、かすり傷や打撲など軽症で済めばよいですが、時には骨折してしまうこともあります。骨折してしまうと、ベッドにいる時間が長くなってしまい、筋力も落ち、ますます体を動かすことができなくなってしまいます。特にベッドからの立ち上がりやトイレでは転倒が起こりやすくなりますので、注意しましょう。ナースコールを押してくださいと言われている場合は、必ずナースコールを押してください。
自分一人でできるという思いはあるでしょうが、焦りは禁物です。転倒を防ぐということも、リハビリを進めていく上で一つのポイントです。
非麻痺側の残った機能を活かそう
麻痺側のリハビリを行うことは重要です。しかしながら、リハビリを頑張っても、麻痺が完全に回復するとは限りません。特に指先の動きは複雑で難しいですから、なかなか回復が難しいところもあります。リハビリを頑張っても麻痺が改善しないのは、患者さんの努力不足ではなく、障害された脳の部位によるものです。障害された脳の部位によっては、いくらリハビリを頑張っても元には戻らない場合もあります。
麻痺が残ってしまう場合は、非麻痺側の機能を活かしましょう。右利きで右半身麻痺が残ってしまった場合には、左手を使いましょう。麻痺のない方の手を使いましょう、といってもそんなに簡単に使えるものではありませんし、相当な努力が必要です。しかし、麻痺が残ってしまうのならば、非麻痺側の残された機能を使って日常生活を行っていくより他に方法はないのです。
リハビリでは苦痛を伴うこともあるのですが、麻痺が残るからといって麻痺側のリハビリをしなくていいわけではありません。麻痺側のリハビリを怠ると、筋委縮や関節の拘縮(関節の動きが制限されること)が起こります。また、手足を動かせるのに動かさないと、脳は手足の動かし方を忘れていってしまい、本来は手足を動かすことができるにも関わらず動かせなくなっていきます。麻痺側の継続したリハビリは必要なのです。
非麻痺側は使いすぎないようにしよう
先ほどお伝えした「非麻痺側の残った機能を活かそう」というメッセージと矛盾しているように感じるかもしれませんが、非麻痺側を使いすぎないようにすることも大切なのです。どういうことかというと、例えば歩行時に非麻痺側で体のバランスをとろうと必要以上に力が入ってしまうと、非麻痺側に負担がかかりますし、麻痺側の足の支えも結果的に弱くなってしまうのです。
非麻痺側の機能を活かすことはよいのですが、同じように麻痺側も生かしていく必要があるのです。足の支えが安定すると体幹が安定し、手の動きもよくなると言われています。麻痺とうまく付き合っていくことが、麻痺の改善にも繋がっていくのです。
麻痺があり利き手でご飯を食べるのが難しい場合は、半分は利き手で、半分は反対の手で食べるなど、工夫をしましょう。麻痺側をどのように使い、非麻痺側をどのように使っていけばいいのかは、医師やリハビリの先生と相談しましょう。麻痺の状態は個人個人で異なりますから、状態に合ったリハビリを行っていくことが必要です。
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