交通外傷による高次脳機能障害

はじめに

皆様は「高次脳機能障害」という疾患をご存知でしょうか?
普段何気なく歩いたり、話したり、考えたり…健康な人であれば当たり前のごとく行っている活動は人体の脳が正常に機能しているからこそ行う事ができます。

その脳が病気や事故、例えば交通外傷で傷ついてしまったらどうなるでしょうか?
そのような状況で起きる障害が高次脳機能障害となります。

高次脳機能障害とは?

では高次脳機能障害について詳しく説明していきましょう!

交通外傷が発生し、人間の脳に損傷が起きたとしましょう。
その際に「言語、思考、記憶、行為、学習、注意」の障害を起こすことがあります。
その症状を総じて高次機能障害と呼びます。

具体的な症状としては「今まで穏やかだった方が急に怒りっぽくなる、情緒不安定になる…」といった性格、キャラクターの変化や「長期的な記憶に関しては問題無いが、新しい短期的な記憶が定着しない…」こういった症状が現れます。
こういった状況は患者様の精神面に大きな影響を与えますし、それを見守る御家族の方にも大きな負担となるでしょう。

大脳の高次脳機能障害とは?

大脳に各組織に脳機能をつかさどる部分があります。
ではどの部位を損傷することによりどんな影響がでるのか?
以下にまとめましたのでご覧ください。

①前頭葉障害
遂行機能障害
非流暢性失語

②側頭葉障害
流暢性失語
聴覚失認

③側頭葉内側障害
記憶障害
地誌的障害

④頭頂葉障害
半側空間無視
観念失行
観念運動失行

⑤後頭葉障害
視覚失認
相貌失認

このように脳組織の損傷といっても一概にどのような影響・症状が出るのか?という問題を考える際は「前頭葉・側頭葉・頭頂葉・後頭葉」どの部位を損傷したかによって症状が変わってくるのです。

これは高次脳機能障害?間違えやすい症状・疾患とは?

ではここで少し脱線しますが、高次脳機能障害と間違えやすい疾患症状についてご説明いたしましょう。

①せん妄

高齢になったご家族が急に取り乱す…そういった状況は今までなかったでしょうか?
「高齢期障害かしら…?」なんて思う事もあるでしょう。
実はその症状「せん妄」の可能性があります。
せん妄は異常な精神状態を指しており、注意力が低下します。せん妄は突然発症し症状がハッキリしているので非常に分かり易いです。
回復も可能であり、適切な治療が必要となります。
認知症と間違えられやすいですが、認知症は記憶障害がメインとなってきます。併発することはありますが、疾患としては別物として覚えておきましょう

②認知症

「認知症」も高次機能障害と間違えられやすい症状と言えるでしょう。
どちらかというと認知症はよりポピュラーな疾患と言える病気なのでご存知の方も多いのではないでしょうか?
高次脳機能障害・せん妄・認知症と間違えやすいですが全く別物となります。
認知症はせん妄とは違い現状では回復・治療が困難な疾患となっております。
症状としては人格の破綻や、記憶障害、思考能力が徐々に奪われていきます。
筆者の身近な存在にもいらっしゃいますが、若年性の認知症では進行が速い場合は2~3年で生活に必要な様々な機能が奪われてしまうような例もあるやっかいな疾患と言えるでしょう。

高次脳機能障害を引き起こす障害とは?

高次脳機能障害は様々な要因から引き起こされていますが、実に8割が脳血管障害の原因によって起きています。
今回スポットを当てている交通外傷による高次脳機能障害は1割程と言われています。
その他の原因としては5%以下と割合としては低いですが、「脳炎、脳腫瘍、低酸素脳症、アルコール依存症…」などの要因も高次脳機能障害の原因と言われています。

高次脳機能障害はどんな人に多いの?

ではどんな方が高次脳機能障害になりやすいのでしょうか?
医療機関調査結果によると、高次脳機能障害は女性に比べ男性が悩まされる傾向が多いようです。
また年代別の統計を見ると、60歳以上の高齢の方が67.2%を占めるのがこの障害になります。
「なぜ高齢の方に多いのか?」
疑問に思う方もいるかもしれません。
高次脳機能障害の8割は脳血管障害が原因となるお話は前章で説明させていただきましたね。
その脳血管障害も高齢になるにしたがって割合が高くなる疾患なのです。
従って必然的に高次脳機能障害は高齢者の方が多くなる、というわけですね。

高次脳機能障害の患者さんはどのような生活を送っているの?

実際に高次脳機能障害の患者さんはどのような生活を送っているか?
この点に注目してみましょう!

高次脳機能障害では身体への障害は軽度へ留まる事が多いです。
従って、
「食事・トイレ・軽度レベルの移動」は問題なく行えることが多いです。
しかし、「入浴・階段の昇降、外出」に関しては介助が必要となる事が多いです。
では外出の際に向かう先は主にどのような場所になるのでしょう?
高次脳機能障害の患者さんは高齢の方が多い為、主となる外出先「医療施設」へは75%の人が利用すると回答があります。次いで「デイケア」や「障害者の集まり」への外出も頻度が高い傾向にあります。
逆に「勤務地」へと仕事に迎える方は多くはなく全体の10%程度しかいないのが現状です。
このことから現状、高次脳機能障害の患者さんが障害と付き合いつつ、社会復帰をするのは難しいと言えるでしょう。

こんな症状がでたら!高次脳機能障害かも?

「では具体的にどんな時に高次脳機能障害を疑って病院へ向かえばいいのでしょうか…?」
判断に困る事もあるでしょう。

前章の「大脳の高次脳機能障害とは?」で説明した、
「失語症、記憶障害、半側空間無視、地誌的障害…etc」などの症状が現れた場合は注意です。

チェックポイントとしては、
「症状が1日でおさまるか?」この観点で考えたさいに症状が落ち着くようであれば、それは「せん妄」の可能性が高いでしょう。
また総合的に見て、知的障害が大きく見られるようであればそれは「認知症」である可能性も考慮しなくてはいけません。
それらに該当しないとする場合は、高次機能障害の可能性があるといえるでしょう。
また、以前に脳血管障害や交通外傷の経験がある方となればより可能性は高くなります。

高次脳機能障害の診断基準

症状が現れた際に、医療施設での診断を受け「高次脳機能障害」の診断を受けるようになります。
「厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 国立障害者リハビリテーションセンター」が定める診断基準でご説明をします。

①主要な症状

交通外傷による脳挫傷や、加齢による脳血管障害がある事が前提。
また現在進行形で日常生活レベルの記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害が生じている。

②検査の所見

画像検査により病変が確認出来る事も必要となります。
CT、MRI検査や脳波検査を行う事により異常所見ある際にも高次脳機能障害の適応となるかもしれません。

③除外項目

①~②症状や検査所見の項目において、障害を受ける以前より該当症状・画像所見が確認されている場合は、高次脳機能障害の診断からは外れます。
また、先天性疾患や進行性疾患、発達障害なども除外の要因となります。

④確定診断

①~③を全て満たした場合に「高次脳機能障害」の診断がつきます。
ただし、交通外傷や脳血管障害が急性期における状態である場合はその状態を脱してから慎重な観察の上、診断を下すこととする。

様々なスタッフが関わる高次脳機能障害のリハビリテーション

チーム医療が叫ばれる昨今ですが、高次脳機能障害のリハビリテーションに関しても医師や看護師だけでなく様々なスタッフが協力しあったチームでのリハビリテーションを行っています。

では高次脳機能障害に関わる専門家をご紹介していきいましょう!

  • 医師
    まずは医師の計画の元にリハビリテーションが組まれます。
    患者様がどのように元の生活を取り戻していくのか?
    計画を立てて患者様の行く末を決めていくのがこの医師の役割となります。
  • 臨床心理士
    高次脳機能障害は肉体的に大きな影響与えます。
    しかし同時に考えなくてはいけないのが、精神的な問題になります。
    患者様は勿論、ご家族の方までメンタルケアを行うのがこの臨床心理士となります
  • 作業療法士
    高次脳機能障害は日々の生活であらゆる場面に不便を与えるでしょう。
    そんな不便さを改善するのが、作業療法士となります。
    生活上での問題をとりあげいかにして解決していくか?患者様と密接に関わる存在と言えるでしょう。
  • 言語聴覚士
    コミュニケーションをとるうえで非常に大事になるのが日常会話。
    失語症に陥るとその重要な会話に問題が生じてしまいます。
    その会話のリハビリテーションを担当するのが言語聴覚士となります。
  • 医療ソーシャルワーカー
    交通外傷によって高次脳機能障害に落ちいってしまう患者様もいらっしゃいます。
    そんな時、社会的な補償や援助、知るべき情報はたくさんあるでしょう。
    その情報を提供し支援するのが医療ソーシャルワーカーとなります。
  • 理学療法士
    高次脳機能障害により体の自由を大きく奪われてしまう事もあるでしょう。
    体の麻痺や四肢が動きづらくなる場合もあります。
    そういった症状の緩和やケアに努めるのがこの理学療法士です。
  • 看護師
    何より患者様との一番接する機会が多いのが看護師です。
    患者様の体調管理をするのは勿論の事、ちょっとした変化に気付き医師や、各専門家へ報告をするのも看護師の大事な役割となります。
  • 職業訓練士
    高次脳機能障害から社会復帰することは容易ではありませんが、職業訓練士がいることにより退院後に職業を探すのは支援されます。
    カウンセリングやアドバイスを行う事により、可能な限りに臨む職につけるよう力添えするのが職業訓練士の仕事となります。
  • 家族
    何より大切になるのが、家族のバックアップです。
    高次脳機能障害の患者様が出来る事は限られています。そんな患者様の一番理解者であり、身近な存在であるのはご家族の方です。
    専門科のアドバイスを受けて患者様のサポートを行うのは家族の大事な役割と言えるでしょう

高次脳機能障害の新たな試み。スマホアプリ「高次脳機能バランサー for iPad」

高次脳機能障害の症状改善はより生活に溶け込み、誰もがみな使うスマートフォンでのアプリによる機能改善も取り組みが行われています。
アプリ名は「高次脳機能バランサー for iPad」となっています。
この高次脳機能バランサーではこの様々な機能のトレーニングが可能となります。
トレーニングが可能な7項目に関して以下で解説していきます。

①抑制力

子供は長い間、勉強机に座って勉強する事は困難でしょう。
同様に高次脳機能障害の方も何かを我慢する、そういった事が苦手な傾向があります。
その耐える力は「抑止力」この機能のトレーニングが可能です。

②注意力

こちらは読んで文字のごとく、注意・集中に関しての項目です。

③情報獲得能力

「読む・書く・聞く・話す」など生活に必須となる機能改善のトレーニングです

④記憶力

先ほどの会話の内容は?昨日の出来事は?こういった話の内容や物事の記憶に関しての項目です。特に人の名前や地理地形の場所について覚えておかなくては生活に支障をきたすのが記憶力の項目と言えるでしょう

⑤遂行機能

遂行となると少し難しい言葉になりますが、言い換えれば「物事を計画し、実行する能力」です。例えば料理を段取りなども「メニュー考案・食材の用意・調理」などの工程を踏む遂行機能が試されていると言えるでしょう

⑥空間認知力

脳には空間認知と呼ばれる機能があります。右脳では左側の空間の広さ、モノの配置などを感知し左脳でも同様に右側の認知を行っています。

⑦見当識

見当識では時間や今自分がいる場所はどこか?についての理解度を示します。

①~⑦までの項目をゲーム感覚でトレーニング可能なのが「高次脳機能バランサー for iPad」です。
パズルや迷路、カードの記憶等29種類のトレーニングがあり、使用者を飽きさせない内容となっているようです。

高次脳機能障害の治療とは?

高次脳機能障害は前述したように、交通外傷による頭部へのダメージや脳血管障害による脳組織の破壊による機能低下が原因で起こります。
脳組織は皮膚の裂傷や骨折のように自然への治癒はあまり期待できません。なぜなら体の中には幹細胞という組織の再生に関する細胞が体のあちこちに存在しますが、人間の核である脳組織には殆どないからです。
従って脳組織の治療が必要になりますが、現状の医療技術では困難とされています。
再生医療の研究も進んでおり、すでに臨床での脳組織の治療も行われつつありますので日本国内での技術の普及を期待しましょう。

高次脳機能障害と音楽療法

高次脳機能障害は治療が非常に難しいのは今までのご説明で分かっていただけたかと思います。そんな高次脳機能障害の治療に「音楽の力」という別方向から取り組む動きがあります。
東京都中央区福祉センターで失語症に対する音楽療法を20年間続けられている音楽療法士、前田キヨ子氏の興味深いワークショップの論文を目にする機会があったのでご紹介しましょう。

音楽療法の実践として音楽のリズムに合わせてベルを打つ方法が記載されています。
退屈しないワークショップのようで、いくつかのグループの参加者はそれぞれに割りふられたリズムをうちます。何が難しいかと言いますと各グループのリズムを1曲の中で調和した音楽として成り立たせるのが中々に難しい、という事です。難易度を上げていくと踊りも加わってなおの事ハードルは上がっていきます。前田先生は非常に耳が良く、音のズレに敏感です。
少しの音ズレも見逃さず細かい指摘が飛んでくるワークショップでは少しずつ一体感が高まります。前田氏が音楽療法で重要と考えるのは、参加者が語りや表現力を学び最大限に音楽を楽しむ事です。
この活動により高次脳機能障害に悩まされる患者様への抗うつ作用やストレス軽減もあるという結果が得られているようです。

高次脳機能障害の治療薬

では薬による高次脳機能障害の治療はどうなっているのだろうか?
薬理作用に説明は非常に専門性が高い内容となっているために割愛させていただくが、既に様々な動物実験が行われている。
具体的には「ADHD、抗うつ病、統合失調症、パーキンソン病、強迫性障害」こう言った症例に対しては薬剤開発が進んでいる。
今後、高次脳機能障害の治療薬に関しても有用性の高い新薬が現れる日はそう遠くないかもしれません。

高次脳機能障害のリハビリテーション治療

先ほどはチーム医療としてのリハビリテーションをご紹介しました。
この章では具体的なリハビリ訓練における高次脳機能障害の治療についてどのような訓練を行うのか?具体例として1~8までに分けて説明していきましょう。

  1. 注意障害
    注意障害の訓練として「非特異的介入」、「特異的介入」、「段階的介入」とステップを踏んでリハビリテーションを行います。

    • 非特異的介入
      まずは注意力の続かない方へは「非特異的介入」での作業をしていただきます。
      「パズル、間違い探し、ゲーム、電卓計算、集計…etc」様々な単純な作業で注意力の持続力を伸ばしていきます。
    • 特異的介入
      逆にある特定作業にのみ集中力が続かない人には「特異的介入」を行います。選択制注意…複数の選択肢から正しい選択を選ぶ能力
      持続正注意…課題への持続的な取り組み能力
      転勤正中位…問題が移り変わりへの対応力
      分配性注意…複数の問題へ同時に取り組む際の能力
    • 段階的介入
      最終的なゴールを見据えた際に、患者様にいきなり目標を押し付けるのはタブーとされています。少しずつ出来る事を増やしていき、最終的なゴールへ到達するという計画を立てていきます。事前段階…訓練前の刺激制限が必要
      訓練導入…訓練に入ってからは積極的な刺激導入
      周囲環境…個室から多人数部屋へ
      人員変更…固定スタッフからシフト制へ。人数の変更
      組織環境…グループでの活動

    このように患者様のレベルにおいて出来る事を伸ばしていくのが注意障害の訓練です。

  2. 記憶障害
    記憶障害に対する訓練で重要になるのは「反復訓練」、「環境調整」、「外的代償法」となります。

    • 反復訓練
      物事を学習するうえで反復練習は誰でも行いますが、記憶障害を持つ患者様に対しても同様に「反復訓練」を行う事は非常に重要なリハビリです。
      社会復帰をされたある患者様のお話ですが、その患者様は初め、医師の話をメモする為のメモ帳の持参を忘れてしまう所から訓練は始まったそうです。
      しかし訓練が進むにつれ、メモ帳は綺麗に整理され医師の話を自らまとめ説明できる程までに機能回復をされ、大手企業に復帰をされたそうです。
    • 環境調整
      記憶障害においても環境調整は大事になります。
      具体的には生活環境や物理的環境、コミュニケーションにおいて極力負担がかからないような環境を作ることは非常に重要な要因となってきます。
    • 外的代償法
      反復訓練の説明部分と少し重複するところもありますが、外的代償法とは「メモ、レコーダー、日記、カレンダー」などの外部記憶媒体の使用し、記憶障害の補助とする方法です。

    こちらも記憶障害に関わらず、健常人でもとる方法ですね。

  3. 遂行機能障害
    そもそも「遂行機能」という言葉に馴染みが薄いかもしれません。
    遂行機能とは何かの目的を効率よく達成する為に必要な機能、能力となります。
    遂行機能障害のリハビリには「自己教示法」「問題解決法」が重要となります。

    • 自己教示法
      言葉としては非常に理解しにくいですが、内容はそれほど難しいものではありません。
      「自分自身の言葉で自分の行動や考え」を変えていく、という方法がこの自己教示法となります。簡単に言えば「自己暗示」と言ったところでしょうか。
    • 問題解決法
      問題解決法では、現在悩みとなる事柄を各チャート分けし、課題を解決していく方法です。

      ①問題提起「問題を問題としてとらえる」という事がまずは重要です。問題や課題に対しての積極的な姿勢が必要となります。

      ②明確化・定式化
      問題提起により浮き上がった内容はまだ、ぼんやりしていて曖昧な事が多々あります。問題解決によるメリットを考え、問題の本質はどこにあるのか?ということを具体的に考えます。

      ③代替え可能な解決方法
      では具体的になった問題に対しての解決方法をどんどん考えていきましょう。ここで多くの解決案を提案するだけ、次項の「意思決定」での選択肢の幅が広がります。ここで重要になるのは質より量、とりあえずたくさんの解決方法を考案し、その解決法が現実的か?否か?という事を評価します。

      ④意思決定
      代替え可能な解決方法の中から最善である方法を選びます。
      選ぶ基準として「問題を解決できる可能性や労力に見合うだけの結果が得られるか?」ここに注目すると良いでしょう。

      ⑤実施・検証
      「解決方法がただしかったのか?どれくらいの効果があったのか?」という観点での検証を行いましょう。仕事や生活面においての結果を中心に数値化するとより具体的な効果を見る事が出来ます。

  4. 行動と情緒の障害

    社会恐怖などで悩まされる患者様が多い、「行動と情緒の障害」は行動療法でのリハビリが効果的です。
    行動療法とは上記した社会恐怖(学校や職場などのコミュニティ)などへの問題に焦点をあてて考えます。
    その問題が「何が原因で引き起こされているか?」それとも「まだその場面になれていないか?」など考え対処法を考えます。
    保護者や治療者が共同で目標を考え、問題に応じた手法をとって課題解決を行います。

  5. 視覚認知・視空間認知障害
    視覚認知や視空間認知の障害が起きると、視力の低下が無くても物事が見づらくなる道に迷うなどの障害が発生します。「視知覚訓練・視覚探索訓練」により機能の回復が見込める場合があります。

    • 視知覚訓練、視覚探索訓練
      視知覚・視覚探索訓練では「ジオボード」という道具を作成し行います。
      透明なボードに5×5のピンを均等に打ちます。
      出来がったボードのピンに輪ゴムを括り付け決まった形を作る事で、作成時の達成感を得る事が可能であり、視覚的機能のトレーニングにもなります
  6. 半側空間無視
    半側空間無視の障害では、交通障害や脳血管障害による脳組織の破壊を受けると、片側からの刺激への反応が困難になる症状です。特に右側半球頭頂後頭葉に障害を受けたときに顕著に症状があらわれ、左半分の空間への認識能力が低下します。

    • 病態認識
      まずは「病態認識」が必要です。そもそも半空間に対しての関心がなくなっているので、患者様に病気であることを認識していただくことをから治療は始まります。
    • 言語的手がかり
      患者様は左空間への認識が無い為、周囲の人が手掛かりや助言をすることにより、無視空間への反応が可能になるようにします。本人自身の言語にしながらの動作を遂行する事にも効果があります。
  7. 半側身体失認
    「半側身体失認」とは高次脳機能障害により、失われた麻痺側の身体を無視してしまう障害です。麻痺している為か痛みや刺激に鈍く、反応が弱くなり自分の手足、体という感覚がなくなってしまいます。

    • 行為確認
      実際に麻痺をしている手足を見る習慣をつけることにより、自分の手足であることを認識します。しかし、患者様の注意のみでは行き届かない範囲に関しては周囲の人が手足をぶつけたり踏んだりといったことがないように気にかける必要があります。
  8. 地誌的障害
    「地誌的障害」に陥ると、毎日のように通っていた通勤ルートや家の周囲、見知った道であったはずの地理地形の認識が出来なくなってしまいます。また地誌的障害には「並行失認」と「道順障害」に分類されます。

    • 言語的手段
      地誌的障害のリハビリテーションでは言語的手段を用いる事が有効な場合があります。
      距離と指標となる目標物を具体的な言語で説明する事で大きな機能改善がみられる場合があります。

1~8まで主な高次脳機能障害の症状やそれに合わせたリハビリテーションについてご説明させていただきました。もし症状にお悩みの方が近くにいましたら参考にしてみてください。ただし専門家の正しい診断を受けるのがまず何より大事であるので、そのうえでのリハビリテーションを進めていきましょう。

高次脳機能障害で受ける事が出来る国の保証は?

高次脳機能障害に陥った場合は、「それが脳血管疾患か?外傷性脳損傷か?」で保証内容が変わってきます。また年齢によっても介護内容の度合いに差がでます。
詳しいことはお住まいの市区町村に問い合わせをしてみましょう。

高次脳機能障害のQ&A

高次脳機能障害についてのよくある質問についていくつかまとめてみました。
似たような状況にある患者様の参考にすると良いでしょう。
高次脳機能障害や脳外傷のリハビリテーション専門に行う、東京慈恵会医科大学附属第三病院「渡邉 修(わたなべ しゅう)」教授のお答えを参考に見てみましょう。

Q1. 「高次脳機能障害 進行はしない?」
質問者の方は47歳女性。高次脳機能障害の診断を受け「注意障害、遂行機能障害、左半測無視」の症状がありました。リハビリを繰り返し一人暮らしすることが出来るまで回復にいたったが、最近発症当時に悩まされていた症状が再度現れ高次脳機能障害の進行を不安に思っています。
A1. 「再度精密検査の必要があります。」
専門科のアンサーとしては「まずは脳の再度精査が必要」ということです。
もし画像所見で大きな変化が無ければ、最近の生活や仕事の業務内容での負担が大きいのかもしれません。

Q2. 「リハビリはどうやったらやる気がおきるのでしょうか?」
脳血管障害により高次脳機能障害の診断を受けている患者様。
リハビリに対しての姿勢が後ろ向きになる人はどうしても多いようです。私が勤務する施設においても「こんなの意味がない」、「どうせ無駄」そういったような姿勢でスタッフを困らせる患者様がいらっしゃいます。
A2. 「状況の分析をしましょう」
患者様の状況を分析しましょう。
またどのような時にやる気はでているのか?という事もしっかり観察する事が必要です。
また成功体験を増やすのも良いでしょう!

Q3. 「高次脳機能障害で悩んだらどこに相談を?」
障害者として社会生活を続ける方は多くいます。そんな方の中には何かしらの悩みや不安を抱え苦しんでいる方もいらっしゃいます。そんな時にどこで適切なアドバイスを受ければよいのでしょうか?
A3. 「高次脳機能障害支援拠点機関でのご相談を」
お住まいの都道府県には「高次脳機能障害支援拠点機関」が存在します。
国立障害者リハビリテーションセンターのホームページにアクセスしご相談窓口を探してみましょう。専門家に相談する事が悩みや不安解消の第一歩となるはずです。

おわりに

いかがだったでしょうか?
今回の特集では「交通外傷による高次脳機能障害」という事で、主に高次脳機能障害について説明をさせていただきました。

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